「ごめん……もう俺からは電話しない」
沈んだ声。
思わず取り落としそうになった携帯を持つ手が震えるほどの衝撃。

二人のつきあいは、ほぼ電話の付き合いだと言ってもよかった。
世間一般で言うところの遠距離恋愛とは比べ物にならないが、中学生の身には充分遠距離で、また互いに部活もあって、滅多に会えることはない。
その距離を埋めるのが電話だった。
他愛のない話も、甘い囁きも、ほんのたまにだけあるケンカも。
メールは苦手で、菊丸が送ってくるメールにも、ほんの一言二言のそっけない返事しかできず。
それに何よりも菊丸の声を、話を聞きたくて。
自分からかけることは滅多になかったが、それでも菊丸の電話を心待ちにしていたのだ。

どうしてかと訊ねる声が震えないように。
こんな時でさえ、そんなくだらないことを気にする自分が滑稽だった。
「……怒んない?」
怒れるわけはなかった。
菊丸がひどく愛しいと思っている反面、自分がそれを表現するのがひどく下手だという自覚はあったから。
静かに促すと菊丸はわずかな沈黙の後で言った。
「先月の通話料が二万超えたって怒られて、今月の小遣いもらえなかった」

今度こそ携帯を取り落とした。



「ごめんね、真田」
「お前が謝ることじゃないだろう」
「でも……あのね……」
「なんだ?」
「だけど俺、真田の声毎日聞きたいって言ったらワガママ?」
「……俺もだ」
「ホント!?」
「当たり前だろうが」
「……すっごい嬉しい。ホントは俺、電話かけすぎかなぁって思ってたんだ」
「馬鹿なことを言うな」
「バカなことじゃないよー。うるさいって思われてんじゃないかって、俺不安だったんだかんな」
「そんなことはない。……絶対だ」
「……うん」
「これからは俺からかける」
「……うん」
「あー……少しは……俺も話すようにする」
「……うん」
「……そ、それから……メールも打つようにする」
「……うん」
「………………」
「………………」
「……あとは……」
「……真田」
「ん?」
「……大好き」
「………………………………俺もだ」


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