ぴくし〜のーと あどばんす

物語

【ぴくし〜のーと メイン】 【テーマいちらん】 【おともだちぶっく】 【みんなの感想】

連載[1184] パーフェクト・ストーン

レイチェル ★2008.09/13(土)15:58
プロローグ

よく晴れた朝だった。
ここは、森の奥のひっそりと建つ、巨大な屋敷だ。
壁には蔦が絡みつき、歴史を感じさせた。
そんな屋敷の、バルコニーの白いベンチに、1人の少女が座っていた。
紅い瞳に、同じく燃えるような長い赤髪をもっている。
その手には、新聞紙。
「ふあ〜ぁ」
欠伸をしながら、新聞を広げる。
「はしたないわ、アリス」
そんな少女を見て、その足元にいたキュウコンが口を開いた。
「わかってるわよ、ロロ」
それを聞き、少女ーアリスは唇をとがらせる。
「いちいちうるさいんだから…ん?」
新聞を眺めていたアリスの目がとまる。
「どうかしたの?」
「また、どこかの研究所が襲われたみたい…」
「最近物騒よねぇ」
最近、進化の石の数が減少してきている。
デパートにも置かれなくなり、オークションなどでわずかにでまわっているぐらいだ。
そのせいか、進化の石を研究している建物が襲われる事件が続いている。
「そういえば、ウチにもいくつかほのおの石があるんだよね?
 おじい様がまえに自慢してたようなー」
バァーン!!
急に屋敷の奥から爆発が響いた。
「きゃぁ!
 な、なに?」
アリスは立ち上がると、音のした方へ駆け込んだ。
「待って、アリス!」
その後をロロが追う。
屋敷のなかは、ひどい有様だった。
部屋は炎で赤く染められ、使用人達は悲鳴を上げている。
「くまなくさがせ!
 1人も逃がすな!!」
そのなかに、異様な人間がいた。
十数人の男女は、黒ずくめで、顔には仮面をつけている。
「…逃げるわよ、アリス!!」
「う、うん…」
ロロに促されるまま、アリスは駆け出した。
「レム!」
アリスが叫ぶと、腰のボールからウィンディが飛び出した。
その背に飛び乗ると、ロロをボールにしまった。
「おい!ガキが逃げるぞ!!」
追ってくる黒ずくめの男女をふりきると、アリスはそのまま窓からかけていった。
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レイチェル ☆2008.09/13(土)15:57
1章  嵐の森で

灰色の空に覆われた、暗い森の中を動く影があった。
「平気か?アリス」
先頭を歩くウィンディ、レムが振り返った。
「うん…」
呼ばれた少女は顔を上げ、青ざめた顔でうなずいた。
「しかし…なんだ、あの連中は?」
「石を狙っていた奴等、かしらね」
アリスの横を歩くロロが、つまらなさそうに言った。
2匹のそれぞれの首に、赤い首輪がつけられている。
「でも…とにかくゆるせない」
唇をつきだし、不満そうにアリスがつぶやく。
「あたしを誰だと思ってるの?
 代々受け継がれてきた、ディレン家の次期当主、アリス・ディレンよっ!
 石泥棒だか、仮面の軍団だか知らないけど、あたしの家を襲ったこと、後悔させてやる!」
一息にそう叫ぶと、こぶしを高く突き上げた。
ロロは溜息をつき、レムはおもしろそうにアリスを見つめている。
「当分は、退屈しないで済みそうだな」
「まったく…」
「ロロだって、お屋敷帰れないの嫌でしょ?」
「それは、そうだけど…」
「よし、決めた!
 あいつらの正体あばいて、警察につきつけてやるんだから!」
楽しそうに、そう宣言した。
「それはいいんだが、近くに人間がいるぞ?」
「う、うそ!?」
「奴等が追ってきたのかしら。
 今見つかると厄介ね…」
「いや、どうやら1人だし、ガキだぜ?」
「子供…?
 なんでこの森に…」
「奴等の仲間かもね。
 なら、見つかる前にこっちから仕掛けたほうがいいんじゃないかしら?」
ひくりと鼻を動かすと、ロロは歩き出す。
ロロについてしばらく進むと、木々の間にぽつんと少年が立っていた。
銀色の髪が、さらさらと風にゆれている。
「動くな!!」
レムが飛び出し、少年の前に立ちふさがると同時に叫んだ。
牙をむきだし、楽しげに目を光らせる。
少年はビクン、と体を震わせたが、おとなしく、その言葉にしたがう。
「キミ、誰?」
続いてでてきたアリスが声をかければ、少年は緑の瞳を見開いた。
「人がいる…
 この森に住んでるの?」
しかし、かえされたのはそんな、少しずれたもので。
「住んでるも何も、この森は、ディレン家のものよ。
 キミのような部外者が入れるようなところじゃ、ないの」
「へぇ…
 でもボク、なんでこの森にいるのか、自分でもわからないんだ」
「あなた、仮面の奴等の仲間?
 名前は?」
「わから…ない。
 なにも、思い出せないんだ」
「このコ、もしかして…記憶喪失?」
「かもね。
 それにしても…天気悪いわね」
雲が増え、ゴロゴロと不穏な音を立てている。
「早く森を出るべきだな。
 そいつ、どうするんだ?」
「このまま放っておけないよ。
 ねえキミ、あたしたちと一緒に来ない?」
「いいの?
 でも…知らない人でしょ?ボクなんかがいっても、いいの?」
「もちろん!」
「まぁ、マスターがそう言うならな」
「どうなってもしらないわよ」
ぽつり、と雨粒がおちてきた。
しだいに降る量は増え、あっという間に土砂降りになった。
「ああ、もう最悪!」
ロロはいらだたしげに尻尾を揺らす。
力も弱まり、汚れるし、耳も鼻もきかなくなる雨が、ロロは大嫌いだった。
「はやく、森をでるわよ」
そう言うなり、ロロは駆け出した。
「あ、待って!」
アリスも後を追う。
それにつづいて、少年が走り出そうとしたときだった。
「まちな」
レムが後ろから声をかける。
「何?」
「お前がついてくることに、オレはなにも言わない。あいつが決めたことだ。
 …だがな、お前があいつを裏切ったり、傷つけるなら、オレはお前を許さない。
 地の果てまで追いかけて、かみ殺してやるよ。
 覚えておけ」
それだけいうと、レムは2人を追いかけて走っていった。
少年はしばらく立ち尽くしていたが、やがて先に行った3人を追いかけ、森の中を走り出した。
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レイチェル ☆2008.09/20(土)14:32
2章  仮面の下の思惑

