平成9年2月23日

地下室に係る容積率の取り扱いについて付いての考察

A建築基準法改正までの経過

T昭和63年3月28日

建設大臣が建築審議会に諮問「国民生活・経済活動の高度化・多様化に対応した市街地環境整備の方策について付いて」

 

建築審議会建築行政部会市街地環境分科会専門委員会で審議

 

U平成6年3月18日住宅の地下室に係る容積率の取り扱いについて(中間報告)1.背景・地下室は建築技術の向上に依りより快適な空間として利用することが可能となった。・その優れた遮音性、断熱性、恒温性等の特徴に着目し、積極的に多種多様の目的のために利用される傾向が見られる。・居住水準の向上を図るため、ゆとりある都市住宅の供給が求められる一方、既成市街地を中心にかぎられた土地を有効に活用することが要請されている。2.容積率制限の趣旨と沿革(趣旨)

(沿革)

3.地下室の容積率制限の取り扱い・容積率制限の目的a建築物と道路、下水道等の公共施設との均衡を保つ。b建築物の周辺の採光、通風等の市街地環境の悪化を防止する。・取り扱い 地下室は地上部分の市街地環境の影響はほとんどない。公共施設の負荷が軽微となるよう対象建物の用途等を限定すれば、容積率制限の目的を損なうことなく良好な市街地環境を確保しつつ限られた土地の合理的かつ有効な利用を図ることが可能。そこで、交通量の負荷を小さく、公共施設の負荷が増加しないよう以下の条件を前提とした上合理化の対象を住宅(商業施設、事務所等は除く)の地下室に限定することが適当である。

条件@合理化の対象となる用途床面積の限定一戸建て住宅で店舗用途を兼ね備えたものや共同住宅商業施設と合築されるものなどは合理化の対象となる床利用を限定するなどの措置が必要がある。条件A合理化の対象となる床面積の限度地下部分が極端に大きい建築物ができる可能性があり、容積率制限の目的を損なう恐れがあるため、地下室の床面積を一定の範囲に限定することが必要がある。4.想定される問題点@衛生上の問題→解決可能A消費エネルギーの問題→消費エネルギーは地上の部屋と差はない。B隣接地の問題→安全な施工は確保できる。C敷地規模の狭小化の問題→地下室の床面積の一部を容積率から除外すると、一定の床面積を建築するのに必要な敷地面積を少なくすることが可能。敷地の狭小化が進む懸念あり。これについて付いては、敷地の分割が行われる場合等における狭小化の可能性(住宅戸数の増加)等を否定できないが、大都市の既成市街地における住宅の建築活動の大部分を占める同一敷地内の建て替えの場合には、既に敷地規模が定まっていることが多く、容積率に不算入とされた床は、主として住宅の質(床面積)の向上をもたらすことが大きいと考えられる。この為、敷地の狭小化等による市街地環境への影響に比べて市街地環境を確保しつつ居住水準の向上をもたらす効果が大きいと考えられる。5.今後の検討に当たっての留意事項@合理化の対象とする地下室の範囲地上部分に突出する地下室は一定の範囲で合理化の対象としないなどの措置を検討することが必要。A建築行政上の配慮合理化の対象となる床利用を住宅に限定するなどの措置を講ずれば建築確認や違反是正の行政実務上も問題は少ないと考えられる。敷地の共同化の推進等建築に関する行政を総合的に進めることが期待される。6.今後の地下室住宅への期待これまで我が国では、住宅の地下利用は一般的ではなかったが、今後、地下室住宅の建設が進むと考えられる。このため我が国の気候、風土、にふさわしく、また、地下室の特性を生かした新しい住まいの進展が期待される。

 

