9月20日にリリースされたアルバム『For ourself』は、97
年11月のデビューから3年の軌跡が感じられる彼女のシング
ルベストだ。
「いろんな歌を歌ってきたなーって思いますね。その間にプロ
デューサーも変わっていますから、歌うのが同じ人でも全然
違う感じになってます。あとは歌に対するこだわりっていう
のが、後半の曲にいくほど出てくる。それが聴いてすぐわか
ると思うんですよね」
だが平家みちよにとって、ここまでの3年は決して平坦では
なかったと振り返る。
「長かったです、うん。3年間の内容が濃かったっていうのと……
よい時期と悪い時期を通ってきているぶん、長かったですね」
シャ乱Qのはたけによるプロデュースという恵まれた環境
の元で、デビューしてからは周囲を見渡す余裕もなくあっと
いう間に駆け抜けて行った。しかし99年7月の『scene』後、
今年5月の『ワンルーム夏の恋物語』まで、なぜか10ヶ月
の間、シングルのリリースはなかった。
「とても長く辛い10ヶ月でしたね……。でもあの時期があるか
ら今のわたしがいるんです。そこでリリースしなかったこと
によって考えて悩むし……、歌に対してや、舞台で自分をど
う見せるかといったことに、ものすごく執着しましたよ。だ
からすごく苦しかったですけど、あの時期は、たまたま偶然
もらった自分を見つめ直す時間だったんです」
その時期に平家は20代になり、大人への一歩を踏みだした。
「まだまだ子供なんですけど(苦笑)、何かの感覚が大人に変わっ
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ていく。そこでやはり子供の感覚というか“私、歌好きなん
です!”っていう気持ち、そこは失いたくないですね」
そうして確かめた素直な歌への思いが現れているのが『myself』
なのかもしれない。これは1年前に彼女が初めて作詞を手掛け
た曲。
「今ならきっとちがう表現ができるはずだけど、詞を書きたい
自分と、心を伝えたい自分がうまく融合して、みんなに届け
られることができてよかった。それにこの曲はファンの人に
いちばん何を伝えたいかという、メッセージをつめた曲なん
ですね。だから奥深いですよ。単調な言葉が並んでいるけれど、
よく考えればいろんなものが交差しているはず。それを受け
とめてもらえたらうれしいな」
アルバムは平家がここまで歌ってきた曲と、聴く人にここ
までの3年間を照らし合わせながら楽しんでほしいという彼女。
そしてこのアルバムを一つの区切りにしたいとも語る。
「わたしの思いは、もう次にあるんです。平家みちよが持って
いるものを全部使って、自分の中で納得できるかっこいいも
のに到達したいんですよ。自分がどうなりたいかは、全部頭
の中に入ってます。だからいい意味でファンの人を裏切れる
ように、新しい自分をどんどん切り開いていきたいと思って
いるので、前に進む平家をどうぞ楽しんでください」
あの10か月があったから、今は止まらず前に進めている
――そう言い切った平家みちよは、歌へのほとばしる情熱を
エネルギーに、駆け抜けるペースを上げていこうとしている。
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