忍足がなにかでもらったのだとポラロイドカメラを見せてくれた。
流行のちっちゃいヤツじゃなくて、ちゃんとした大きなヤツ。
ホントにすぐ写真は出てくるけど、画像が浮かぶまでには意外に時間がかかったけど、そんなことも面白くて一日中写真を撮った。
二人で交代に。
すぐなくなったフィルムも、二人でお金を出し合って買い足した。
だからってこう、ポーズとかとるわけじゃなくて(や、とったのもあるけど)、なんでもないとこ、俺がアクビしたとことか、忍足が水飲んでるとことか、そんなのをいっぱい撮った。
夕方、もうすぐ俺が帰る時間になって、二人で写真の山を見てちょっと笑った。
一枚ずつ見ていくと、その時のことがすごくはっきり思い出せた。
普段だったらアクビしたりとかなんてすぐ忘れちゃうのに。
なんかすごく不思議。
写真を見ながら、そんなことを話してたら、ふいに忍足の表情がなくなって……いきなり写真を破りだした。
「ど、どうしたんだよ!」
慌てて止めたら、なんだか急に力を抜いて俺の肩に頭をのせる。
「……あかん、かんにん」
なんだかすごく悲しそうな声だった。
よくわかんないけど、忍足が悲しいのはいやだ。
できるだけ忍足を動かさないように姿勢を変えて、忍足がいつもしてくれるみたいに背中に手を回してぽんぽんと叩く。
「忍足……」
でもなんで悲しいのかわかんないから、そっと忍足の名前を呼んだ。
しばらくそのままでいたら、忍足はぼそぼそと話し出した。
「なんや……写真見てたら、きっと……じぶんがおらん時も見るんやろな、とか思ってん。けど、そやって見て、そん時のこととか思い出しても、そん時じぶんはおらんねん。俺……一人で写真見て、思い出して、そんで一人やってこう…………なんや、えらい寂しいやん、そんなん……」
ぽつりぽつりと、言葉を捜しながら。
うまく言葉にできないのか、照れくさくてしょうがないのか(たぶん両方)、途切れがちな言葉に、不謹慎かな〜と思いつつもうっかり笑いがこぼれちゃう。
「忍足……顔上げて」
「や……今はちょっと」
だろうな〜。耳赤いもん。
普段はすっごい恥ずかしいセリフ平気で言うクセに、やっぱこういうのは恥ずかしいらしい。
ま、わかるけどね。俺も男だし。
でも許してやんない。
「ダメ。俺は忍足の顔が見たいの。今」
「あかんて、もちょい」
「ダ〜メ、顔上げてくんないなら帰っちゃうぞ?」
卑怯だけどそう言って脅すと、ものすごく渋々と、でもやっぱり時間を稼ぐようにゆっくりと顔を上げてくれた。
鼻にちょっとシワ寄せて。忍足の照れてるときの癖。
その顔とか、顔上げてくれなきゃ帰るっていうのが脅しとして有効なこととか、そういうのがなんかすごく嬉しくて、シワの寄ってる鼻を軽くつまんだ。
「……じぶん、バカにしとるやろ」
ほんっと〜に滅多に見られない拗ねてる忍足。
「してません〜」
よしよしって頭を撫でたら、ふいっと視線をそらした。
「やっぱしとるやん。情けないて思てんのやろ?」
「してないって。するわけないじゃん。……情けないとは思うけど」
顔を両手で挟んでムリヤリ視線を合わせる。つけたした言葉はちょっと容赦がなかったのか、忍足はさらに情けない顔になる。
「わかんない? 俺、すっごい嬉しいんだけど」
忍足がなにか言いかけるけど、それよりも早く。
「だって忍足がそんなに情けなくなっちゃうのって、俺のせいだろ? 俺のこと好きだからそうなるんじゃん」
違う? と顔の覗き込むと、妙に真顔で肯定された。
「普段すっごいカッコいい忍足がさ、そやって情けなるくらい俺が好きなんてさ、俺に喜ぶ以外になにしろって?」
「……じぶん、むっちゃ物好きやん」
悪あがきだね、忍足くん。
「その物好きが好きなのは忍足じゃん」
忍足はやっとあきらめたみたいに俺の背中に腕を回してきて、今までのお返しってぎゅって力を入れた。
「って、痛い痛い!」
ブレイク、ブレイクって背中叩いて、やっとちょっと力を抜いてもらって、ぷはっと息をついた。
そのままの体勢で、しばらくの間『好き』って、言うだけじゃなくて、目とか指先とか色んな方法で伝え合う。
それで『好き』に付随して色んな話して。
とりあえず写真は二人で一緒の時だけ見ようってことになった。
これからもたくさん写真撮って、そんでたくさん二人で見るんだ。

予定よりもかな〜り遅くなって、絶対帰ったら怒られるの確実だけど、でもやっぱり俺のご機嫌絶好調はとまんなかったのだ。


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ちょっと補足。
菊丸の一人称なんで書けませんでしたが、忍足は別れた後のことまで想像してヘコんでました。
それでも自分はまだ好きな状態で想像する辺り、やっぱりラブラブってことで(笑)