V平成6年6月3日建築基準法の一部を改正する法律案に対する付帯決議(参議院建設委員会)政府は本法の施行に当たり、次の諸点について付いて適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを帰すべきである。1.住宅の地下室に係る容積率の制限の合理化については、良好な市街地環境を確保しつつ、ゆとりある住宅の供給を図るための措置であることにかんがみ、敷地の分割が行われる場合等に敷地の狭小化が進行して市街地環境が悪化することがないよう、既成市街地における狭小な宅地の共同化を推進するための施策の充実に努めるとともに、必要に応じて建築物の敷地面積の最低限度を定めるなど都市計画について付いても十分配慮すること。2.住宅の地下室の建築が促進されることに伴い隣接地の建築物に安全上の問題が生じるなど相隣関係上の問題が増加することのないよう内容、適正な施工の確保について付いて建築行政上十分配慮すること。右議決する。

 

W平成6年6月20日建築基準法の一部を改正する法律案に対する付帯決議(衆議院建設委員会)政府は本法の施行に当たり、次の諸点について付いて適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを帰すべきである。1.住宅の地下室に係る容積率の制限の合理化については、良好な市街地環境を確保しつつ、ゆとりある住宅の供給を図るための措置であることにかんがみ、敷地の分割が行われる場合等に敷地の狭小化が進行して市街地環境が悪化することがないよう、既成市街地における狭小な宅地の共同化を推進するための施策の充実に努めるとともに、必要に応じて建築物の敷地面積の最低限度を定めるなど都市計画について付いても十分配慮すること。

2.住宅の地下室の建築が促進されることに伴い隣接地の建築物に安全上の問題が生じるなど相隣関係上の問題が増加することの内容、適正な施工の確保について付いて建築行政上重文配慮すること。3.我が国は、高温多湿の土地が多いことから、住宅の地下室の建築に際し中小工務店等への技術的指導に配慮すること。右議決する。

 

X平成6年6月29日建築基準法の一部改正等について 知事への通達(建設事務次官)第一 改正の概要1.建築物の地階で住宅の用途に供する部分の床面積について付いて、当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の3分の1を限度として延べ面積に算入しないこととした。2.防火壁の設置を要しない畜舎等について特定行政庁の認定を廃止した。第二 今後の運用方針住宅の地下室に係る容積率の制限の合理化について付いては、良好な市街地環境を確保しつつ、ゆとりある住宅の供給を図るための措置であることにかんがみ、以下の事項に留意して、関係市町村と緊密な連携を図り、適切な施行に努められたい。1.市街地において、敷地の分割が行われること等により敷地の狭小化が進行して市街地環境が悪化することがないよう、既成市街地における狭小な宅地の共同化を推進するための施策の充実に努めるとともに、必要に応じ、都市計画の決定権者が、建築物の敷地面積の最低限度等に関する措置を講ずることができるよう、都市計画担当部局と十分な連絡調整を図ること。2.住宅の地下室の建築が促進されることに伴い、隣接地の建築物に安全上の問題が請じるなど相隣関係上の問題が増加することがないよう適正な施工の確保について付いて建築行政上重文配慮すること。3.我が国の高温多湿な気象条件等にかんがみ、住宅の地下室の建築に関し、中小工務店等への技術的指導を行うよう配慮すること。

 

 

 

 

Y平成6年6月29日建築基準法の一部改正する法律等の施行について 知事へ宛(建設省住宅局長) 第一 住宅の地階に係る容積率制限の不算入措置について付いて1.対象となる住宅の範囲について付いて一戸建て住宅のほか長屋及び共同住宅を含むものであること2.住宅の用途に供する部分について付いて住宅の居室のほか、物置、浴室、便所、廊下、階段等の部分なども含むが、特に共同住宅の場合は以下の考え方を参考とされたい。@共同住宅の住戸の用に供されている専用部分は、住宅部分として取り扱うこと。したがって各戸専用の物置はこれに該当するものとして取り扱うこと。A共用部分のうち住戸の利用のために専ら供されている部分は、住宅部分として取り扱うこと。廊下、階段、・・・(省略)・・・管理人室などこれに該当するものとして取り扱うこと。3.対象となる地階に部分について4.他の容積率の特例制度との関係について付いて5.住宅部分に係る用途転用防止策等について第二 防火壁に関する制限の合理防火壁に関する制限の合理

以上をまとめますと

Uの中間報告

(ゆとりとは一戸あたりの居住面積を広くすることと推察される。)

