偶然会って、ちょっと立ち話したら妙に楽しくて、俺は今までホント挨拶もしないくらい知らなかったヤツともっと話したいって思った。
だから
「なあ自分、ちょお時間ある?」
って聞かれた時、忍足もそう思ってるのかなって思ったら、なんかすごく嬉しくて勢いよく「ある」って答えてた。
二人で連れ立ってファミレス行って、俺はココアで忍足はコーヒー。
ブラックで飲むのがカッコいいって言ったら、忍足は笑って
「修行してやっと飲めるようになってん」
わざわざ修行するもんなのかな?
ちょっと飲ませてもらったら、やっぱり苦くてココアで口直しをした。
忍足はそれを見て笑ってた。
テニスのことも話したけど、それよりももっと他のことを話した。
音楽の好みとか、女の子のこととか、あと忍足が映画が好きって言って映画のこととか。
話たいことがいっぱいあって、そんで話して欲しいっていうか、忍足のこといっぱい知りたくて、でもやっぱり俺のがいっぱい話してるんだけど、それがなんかすごく楽しくて。
調子にのって俺は小さい頃のこととかまで話しちゃってた。
ハーモニカが吹けなくて悔しくて唇の皮がむけるまで練習したことまで話した。
なに言ってんだろ俺って思ったけど忍足も笑ってるからいいかな。
「なんや目に見える気ぃするわ」
集中するとそれしか目に入んなくなるんだけど、集中するまでがたいへんなんだけど。
「そうなん? ええこと聞いてもうた」
忍足が笑うから、俺は忍足の残ってたコーヒーを一気飲みしてやった。
俺のココアもとられちゃったけど。
口直ししたいけどココアはない。
「追加、頼まへん?」
メニューを差し出してきた。俺、そんなに苦そうな顔してたかな。
腹もへってきてたから、俺はパフェ頼んで、忍足は今度は紅茶とサンドイッチ頼んだ。
サンドイッチ一つもらった。
俺もパフェ少しあげた。
それで食べながらまた話した。
って言っても俺が話してる方が全然多くて、忍足は俺が話す合間合間に話すくらいなんだけど、でも楽しかった。
気がついたら三時間も過ぎててビックリした。
そろそろ帰らなきゃって言ったら、忍足もそこで始めて気がついたみたいで驚いてた。
二人で顔見合わせて笑って。
忍足は自分が誘ったんだから奢るって言ってくれたけど、誘ってくれたの嬉しかったし、話してたのがすっごい楽しかったからいいって自分の分はちゃんと自分で出した。
外に出るとき、忍足がふいに言った。
「自分がハーモニカん時みたいに集中するにはどうしたらええんやろ」
うーん……それがわかってればテニスのときも苦労しないと思うんだけど。
「あんな……俺、よおわからんのやけど、自分に集中して欲しいみたいなん」
最初っから集中してる俺と試合したいってことなのかなって思ったけど、なんか違うらしい。
「……あー、まだ早いか。集中するまでがたいへんなんやんな」
忍足は勝手に納得して笑ってる。
なんかズルイ。
「や、なんでもあらへん。気にせんといて。……ほなまた」
俺もまたねって言った。
普通に『また』って言葉が出てきた。
なんかすごいなーって思いながら歩いてたら、少し歩いたところで腕を掴まれた。
振り返ると忍足だった。
少し走ったのかな。なんか息ついてる。
「連絡先、聞くの忘れててん」
照れくさそうな顔で言われて、俺もあって声あげた。
二人でまたって言ったのに、二人とも相手の連絡先知らなくて。これじゃ『また』なんてこと、今日と同じ偶然に期待するしかない。
二人でしばらく笑った後に、お互いの携帯番号と、ついでにメールも教えあって、今度こそ『また』って別れた。



それからずっと、なんだか忍足のことを考えてる。
毎日メールして、そんでたまに電話なんかもしてるけど。
毎日普通に暮らしてて、学校行って勉強してテニスして、そんなときにふっと忍足のことが浮かんでくる。
これって……ハーモニカの時とはちょっと違うけど、やっぱり忍足に集中してるってことなのかな?
今度忍足に会ったら、そう言ってみようって思った。


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今更ですが、サイト内の話は特に表記がない限りリンクしてませんので、もちろんこれも『かみなり』や他の忍菊とは別の、二人の始まりです。
やっぱり忍菊好きだなぁ。
お題(ハーモニカ)がちょこっとしか出てこないのは、もういつものことってことで……(涙)