荒野に一本の芽が出た。

小さくて頼りないそれは、またいつものようにすぐ枯れてしまうのだと思った。

なのに。

気付くと自分はその芽のことを気にかけていて。

こまめに水をやったり、日よけをつけてみたり。

すぐに枯れてしまうと思っているのに。

なぜだか気にかけている自分がいる。

この芽に枯れて欲しくないのだと気付いて狼狽した。

そんな気持ちを持ったのは初めてだったので。

だから逃げた。

芽を見ないように、芽のことを考えないように。

自分が初めて持った芽への興味や執着が怖かった。

なによりも、この芽もいつか枯れてしまうのだと。

いつでも当たり前に思っていたことが。

怖かった。

目をそむけ、思考をそむけ。

逃げた。





駅前の待ち合わせ。
こっちに気付くとすぐに慌てたように小走りでやってくる。
「忍足、久しぶり!」
まだ待ち合わせの時間には少しあって、遅れたわけでもないのに。
目の前に立って、にこりと笑う菊丸に、忍足は困ったように目線を下に向けて顔を隠すように髪をかきあげた。
顔を見たらもう駄目だった。
わかってしまった。
逸らし続けている間に、荒野は大きな森にまでなっていたらしい。
「ん〜? どうかした?」
訝しげに下から覗き込んでくる菊丸の肩を掴んで、耳元に囁いた。


「あんな、俺、じぶんに言いたいことあるんやけど」


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短いですが、わりと気に入っていたりして。
どうも忍菊だと甘くなる傾向にあるようです。