聖戦後

……今ごろ、あいつはどうしているのかな。
カイは、病院のベッドの上で膝を抱えながらソルの事を考えていた。それが、クセみたいになってしまった。全身の怪我を数え上げればキリがない今現在、ソルを探しにいきたくても身動き一つできないのだから仕方が無かった。
……ソルは、自分にとって、一番大事な人だった。
最後まで一緒に戦ってくれたから……かな……いや、それだけじゃない。自分とはまるで違う強さのようなもの、にも、憧れてた。
うん、憧れてたな……。
ああいうふうになりたかった。
少しでも傍にいたくて、近づきたくて、あいつには迷惑と思われたかもしれないな。
……でも、なんで急にいなくなってしまったんだろう。
私が、ちょっと聖騎士団の掟を五月蝿く言いすぎた……からかな。
聖戦が終わった後も、一緒にいてほしかったよ。ギアの残党は、まだまだ世界中に潜んでいるんだから……。
……いつか、また会えるかな……。
考えているうちに、痛み止めが効いてきたのか、カイは眠くなってきてしまう。
カーテンを締め忘れた窓から月光が眩しすぎるくらい射し込んできて室内を照らし出した。テレビも何もない、真っ白い部屋だった。
その静寂を見計らったようにして、ドアが開く。
そっと入って来たのは、ソルだった。
カイの寝顔を見て、順調に回復していそうなのを認めると、カーテンを閉めて眩しすぎる月光を遮ってやる。
声もかけないで出ようとした時、カイの声が喉をついた。
「ソル……」
薬で眠っているから目がさめる筈がないカイのその言葉は寝言だった。ソルは、自分の事でも夢に見ているんだろうか、とちょっと意外に思う。それから、やれやれ、とため息をつくと、そこから出ていった。

END