平成10年(行ウ)第15号 建築確認処分取消等請求事件

答弁書

原  告  松   本   茂  他六名

被  告  横浜市建築主事 梅 本 龍 一

被  告   横    浜    市

平成10年6月29日

(送達場所)

〒213−0011

横浜市中区太田町1丁目17番地 川島ビル2階

電 話  045−662−****

FAX  045−662−****

( 横 浜 弁 護 士 会 所 属 )

右被告両名訴訟代理人

弁護士   川   島   清   嘉

横浜地方裁判所第一民事部合議係 御中

第一 請求の趣旨に対する答弁

一  本案前の申立て

  1 原告らの被告横浜市建築主事及び被告横浜市に対する請求をいずれも却下する。

  2 訴訟費用は原告らの負担とする。

  との判決を求める。

二 本案の申立て

  l 原告らの被告横浜市建築主事及び被告横浜市に対する請求をいずれも

   棄却する。

  2 訴訟費用は原告らの負担とする,

  との判決を求める。

第二 本案前の申立ての理由

  被告横浜市建築主事に対する請求について(訴えの利益の消滅)

 l 原告らが取消を求める平成9年8月15日付第HO九認建浜青000708号の建築確認(以下「本件建築確認」という。)により確認を受けた建築物(以下「本件建築物」という。)は、平成10年6月2日ころ建築工事が完了し、建築主である藤和不動産株式会社及びエフ・ティー都市開発株式会社から同月5日に工事完了届が出された。被告横浜市建築主事は同月11日に本件建築物及びその敷地を検査し、これが建築基準法7条3項所定の法令の規定に適合していることと認め、同月18日、建築主に対し検査済証を交付した(乙10ないし12)。

 2 建築確認の取消を求める訴えについて、近隣住民に原告適格が認められる場合であっても、確認を受けた建築物の建築工事が完了したときは、建築確認の取消を求める訴えの利益は失われる(最判昭和59年10月26日民集38・10・1169)。

 3 したがつて、原告らには本件建築確認の取消を求める訴えの利益はなく、被告横浜市建築主事に対する訴えは却下されるべきである。

二 被告横浜市に対する請求について(併合要件の消滅)

 

l 被告横浜市に対する損害賠償の請求は、行政事件訴訟法13条1号の関連請求として、被告横浜市建築主事に対する取消訴訟に併合提起されたものであるが、右取消訴訟に係る請求を却下すべきことは一で述べたとおりである,

2 取消訴訟と併合提起された関連請求に係る訴えが併合要件を満たさないため不適法となる場合には、関連請求に係る訴えを独立の訴えとして自ら審判をするのが原則とされる。

しかしながら、本件で原告らが被告横浜市に対して求めている損害賠償請求の内容は、本件建築確認に対する審査請求及び被告横浜市建築主事に対する取消訴訟のための弁護士費用であつて、取消訴訟が却下された場合には、独立の訴えとしての意味をもたないものである。

即ち、本件損害賠償請求は、右取消訴訟と同一の手続内で審理されることが前提とされ、専ら併合審判を受けることを目的として提訴されたものにほかならない。

3 このような場合には、取消訴訟が不適法として却下されれば、関連訴訟についてもその前提と目的を失うことになり、不適当として却下されるべきである,(福岡地判昭和62年6月30日判時1250・33、最判昭和59年3月29日判時1122・110参照)。

4 以上の理由により、被告横浜市に対する損害賠償請求についても却下されるべきである。

 

第三 請求の原因に対する答弁

一 請求原因第1項(l及び2)は認める。

二 請求原因第2項について

lは認める。

2のうち、第1文(本件建築物の敷地の接道及び地盤の傾斜に関する記載)及び北側公道の向かいに接する建物が1戸建てであることは認め、その他の記載についても特に争わない。

なお、乙第9号証は、本件建築物の敷地(以下、「本件土地」という。)周辺の住宅地図であるが、このうち、オレンジ色に着色した部分が共同住宅である。本件土地の周辺には共同住宅が数多く建築されているので、原告らが居住する地域は、一戸建て住宅のみが建ち並ぶ閑静な住宅地というわけではない(乙7ないし9)。

3は否認ないし争う。

三 請求原因三項について

lは争う。

2のうち、建築基準法五二条二項の立法趣旨に、原告ら主張の目的が含まれることは認め、その余は否認ないし争う。

3のうち、本件建築物の最下層階に位置する建物部分について、建築基準法の「地階」に該当する部分を一戸の住宅として分譲する予定があることは認め、その余は否認ないし争う。

4は争う。

四 請求原因第四項について

1は争う。

2は認める。

3のうち、冒頭の「本件建築物は、・・・南側公道の地盤の水平面まで掘削したうえ」の部分、及び、本件建築物が四層であることは認め、その余の記載は争う。

4及び5は争う。

五 請求原因第五項について

1は争う,

2は認める。

3は認める。なお、地階の判定における地盤面について、建築基準法施行令二条二項の地盤面の定義が直接に適用されるものではないが、建築物にからぼりを設けた場合のからぼりの取り扱いについては、地階を判定する場合にも施行令の定義が直接適用される場合に準じた解釈がなされるべきである。

4のうち、冒頭の「本件建築物は、・・・南側公道の地盤の水平面まで掘削したうえ」の部分、及び、本件建築物が四層であることは認め、その余の記載は争う。

5ないし7は争う。

六 請求原因第六項について

原告*****を除く原告については認め、原告**については否認する。原告**は審査請求の申立てをしていない(乙6)。

七 請求原因第七項について

1 1のうち、柱書きについて

原告らが、本件土地の周辺に居住していることは認め、その余は否認ないし争う。

2 1の@ないしEについて

いずれも否認する。原告らが居住する住宅と、本件建築物との位置関係は、乙第8号証のとおりであり、原告らの住居は、いずれも本件建築物の北側又は西側に位置する。原告らが主張する圧迫感、「上から見下ろされる危険」、眺望といつたものは、多分に主観的・抽象的なものであって、具体的な権利と評価できるものではない。

3 2のうち、原告**を除く原告らが審査請求をしたこと及び原告らが本訴を提起したことは認め、弁護士費用は不知、その余は否認する。

4 3は争う。

八 請求原因第八項は争う。

証  拠  方  法

乙第一号証  建築計画概要書

乙第二号証  建築確認申請書添付の配置図

乙第三号証  建築確認申請書添付の断面図

乙第四号証  建築確認申請書添付の地盤面(3m毎)の算定図

乙第五号証  建築確認申請書添付の地階の算定図

乙第六号証  本件審査請求裁決書

乙第七号証  本件土地周辺の用途地域図

乙第八号証  本件土地と原告ら居住地の位置を示した図面

乙第九号証  本件土地周辺の共同住宅を示した住宅地図

乙第一〇号証 工事完了届

乙第一一号証 建築確認台帳(写し)

乙第一二号証 検査済証(写し)

添  付  書  類

一 乙号証写し             各一通

二 訴訟委任状              二通