ベンチに座ってランチボックスを出す。
「あ? 作ってきたのかよ」
「そだよん。昨日テレビ見てたら、美味そうな料理出てきてさ、作れるかなーって思って作ってみたんだ♪」
笑ってランチボックスを広げる菊丸は、だから味の保証はなしとあっけらかんと言った。
「……味見くらいしてんだろうな」
「ん〜、怖いからしてなーい」
「実験台かよ」
と憎まれ口をたたきながらも、宍戸は箸を取った。
菊丸の料理の腕はこれまでにも何度か確認させてもらっているし、あれだけの料理の腕があって、そうそう食えないほどのものは作らないだろうという目算である。
広げられた料理は、やはり見る分にはしっかり美味そうだった。
「いただきます」
神妙に挨拶をして(しないと怒られるのだ。最悪食べさせてもらえない)宍戸は料理に箸をつけた。
内容的にはカフェご飯。
マリネ風のものやら、パン粉に工夫をしたちょっとお洒落な揚げ物、サラダも数種類入っている。
それにおにぎりというのが笑えるのだが。
これは成長期の男の子ということでカンベンして欲しい。
きっちり満腹感を得るにはご飯はなによりなのだ。
この辺は以前宍戸が言ったことでもある。
細かく分けられた料理の数々を一通り食べた宍戸の箸がふと止まった。
「どうかした?」
菊丸が首を傾げる。
「いや……今日の飯、美味いな」
「そう?」
嬉しそうに菊丸が笑った。
しかし、その笑顔がいつもと微妙に違うことに宍戸は気付いている。
「宍戸、どれが好き?」
「これとこれ、それからこれ……」
宍戸が料理を示すごとに、菊丸の気分が下がっているのがわかった。
自分でも甘やかしてるなと思う。
「……は、お前が全部食え」
菊丸の目が丸くなった。
鳩が豆鉄砲……と言うよりは、菊丸なら猫が目の前で手を叩かれた感じか。
「え、えと、宍戸……」
「るせぇ。わかんねーとでも思ってんのか。お前が作ったモンの方が美味いんだからしゃーねぇだろ。そこら辺の惣菜屋で買った手抜き料理なんざ、俺の口には合わねーんだよ」
ウソだ。
はっきり言ってウソだ。
「手抜きって……」
結構高かったのにとブツブツ呟かれる文句は聞かないことにした。
氷帝の中では並前後という、別に特別裕福という家ではなかったが、標準からすればそれなりな家で育ったのである。
宍戸自身に自覚はなかったが。
菊丸が作った以外の料理がデリカテッセンの中でも上のランクのものであることはわかった。
それでも。
「ブツブツうるせぇってんだろ」
箸を持ってない左手で軽いデコピンをかます。
お前が作ったモン一番美味いってんだよ。黙って食え」
……ちょっと強調しすぎたか?
うわ、俺、激ダサだぜ。
宍戸は菊丸と目を合わさないように食事に夢中になってるフリをした。

どんな高級ホテルのものであっても、自分のために作られた料理に勝るものはないのだ。
もちろん、そこまでは口に出せない宍戸だった。


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あーあ、やっちゃった。
って感じですかね。宍菊楽しい……。