平成9年4月24日

藤和不動産株式会社 殿

 

 

美しが丘5丁目の環境を守る会

 

此の度横浜市当局のあっせんに依る貴社と私共「美しが丘5丁目の環境を守る会」(以下守る会と略す)との間の話し合いにつきましては、が、私共の当初の基本的な要求として戸建住宅への計画変更を敢えて棚上げし、市当局のガイドラインに沿いつつ中高層建物をベースとした大幅な譲歩をもって度重なる度重ねての真剣且つ悲壮な各種要望を提示したにも拘らずにも拘らず、貴社に依る何等実質的な改善回答もなく、あまつさえ計画通りの建築確認を急ぐあまり本あっせんの打ち切りを迫る貴社の暴挙の前に、これが終息の止むなきに至りましたことは私共住民の心底の怒りと遺憾の極みであります。

私共一同は此処にこれまでの市当局に依る6度に亘るあっせんのおわりが私共「守る会」にとって当該紛争のはじまりであることを宣言申し上げると共に、私共が引続き断固として貴社のマンション建設計画の抜本的再考を求めなければならない理由を改めて下記に申し上げるものである。

 

  1. 法の理念と趣旨の歪曲

私共「守る会」が貴社の当該マンション建設計画を「脱法的」であり「法の悪用」として糾弾して止まない理由は、貴社が先般来建築基準法の改定に依る地下室の容積率算入制限の緩和 措置を利用して、私共の居住地たる第一種低層住居専用地域(容積率80%)になんと容積率117%に及ぶマンションを建設し、且つ傾斜地面を利用して実質の高さ12m以上(高さ制限10m)もある地下1層、地上3層、計4層の建物とし、とし、更に驚くべきことに地下1層は駐車場や其の他居住者用共有部分と思いきや、これを全て販売用居住戸数に参入参入させようとしていることであります。

かくてもともと第一種住居専用地域(以下「一種住専」と略す)では客観的に想像すら出来ない4階建ての高層ビルが我が町に出現し、もって近隣:周辺住民に対する予想される被害の数々は枚挙にいとまないことは再三あっせんの場で指摘の通りであります。下記重要点を再録する。

  1. 交通量の飛躍的増大に依る被害
  2. 先述通り貴社計画のマンションが旧来の「一種住専」に比べて容積率約1.5倍、即ち人口、住居戸数にして同様の約1.5倍、即ちまた自動車保有台数にして同様の約1.5倍となるなります。しかも地形的、又道路事情を考慮すれば、全戸の自動車の出入口は当該マンションの北側面に配置される計画数計画故、同敷地の北面に接する道路は全戸数の保有自動車の集中利用を浴びること必至であり、これに依る交通の混雑、騒音、そして通学路上での児童の危険は到底住民の耐え得るところではなくこれを貴社の暴挙と考える所以であるあります。

  3. 高層マンションの圧迫感

先述通り旧来の「一種住専」地域では想像し出来なかった4層(=4階)建て建造物が傾斜地面上であるが故に急斜面の下側に位置する居住民に対する圧迫感は予想以上のものとなろうなりましょう。閑静な戸建住宅の立ち並ぶ「一種住専」地域に突如としてそびえ立つ高層建造物が平和閑静な丘陵住宅地の景観そのものを破壊するであろう被害と相俟ってこれを貴社の許すべからざる暴挙と考える所以であるあります。

以上の他、近隣・周辺住民の蒙る被害の数々はここでは省略するとして、私共は貴社に問う。

貴社が上述の如き私共住民に予想される被害と犠牲に目をつむり、敢えて当該建設計画を推進強行せんとするならばその動機並びに根拠は何なりやと。

もしそれが再三再四私共が主張してきた通り、過般の建築基準法の改定にありとするならば、それこそ貴社に依る法の理念と趣旨の歪曲以外の何物でもないことを厳しく糾弾してゆかねばならないと考えます。

繰返し申し上げる。当該建築基準法に依る地下室の容積率算入に関する制限緩和措置は、その理念も趣旨も住環境の保全とよりゆとりのある住宅供給にあることは明らかであり、横浜市がこの緩和措置に伴って戸建用宅地の狭小化を防止すべく都市計画法等関連法規により最低敷地規模を規定しております。発令した関連条例に照らしてみても歴然としているのである。( 条例第 項)

2. 公序良俗の破壊

美しが丘一帯の住宅地はその開発当初、同一丁目の美しが丘団地の中高層集合住宅を中心として、それを取り囲む2丁目から5丁目に一戸建を割り振るという、先進諸外国並みに住み分けの徹底した町作りからスタートした。かようなこと計画を実現可能ならしめたのも、鉄道もなく不便で古くからの住民以外に住む人もない過疎の丘陵地に、山を切り開き鉄道を引き、駅前から広がる美しい住宅地を造成した、一民間事業主の町作りへの進取の理念と理想と、それを実現する努力があったからこそであると云う。

先進諸国の高級住宅地を御覧になれば自明の如く、一戸建と中高層建物の住みわけは厳しく徹底されており、そのため住宅地としての景観は美しく統一されている。この景観を守るために行政、住民、民間業者の三者が共同して、並々ならぬ努力を傾注していると云われる。

私共の美しが丘一帯がの、今や全国有数の「住んでみたい町」にランクされるまでの評判を手中に出来るようになったのも、まぎれもなくかような住みわけの理念・理想があったればこそであり、当初の一事業主の理念と理想は、何十年に亘る美しが丘の町作りの歴史の中で、私共住民に引継がれ、今日この地域の公共の秩序と化し、善良なる風俗と共に育まれて来たのだ。多言を要しまい。私共は今般貴社より提示されたマンション建設計画そのものが遺憾乍ら、先述の如きこの地域での公秩良俗にまさしく違反したものと断ずるものであるあります。

此処に私共「美しが丘5丁目の環境を守る会」として、貴社が我国に於ける一流企業としての社会的責任を能く認識され、住環境を規定する各種の法もこれをを現実の後追いとしてではなく、その理念と趣旨を先取りし、もって何十年という年月の間に育まれて来たこの地域の「住みわけ」なる公序良俗とそしてそれにより培はれて来たこの全国有数の良好な住環境をを破壊することのなきよう、貴計画の抜本的な再考を促すものであるります。

上。