乾と菊丸は地下鉄のドアの脇に立っていた。
テニスの試合を見学した帰りである。
試合と言っても、学校とは全然関係ない。
大半はどこかのテニスクラブに所属するプレイヤーばかりで、学校テニスとはまた違った雰囲気があった。
ひとしきりその話をした後、ふと菊丸が暗い窓の外を見ながら
「俺、地下鉄ってあんま好きじゃないなー」
と呟いた。
「なんで?」
「…………外見えないし。なんか景色変わんないからつまんないじゃん」
いかにも菊丸らしい答えに乾は少し笑った。
「でも……そうだな」
乾は眼鏡を押し上げて自分も窓の外を見る。
「改めて考えてみると、トレーニングに似ているような気がしないか」
「へ? なにそれ」
「うん。景色は変わったように見えないし単調だけど、確実に次の駅に向かって進んでいる……なんてな」
自分で言って、少し照れる乾だった。
「……そっか。うん、そだね。そうかもしんない」
「そう考えると地下鉄もそんなに悪くないだろう?」
「ん……」
菊丸はしばらくじっと窓の外を見、そしてそっと乾にもたれた。
「乾……俺やっぱ地下鉄は好きになれないかも」
「……英二?」
「酔った」
「……外、見すぎだよ、英二」


SStop 100Top Top nfTop



地下鉄は酔います。外も見えないし、何より独特の臭いというかがある気がして、どうにもダメです。