「菊丸」
帰り道の途中で菊丸は声をかけられた。
「あ、宍戸。どしたの? 約束は明日だよね?」
「そうだけどよ……」
宍戸はバツの悪そうな顔で頭をかいた。
「やっぱ当日に渡したくなったんだよ」
少し乱暴にポケットから小さな紙袋を出して菊丸に渡す。
それはラッピング何もされていない。
「……開けていい?」
嬉しそうに聞く菊丸に、宍戸は『ああ』とそっけなく返した。
中から出てきたのはラケットとボールを模した飾りのストラップ。
宍戸がしばらく前から携帯につけているものと同じものだ。
「お前、いいないいなってうるさかったろ」
「うるさいってひっどいにゃ〜。……でも嬉しい。ありがと」
えへへ、と嬉しそうに笑う菊丸に宍戸は照れくさそうにそっぽを向いた。
さっそく携帯につけようと取り出した菊丸だったが、少し考え込む。
「どうした?」
「な、これって俺のだよな?」
もらったばかりのストラップを宍戸に見せると、宍戸は不審そうな顔をしつつもそうだと頷いた。
「えとさ、じゃさ、宍戸の携帯貸して?」
更に不審そうな顔をしつつも携帯を取り出す宍戸。
菊丸はそれを手渡されると、素早く宍戸のストラップを外して、さっきもらった自分のストラップをつけた。
そして宍戸の携帯についていたストラップを自分の携帯に。
「はい」
戻された携帯のストラップを見てから、宍戸は少し赤くなりながら菊丸の髪をぐしゃぐしゃとかき回した。
「バーカ」
照れくさそうに、でも嬉しそうに宍戸が笑う。
菊丸も赤くなりながら片手で髪をかき回す宍戸の手を取り、片手で乱れた髪を撫でてなおす。
「バカは宍戸っしょ」
「なんだぁ?」
いつものケンカ勃発かと思いきや。
「一番大事なコト忘れてるじゃん」
宍戸は少し考えてから菊丸の耳に顔を寄せた。
「誕生日おめでとうな」
「へへ……ありがと!」
二人にもケンカをしない日もあるのである。


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