オムライスを見ると思い出す人がいる。
初恋の人。
……いや、現在進行形でずっと好きな人。
俺を真っ直ぐ見てくれて、俺の言葉をわかってくれた人。
兄貴の友達なのに、誰よりも先に「裕太」って呼んでくれた。
俺が兄貴に色んな複雑な気持ち持ってるのもすぐに見抜かれて。
なんでわかるのかと聞いたら、自分も弟だからかなって笑ってた。
「裕太はどんなテニスするようになんだろ? 俺は……なんかガンガン真っ直ぐ攻めてくファイタータイプだと思うなー」
「……兄貴がテクニックタイプだからっスか?」
「バーカ、違うよ。裕太見ててそう思ったんだよ」
なんでもないことのように笑いながら言ってたけど、たったそれだけのことだけど、俺にはその時どんな言葉よりも嬉しかったんだ。
自分でも単純だと思ったけど、それからどんどん惹かれていった。
言葉が、笑顔が、仕草が。
気がつかないうちに目が追いかけてしまうんだ。
「外野の言うコトなんか気にすんな。裕太は裕太じゃん。裕太は不二になれないけど、不二だって絶対裕太にはなれないんだぞ?」
そんな当たり前のことがわからなくなってた俺は、その言葉に目が覚めた思いだった。
あの人にこれが不二裕太のテニスなんだって胸を張って言える自分になりたい。
でも、周りの奴らの言葉はそんなに気にならなくなったけど(ある程度は)、どうしても兄貴を見ては比べてしまう自分自身が一番嫌で。
だから転校する決意をした。
兄貴が目に入らない場所なら、兄貴と比べずに自分を磨けると思った。
そう言った俺に、あの人は笑って
「裕太がそう思うんならいいんじゃん?」
って言った。
止めるわけでもなく、バカなことをと怒るわけでもなく、ただ一人背中を押してくれた。
そして餞別ってオムライスを作ってくれたんだ。
やっと上手く作れるようになったと笑いながら出されたそれは、ちょっと形は崩れてたけど本当に美味しくて、それを食べながら少し泣いた。
自分が情けなくて泣いた。
たくさんくれた言葉を全部無駄にしてしまった気がして、いつも俺に元気をくれたこの人を裏切る気がして、泣きながら謝った。
「バッカだなー」
怒った顔でデコピンをもらった。
「俺は裕太をすごいって思ってるぞ。だって裕太、テニス嫌いになったりしなかったじゃん。テニス続けるんじゃん」
思いがけないことを言われて、たぶん俺はかなり間抜けな顔をしてたと思う。
「テニス好きだろ? 強くなりたいんだろ?」
かっくんかっくんと俺は頷くしかできなくて。
「だったらいいじゃん。どうしても気になっちゃって楽しくテニスできないよか全然いいよ。俺はテニスを止めたりとか、そういうんじゃなくて、テニスをするためにちゃんと考えた裕太はエライって思う」
だからがんばろうな、と。
「俺も裕太に追い抜かされないようにがんばんないとね」
そう言って笑った人にまたこみ上げてきた。
結局半分以上は冷え切ったオムライスだったけど、その時のオムライスの味は一生忘れないと思う。
「次に会った時は試合しよーな。約束」
いまだに約束は果たせないけど。
いつか自分が納得できるテニスができたら、そうしたらその時は……。
またオムライスを作ってもらおう。


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兄貴の友達に片思い。青くていいなぁ〜。
でもやっぱり志低くない?