「誕生日プレゼント?」
菊丸は首をかしげた。
「はい! 菊丸さんが今日お誕生日なのはバッチリ調査済みです!」
目の前の小さい彼はニコニコと笑いながら握りこぶしをグッと握って見せる。
「あー……そ、そー」
「見てください!」
ダダーン! という掛け声と共に現れたのは一冊のノート。
「山吹のレギュラーから補欠、選外にいたるまで全員の情報満載です!」
「……は?」
ライバル校の人間に、自分の学校のデータ?
「ま、マズイっしょ、それ……」
「問題ないです! 愛の前にはそんなこと小さい小さい! です」
いや、愛ないし。
「動物占いの結果から、お風呂でどこから洗うかまでバッチリです!」
いや、もうテニス全然関係ないし。しかも微妙にネタ古いね。
「初恋の相手だって、言えば必ず黙るネタだって、カンペキに網羅してあるです!」
……それはちょっと見たいかも。
「さあ、菊丸さん! 僕の愛を受け取ってくださ……」
ゴス!
鈍い音がした。
「……あ、地味ーズの片割れ」
「地味ーズ言うな」
壇は両手で頭を押さえて涙目。
鈍い音だけあって、とても実用的な拳骨だったらしい。
「うう……痛いです、先輩ひどいです〜」
壇の恨みがましい非難は完全に無視された。
「すまんな、菊丸。うちのが迷惑かけて」
「いや、迷惑っていうか、面白いっていうか」
「まったくうちのヤツラはどいつもこいつもそろってこんな調子で……」
「そんで南がいっつも尻拭い?」
「……ああ、まあな」
南は遠い目をしていた。
「たいへんなんだにゃ〜、……地味ーズって」
「いや、地味ーズ関係ないから」
絶妙の突っ込み。
「んじゃ、これ片付けてくるわ。じゃあな」
南はため息をつきながら、壇の襟首をひょいと持った。
「は、離してください〜! 僕と菊丸さんの愛の語らいが〜!」
じたばたじたばた。
だから愛はないって。
「菊丸さ〜ん! 次こそは必ず部長を振り切ってくるです! 待っててください!」
壇の叫びがフェードアウトしていった。
怒涛の嵐が過ぎ去り、しばらく二人が消えていった方を見ていた菊丸はぽつりと呟いた。
「……南って、部長だったんだ」


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