想定される問題

 

V参議院の付帯決議

 

X建設事務次官からの通達

住宅の地下室に係る容積率の制限の合理化について付いては、良好な市街地環境を確保しつつ、ゆとりある住宅の供給を図るための措置であることにかんがみ、敷地の分割が行われること等により敷地の狭小化が進行して市街地環境が悪化することがないよう、必要に応じ、都市計画の決定権者が、建築物の敷地面積の最低限度等に関する措置を講ずることができるよう、都市計画担当部局と十分な連絡調整を図ること。」として環境悪化が起こらないよう強調している。

 

以上を考え合わせると、敷地の狭小化については細心の配慮をしているように見受けられる。しかしマンション分譲業者が地下室を単独で分譲することについて付いては想定になかったのではないか、と思われる。

 

 

B藤和不動産の建築計画を考える

・建物概要

工事場所 横浜市青葉区美しが丘5−22

用途地域 第一種低層住居専用地域

建ぺい率 50% 容積率 80%

敷地面積 1396.70u

建築面積 597.50u(42.7%)

延床面積 1645.00u(117.7%地下室の容積率不算入措置に

より理論上は120%まで可能)

共同住宅18戸

・何故18戸の分譲マンションの建築が可能か

→傾斜地のため1階部分は建築基準法でいう地下室に該当し、容積に算入しなくてよい。今まで(法改正前)12-13戸までしかたたなかったはずのものが建築基準法の地下室の容積率不算入を適用することに依り、18戸まで建築可能となった。

 

C問題提起

  1. 藤和不動産の計画が、地下室の容積率不算入の建築基準法改正の趣旨主旨(目的)と合ったものなのか。良好な市街地環境を確保しつつ、ゆとりある住宅の供給をしているのか。(今までと同じ住宅を1.5倍の数作っているだけではないのか)法を逆手にとった脱法的行為ではないのか。
  2. 一戸建てに比べ、世帯数が2倍以上になる。(今回の計画地でもし戸建分譲を行えば8戸位)公共施設の負荷が軽微であるといえるのか。
  3. 周辺の環境を保っているといえるのか。
  4. この様な建築が安易に認められれば、第一種低層住居専用地域であってもある一定の傾斜地であれば分譲マンション業者が開発可能(採算が合う)となるのではないか。(平坦地または北傾斜地はよほど土地が安くなければ採算が合わないと考えられる/地下室は分譲不可能)

 

この様なマンション建築が可能となれば、建築協定等がない限り斜面地は分譲マンション業者のターゲットとなります。第一種低層住居専用地域のあちこちに分譲マンションが建つ(可能性がある)ことが果たして望まれる住環境なのでしょうか。それとも一戸建てとマンションは住み分けるべきなのでしょうか。公共施設は第一種低層住居専用地域にマンションが軒を並べて建設されることも想定しているのでしょうか。人が2倍以上になっても上下水道、道路等公共施設にに問題はありませんか。

事実、実際に第一種低層住居専用地域でのマンション開発の事例が増えております。都市計画法で一戸建てで懸念されていた「敷地規模の狭小化の問題」(=いままでと同じ面積の土地に、敷地を狭め1.5倍の住宅が建設可能となること。むしろ住環境を悪化させることになると思われる。)は横浜市では最低限敷地規模の導入(平成8年5月10日施行)で解決しました。しかし、共同住宅(マンション)についてはも同様な問題が起こりうるとの認識が不足していたため、問題解決への対応がなされてないのはないでしょうか。解決されておりません。

業界の大手であり、中小の同業他社の模範となるべき藤和不動産株式会社がこのような法の本来の趣旨に反し、法を逆手に取った脱法的マンションを建設するということは甚だ遺憾であります。また、今後業界に与える影響も大きいと思われます。良好な市街地環境をつくるという意味では、この問題は我々美しが丘5丁目の住民だけの問題ではありません。早急に検討すべき問題だと思います。建物が建ってからでは遅いのです。

 

美しが丘5丁目の環境を守る会