Pickin' Up Girls_2

Michiyo Heike

10/36の想い〜平家みちよの駆け抜ける情熱  取材・文/広川貴行

 9月20日にリリースされたアルバム『For ourself』は、97
年11月のデビューから3年の軌跡が感じられる彼女のシング
ルベストだ。
「いろんな歌を歌ってきたなーって思いますね。その間にプロ
デューサーも変わっていますから、歌うのが同じ人でも全然
違う感じになってます。あとは歌に対するこだわりっていう
のが、後半の曲にいくほど出てくる。それが聴いてすぐわか
ると思うんですよね」
 だが平家みちよにとって、ここまでの3年は決して平坦では
なかったと振り返る。
「長かったです、うん。3年間の内容が濃かったっていうのと……
よい時期と悪い時期を通ってきているぶん、長かったですね」
 シャ乱Qのはたけによるプロデュースという恵まれた環境
の元で、デビューしてからは周囲を見渡す余裕もなくあっと
いう間に駆け抜けて行った。しかし99年7月の『scene』後、
今年5月の『ワンルーム夏の恋物語』まで、なぜか10ヶ月
の間、シングルのリリースはなかった。
「とても長く辛い10ヶ月でしたね……。でもあの時期があるか
ら今のわたしがいるんです。そこでリリースしなかったこと
によって考えて悩むし……、歌に対してや、舞台で自分をど
う見せるかといったことに、ものすごく執着しましたよ。だ
からすごく苦しかったですけど、あの時期は、たまたま偶然
もらった自分を見つめ直す時間だったんです」
 その時期に平家は20代になり、大人への一歩を踏みだした。
「まだまだ子供なんですけど(苦笑)、何かの感覚が大人に変わっ
ていく。そこでやはり子供の感覚というか“私、歌好きなん
です!”っていう気持ち、そこは失いたくないですね」
 そうして確かめた素直な歌への思いが現れているのが『myself』
なのかもしれない。これは1年前に彼女が初めて作詞を手掛け
た曲。
「今ならきっとちがう表現ができるはずだけど、詞を書きたい
自分と、心を伝えたい自分がうまく融合して、みんなに届け
られることができてよかった。それにこの曲はファンの人に
いちばん何を伝えたいかという、メッセージをつめた曲なん
ですね。だから奥深いですよ。単調な言葉が並んでいるけれど、
よく考えればいろんなものが交差しているはず。それを受け
とめてもらえたらうれしいな」
 アルバムは平家がここまで歌ってきた曲と、聴く人にここ
までの3年間を照らし合わせながら楽しんでほしいという彼女。
そしてこのアルバムを一つの区切りにしたいとも語る。
「わたしの思いは、もう次にあるんです。平家みちよが持って
いるものを全部使って、自分の中で納得できるかっこいいも
のに到達したいんですよ。自分がどうなりたいかは、全部頭
の中に入ってます。だからいい意味でファンの人を裏切れる
ように、新しい自分をどんどん切り開いていきたいと思って
いるので、前に進む平家をどうぞ楽しんでください」
 あの10か月があったから、今は止まらず前に進めている
――そう言い切った平家みちよは、歌へのほとばしる情熱を
エネルギーに、駆け抜けるペースを上げていこうとしている。



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