「……じゃ、行くか」
宍戸が歩き出した。
菊丸もすぐに並んで歩く。
さっきとはうって変わって二人とも黙ったままだった。
とりあえず言いたい事は言った。
今はお互いが傍にいることを今更ながらに実感しているところ。
「……おい」
「んー?」
「試合、ちゃんと見ただろうな」
「……うん」
「ならいい」
やっぱりちょっと複雑だったけど。
乾も海堂もチームメイトで、二人ともすごい練習をしてたのを見てた。
がんばってるのを間近で見てた。
だからすごく複雑で、どっちにも勝って欲しいと思いながら見た。
宍戸がポイントを取って、内心で『やった!』と喜んでは、乾と海堂に、そして青学の全員に頭の中で謝りながら見た。
「もう俺は絶対負けねぇ」
宍戸は固い声で言った。
「もう二度とお前にあんな激ダサな俺は見せねぇから」
ぐっと、一瞬だけ宍戸は菊丸の手を強く握る。
こっそりと見に行ったのはバレていたらしい。
試合に集中してて気付かないと思ったのに。
菊丸は決意もあらわな宍戸の顔をチラリと見た。
「……やっぱ宍戸ってバカかも」
「ぁあ?」
「だって俺知ってるもん」
わずかに宍戸に近寄り腕を擦り付ける。
「余裕かましてるようなコト言ってたって、そんで試合に負けちゃったって、宍戸がすっげーたくさん練習して、すっげーがんばってんの知ってるもん。負けちゃったくらいで激ダサなんて思うワケないだろ」
「菊丸……」
「俺は宍戸が激ダサなんて、一度だって思ったコトないかんな」
「………………サンキュ」
宍戸はまた菊丸の手をぐっと握り、そして今度は離さなかった。
「……そんなんで俺放っとかれたのか」
ブツブツと呟く菊丸に宍戸はばつの悪そうな顔をする。
「つったって、どっちにしろレギュラー落ちだしよ。どうにかしねーとだったし」
「そりゃそうだけどさー。携帯の電源切ってまでってどーよ」
「んなもん、お前の声なんか聞いたら……」
菊丸、むっ。
「聞いたらなに」
「……会いに行きたくなんだろーがよ」
「………………恥ずかしいコト言うな、バカ」
「何が恥ずかしいだ。本当のこと言ってるだけじゃねーか」
「あーもう、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいっ!」
「うっせーな! だいたいお前だって、試合で点取るたんびに相方に引っ付いてんじゃねーよ!」
「なんだよそれー! 今関係ないじゃんか! それにフツーのスキンシップだろ!」
「ハイタッチくらいならともかく、抱きついたりすんのはやりすぎだってんだよ!」
「嬉しいんだからしょーがないじゃん!」
徐々にヒートアップする二人の会話。
誰の目にも(いや、見ている人間はいないが)第二回戦の始まりは明らかだった。
しかし、どれだけ言い合いが続いても、二人の手が離れることはなく。
ただの痴話喧嘩であることも明らかだった。


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