文化祭前である。
学校内はいつもにない活気に満ち溢れていた。
そしてそれはテニス部も同じことで、狭い部室の中にはなんだかわからないダンボールやら木材やらであふれているのだ。
「んも〜、うまくできないっ」
ダンボールの切れ端と格闘していた菊丸がとうとうそれを放りだした。
片手には切れ端通しを接続するためのガムテープ。
「どうしたんだ、英二」
乾が自分の作業の手を止めて覗き込んだ。
「ガムテープがさぁ、うまくくっつかないんだよ。もーやだー」
見れば菊丸が持っていたダンボールはガムテープでゴテゴテになっている。
乾は苦笑した。
「英二、ガムテープは重ねて貼るのはよくないよ」
ガムテープを取り上げる。
「ガムテープ、特に紙製のものはガムテープの表面の加工によってつかないようになっているからね。これが布製だと少しはマシなんだが」
乾は菊丸の両手を片手で握った。
「だからガムテープで強力にしたい場合は……」
菊丸の手首と肘の中間をグルグルとガムテープで巻く。
「ちょっ…い、乾?」
「これだと端から剥がれて1周分しか用を成さないから、こうやってずらして……」
まず肘の方に大きめな螺旋。
次いで方向を変えて手首までを大きめな螺旋で、しかもさっきの螺旋と互い違いになるように巻く。
「……できた」
「乾……外れない」
「うん。こういう風にやると、すごくしっかりと固定できるだろう?」
「うん……それはいいんだけど……」
「さてと」
乾は立ち上がって、ひょいと菊丸をかつぎ上げた。
「うわわわ! な、なにすんだよ、乾〜」
「いや、あまりにも上手くできたからね。ちょっと拉致させてもらおうかと思って」
「……は?」
「じゃ、そういうことで」
いくら自分よりも背が低いとはいえ、同じ年の男子一名をかついでもふらつきもせずに歩けるとは、乾貞治、さすがにいい仕事(練習)をしている。
「そういうことでじゃなくてーっ!」
「まあまあ」
スタスタスタ……。
他のレギュラーメンバーのいないこの部屋に、乾を止められる者は誰一人としていなかった。
「に゙ゃーっ!」

かくして菊丸英二は乾貞治に見事にお持ち帰りされたのだった。
ガムテープは物と物を繋げるだけではなく、人と人を繋ぐためにも役立つのである。
たとえ片方に同意がない場合でも。
いや、その場合こそ本領を発揮すると言うべきだろうか。


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昔、バイトでガムテープにまみれていた思い出がよみがえりました。
だからなんだと言うわけではないのですが。
……いや、乾、ごめん。