| 俺より年下のクセに、クールで落ち着き払ってるヤツってどうよ。 そりゃ悪いとは言わないよ? もちろん。 そーいうトコがカッコいいって思ったのはホントだしさ。 でもでもでもっ! す〜っごい久々に会ったコイビトと二人でいるのに精神統一の修行始めるのってなんなワケ!? そんなに俺のコトはどーでもいいですか。あー、そーですか。 俺がムカつくのって、当然の権利だと思うんだけど。 なのに日吉ってばさ 「ひーよーしぃ」 「………………」 「日吉ってばー」 「………………」 「ぴーよぴーよひーよしー♪ ひーよっしくーん?」 「……菊丸さん」 「なになになにっ?」 「ちょっと黙っててくれませんか」 これだもんね! 俺ってばいったいなんなの?! 「そんなんよりさー、どうせ集中すんなら俺に集中しよーよー」 って言っても 「何を馬鹿なことを」 日吉は肩をすくめて軽く笑うだけ。 そりゃさ、最初に好きになって付き合おうって言ったのは俺だよ? でもOKしたわけじゃん。仮にも。 ……いや、仮じゃないけど! なんてゆーか、付き合ってる相手に対しての礼儀ってゆーか……あ、今のなし! 礼儀なんかで優しくされたって全然嬉しくないもんね。ってゆーかムカつく。 でも、もーちょっとくらいかまってくれてもバチはあたんないと思うんだけど。 いっつも一緒にいられるわけでもないしさ、たま〜に会えたと思っても、いいとこ半日でさ。(日吉は朝夕の武道の練習は欠かさないから、当たり前だけど朝早くからは会えないし、夕方遅くまでもムリなんだもん) 今日、俺がくんのはわかってたんだから、俺がいないときにすればいいじゃん。 じ〜〜〜って穴が開くほど見てても、日吉は微動だにしない。 「……もういいもんね。日吉なんか知んない」 部屋の隅に置いといたラケットバッグを担いで戸口に向かう。 「どこに行く気ですか」 「テニスしてくる! 日吉がそやってぼーっとしてる間に、いっぱい練習して、いっぱい強くなって日吉なんて足元にも及ばないくらいになってやる!」 べーっと舌を出した。 「そしたら日吉は下克上好きだから、俺のことだってムシできなくなんだもんね」 今だって日吉の方が強いわけじゃないけど。 日吉が下克上したくなるくらいには、ちょっと足りない。 ほんのちょっとだけ。 「無理ですね」 むっかー! 「あとで吠え面かいたって知んないかんなっ!」 足音も荒く菊丸さんが出て行った。 俺は精神統一する必要がなくなって、さてこれからどうしようかと思う。 菊丸さんが怒ったことも、怒った気持ちもわからないわけじゃない。 でも仕方ないじゃないか。 精神統一のひとつもして気持ちを落ち着けないと、あの人になにをするか自分でもわからないんだから。 大体あの人はなんにもわかってない。 あの人に集中なんて、しないわけがないんだし、あの人を無視なんて、それこそできるわけがない。 (俺がしていたのは精神統一であって、精神集中ではないけれど) 初めて見かけた時から、あの人は勝手に俺の目に飛び込んできて。 氷帝の対戦相手でもないのに目が離せなくなった。 上手いプレイヤーだからかとも思ったが、それが試合が終わった後もずっと記憶から薄れなくて、プレイもそうだけど、それ以外の表情や仕草まで克明に覚えている自分が変だと思った。 それから試合会場に行く度に菊丸さんを探している自分がいて、見つけると嬉しくなっている自分に気が付いて、俺は遺憾ながらも自分の気持ちを認めざるを得なくなった。 だが所詮他校生。しかも年上。 その上、相手はレギュラーで活躍しているのに、自分は応援でフェンスの外。その他大勢もいいところ。 接点なんて欠片もなかった。 せめて強くなれば目にとまるだろうかと。 それほど熱心ではなかったテニスに身を入れた原因の何割かはあの人だったのに。 (色んなスポーツをすることも武道のためだけだった) 時計を見て、俺は立ち上がった。 群がるトンビを追い散らして油揚げを持って帰るために。 |
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