チャンチャ〜ラチャララチャ♪

どこからかいきなり音楽が聞こえて、菊丸はキョロキョロと辺りを見回した。
最近頻繁に聞くヒット曲。
あと少しで家に帰り着く道端。
辺りに人影はなし。
どこかの家の中から聞こえてるようでもない。
菊丸は首をかしげた。

音楽が途絶える。

歩き出そうとしたら、また同じ曲が流れ出した。
「……んんん?」
なんとなく気になって音の方角に見当をつけて歩き出す。
音はすぐそばにある児童公園からしているっぽい。

同じ曲の同じフレーズを繰り返し。
「携帯……かにゃあ?」
それにしては何度もかかってるなと思う。
持ち主は出るか、それとも出る気がないなら電源落としたりしないんだろうか?
いろんな疑問が頭の中を回りつつ、菊丸は公園入ってすぐのベンチで、持ち主もなくポツンと置かれた携帯電話を見つけた。
「あー、忘れたんだぁ」
そっかそっかと、とりあえず疑問のひとつは解決したものの、これをどうしたものやら。
「無用心だよにゃー」
携帯なんて落としたら、好き放題使われちゃうぞ。
そんなことを思っていると、また鳴りだした。
着信を見ると……。
『ジミハデ』
「なんだこれぇ」
とりあえず出てみることにした。
「もっしも〜し、忘れられた携帯電話で〜っす」
『もしもし、その携帯を忘れた人でーす』
なんか聞き覚えのある声。
「ねーねー、誰? なんか聞き覚えある声だよ?」
『千石くんだけど、君は誰?』
「えー、千石ぅ? 携帯忘れるなんて、おマヌケさんだなぁ。菊丸くんだよ〜ん」
『菊丸くんかぁ。携帯忘れたのは我ながら間抜けだったけど、知り合いに拾ってもらえるなて、やっぱ俺ってラッキー♪』
「どうかなー? ラッキーとは限らないかもよ? 目いっぱい使っちゃおっかな〜。ドイツの手塚にまでかけたりして」
『わー! タンマ、タンマ! それはカンベン!』
「にゃはは、冗談で〜っす」
『あ〜ビックリした。ねぇ、菊丸くん、悪いんだけどさ、それ今から取りに行くから待っててもらえないかな?』
「えー? 俺、腹へってんのにー……にゃーんて、いいよ。今どこ?」
『ええとね、青春台の駅からまっすぐ来て……うーん、角にコンビニがあるとこ』
「あ、近い近い。そこからだとね……」
簡単に道を説明しかけて。
「そっか、俺がそっち行った方がすぐじゃん。そのコンビニで待っててー」
そう言いながら、菊丸は歩き出した。
『そんな、悪いよ』
「いいって、すぐだし、俺のがこの辺の地理わかってんだし。そんかし、腹へってんのはホントだから、なんかおごって♪」
『おごるおごる! な〜んでもおごっちゃう』
「お、千石、太っ腹〜♪」
『そうなの、最近アタシ太っちゃって』
「そっちの太っ腹かよ!」
ぎゃははと笑う。
試合会場で会うくらいだったけど、試合会場で会ったときから、なんか乗りのいい面白いヤツだと思っていたけど、こうやって話してみるとやっぱり面白かった。
「そういえば『ジミハデ』ってなに?」
『あ、着信見られちゃったんだ? 南ってわかる? 地味'sの派手な方』
「……ぷっ、そういう意味かよー! 南の携帯からかけてんの?」
『そそ、鳴らしながら探せば、近くいけば聞こえるかなーって』
「そういえばあの曲いいね。もう着メロ出てんだ」
話題は尽きず、結局待ち合わせのコンビニにたどり着くまでずっと携帯で話し続けた。



おごってもらって、なんだか妙に気が合って今度の休みに一緒に遊びに行く約束までして。
菊丸は新しく楽しい友達ができたと嬉しくなった。

が。

菊丸は知らなかった。
千石が忘れた携帯を菊丸が見つけるなんて、偶然でもラッキーでもなんでもなく、ただの千石の綿密な調査と入念な計画によるものだということを。


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ごめんね、千石。