菊丸は海に似ていると思う。

海と言っても、はるか遠くまで浅瀬の続く南国の海のような。

同じ年とは思えないほど子供っぽくて……まあ、自分とその周りが年不相応なヤツラばかりな自覚はあるにせよ、それでもたまに中学生か?と首を傾げたくなるほど天真爛漫。
色鮮やかで、遊んで楽しい、でも安全この上ないヤツ。

そんな印象が拭えなかった。

でも、そんなわけがあるはずもなかったのだ。

たとえ、どう見えていようと中三は中三だし、海は海なのだ。

遠浅だと舐めてかかって足を踏み出せば、いきなり頭の上までハマり込む。
色んな色、色んな姿を見せてヒトを溺れさせるのだ。


「そぉや。もう溺れてしもとるもんなぁ……」
「忍足? なんか言った?」
勝手知ったる他人のベッドで雑誌をめくっていた菊丸が顔を上げた。
「いや。……なあ、夏んなったら海行こか」
自分がズルイのはわかっている。
自分が菊丸に惚れたのも溺れたのも、全部菊丸のせいにしようなんて。
「行く行く!」
屈託なく目を輝かせる菊丸は、こんな自分の気持ちなんて気がついていないだろう。
というか、気がつかないで欲しい。
「南の海がええなぁ」
「……そんな金、どこにあんだよ」
まあいいか、と忍足はひっそり笑った。
南まで行かなくても、いつでも鮮やかな遠浅の海はここにあるのだから。
「……変な忍足〜」
願わくば他のヤツラにはどこまで行っても浅瀬のみの海であって欲しいというズルイ男の勝手な望みは、幻の海の中に放り込むことにした。


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なんだか忍足さんがポエマーです。
……いや、ポエマーなのは私か(汗)