「あ、月」

ころりと横になった菊丸がつぶやいた。

今は昼休み。屋上。
寝転んだ菊丸の傍らには食べかけの弁当箱が放りだされている。
食べかけで寝る。
それがとても行儀の悪いことなのは菊丸も、一緒に昼食をとっている不二も知ってるけど、どちらもそのことについては何も言わなかった。

「ねー、不二ぃ」
「どうしたの?」
「月ってさ、太陽の光で光ってるように見えるんだよね?」
「うん。そうだね」
「じゃあ、なんで昼間の月って、太陽がそばにいるのにあんなに薄くぼんやりしてんだろーね」
「そうだね……」

不二はにこりと笑った。

「太陽がいないと月はがんばって照らすから、太陽がそばにいるときは安心して眠ってるんじゃないのかな」
「…………そっか」

菊丸は寝転がったまま両手を空に伸ばす。
そしてにっこりと笑った。
太陽と月に向かうように。

「っいしょっと」

はずみをつけて起き上がり、大きく伸びをした。

「英二」
「ん?」

顔を向けた菊丸の目の前に、自分のタッパーからさくらんぼをひとつ摘んで差し出す。
菊丸は当たり前のようにそれを食べ、種を口の中でもごもごさせながら、頬をふくらませて不二をにらんだ。

「不二って、ホントや〜なヤツ」
「そう?」

不二はいつものように穏やかな笑顔のまま、自分のさくらんぼを食べた。

「そーだよ」

菊丸はすました顔でさくらんぼの種を出す。

「言わなくても俺の気分わかっちゃうし、そんですぐ甘やかしてくれちゃうし」
「そりゃ、英二は僕らの大事なお日さまだからね」
「……俺、ちゃんとお日さまになれてる?」
「バカ英二。わかってるでしょ」
「……そかにゃ」

えへへ、とうれしそうに菊丸は笑った。

どんな時でも与えられる光(笑顔)がどんなにパワーをくれるか、どんなに嬉しいかを、身を持って知っているから。
勝った時は更なる高みを、負けた時でも次を目指そうという元気をくれる光(笑顔)。
たくさんたくさんもらったから、その元気を、嬉しさを分けてあげたいし、知ってほしい。

ほんの時たま、今日の月のように、太陽のそばでまどろみたい時もあるけど。
だけど、わかってくれてる友達がいるから大丈夫。

菊丸はペシンと両頬を叩いて気合を入れて、残りのお弁当を勢いよく食べだした。


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……あれ? なんか意味不明なものができちゃった。
変に説明すると、よけい意味不明になりそうなんで、色々想像してください。
たまにはカップリングじゃなくても……OK?