自動販売機。
色んなものを無人で売ってくれる魔法の箱。
ジュースはもちろん、タバコだって、お菓子だって、オケラだって、アメンボだって。
みんなみんな売っているんだ。便利なんだ。

菊丸は最近お気に入りのヨーグルトドリンクを買うために自販機に100円を投入した。(紙パックジュースは100円)
チャリン。
音を立てて100円玉が落ちた。
菊丸がヨーグルトドリンクのボタンを押そうとした、まさにその時。
自販機の陰からぬっと出てくる人影。
「……い、乾?」
「君が落としたのは、この昭和23年製造の10円玉(ギザ付き)かい? この平成3年度製造の500円玉かい? それともこの何の変哲もない100円玉かな?」
菊丸はヨーグルトドリンクが飲みたいのだ。
そしてこの自販機は旧500円玉は使えない。
10円は論外である。
(っていうか、ギザ付きってなに!?)
「……っていうか、落としてないし」
菊丸は無造作に100円玉に手を伸ばした。
「おめでとう!」
ビクゥ!
突然の乾のコールに菊丸が身構えた。
「……な、なに?」
あんまり聞きたくなかったが、理由がわからないのは、それはそれで怖いので恐る恐る聞いてみた、という感じだ。
乾は逆光でメガネを光らせながら、じり……と近寄る。
「正直者のあなたには、この乾特製エクセレントデューティーミックス乾汁X(エックス)と、この俺を恋人としてプレゼントフォーユー」
「は、はあ!?」
「さ、遠慮なさらず」
遠慮っていうか、遠慮っていうか……遠慮じゃなくて拒絶って選択肢は!?
菊丸は逃げ出した。
乾に回り込まれた。
「エクセレントデューティーミックス乾汁X(エックス)と、マーベラスファンタジック乾汁Z(ゼット)と悩んだんだけどね。スペシャルはもう使ってるし、Z(ゼット)よりはX(エックス)の方が美味そうかと思ってね」
乾は薀蓄をたれた。
「に、にゃー!?」
菊丸は混乱した。
乾は菊丸をひょいと肩に担ぎあげた。
菊丸は混乱している。
乾は歩き始めた。
菊丸は混乱している。
乾は幸せになった。

菊丸は…………?


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乾さん……カッコいい(ぽっ)