森の奥に聳え立つ屋敷は、仮面をつけた人間で埋め尽くされていた。
大広間には使用人が集められ、閉じ込められている。
雨が降り出した中、ポケモンをつれた仮面の男女が、屋敷の周りを見張っている。
そんな中、庭のなかでぽつんとたたずんでいる男がいた。
髪は茶色く、体は細身で、まだ若い。
その顔には、目だけがかくれる仮面をつけていた。
肩にピジョットをとまらせている。
「ディーン様、屋敷の中には入らないのですか?」
1人の女性が近づくと、そういった。
「いいや。
 しばらくここにいる」
ディーンとよばれた青年は、しかし首をふった。
「そうですか。
 ディレン家の一人娘、アリスが逃げたようです。
 どうなさいますか?」
「ほっとけよ。
 じーさんは捕まえたんだろ?小娘1人、なにができるわけでもないしな。
 親父の目的には、支障はないはずだ」
「かしこまりました」
そういうと、女は屋敷のほうへ歩いていった。
「相変わらず、甘いな、お前は」
「そういうなって、ウィリー」
ディーンは苦笑しながら、肩のピジョットを見上げる。
「それはいいとして、見つかったのか?アレは」
「ああ。これでまた、親父にどやされずにすむな」
「…本当にこれでいいのか?」
「これで親父が満足するなら、な」
サァーと降り続く雨が、彼を包む。
「おれは、パーフェクト・ストーンを探す。…それだけだ」
何かを振り切るように、ディーンは屋敷へと歩き出した。
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レイチェル ☆2008.10/06(月)11:06
3章  名も無き者 

降り続く雨が、激しく窓にたたきつける音が、狭い部屋に響く。
「やまないねー雨」
アリスがつぶやく。
ここは、森に程近い町、リトルートの宿屋。
「ねえ、キミさ」
ベットの上でぼんやりしている少年に話しかけると、ばっと驚いたように顔を上げた。
「うわっ…な、なに?」
「あのさ、ちょっと思ったんだけど、キミ、名前は?」
「え・・?」
「名前も忘れちゃった?
 ほら、なんて呼べばいいかわかんないし。
 覚えてないかな?」
「ディーン…」
「ん?」
「い、いや…おぼえてな」
「ディーンっていうのね!」
「へぇ…いい名前じゃない?」
ロロが言った。
ザァーという雨音が絶え間なく鳴り響く。
「もう寝ようか。
 オヤスミ、ロロ、レム、ディーン」


昨日の雨がうそのように上がり、空は抜けるように青い。
「晴れたねー!」
アリスは窓から身を乗り出した。
「で、どうしようか。
 あの仮面の奴等の情報を集めないとねっ!」
「それはいいが、どこにいくんだ?」
レムはむっくりとおきあがった。
「そうだね…
 やっぱ、誰かに聞くとかかな〜」
「そうと決まったら、いきましょうか?」
「うん」
そして4人は、宿を出た。
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レイチェル ☆2008.10/27(月)14:55
4章  赤く染まる町

町へでると、あわただしい空気が漂っていた。
「なにかあったのかな」
アリスはあたりを見渡す。
「焦げ臭いわね…」
ロロがフン、と鼻をならす。
「まさか…」
アリスの顔が青ざめる。
向こうの方から、煙があがっている。
「い、いってみよう」
ディーンの声で、4人は駆け出した。


あたりはもう一面火の海だった。
「そんな…」
アリスは呆然と立ち尽くす。
「おい、あそこ!」
レムが叫んだ。
その視線の先には、仮面をかぶった男たちが。
「仮面のっ!」
アリスは走って追いかける。
こちらに気づいた仮面の1人が、ボールを投げる。
ボン、という音とともに、現れたのはヘルガー。
「グルル…」
「いけっ、かみくだく!」
仮面の男が叫んだ。
「レム、しんそく!」
レムが駆け出す。
「こいつはまかせろっ!
 先に行け!」
「うん!」
2匹の脇を通り、再び追いかける。
「待てっ!」
前のほうで、男たちが車に乗るのが見えた。
町に火を放つポケモンたちも、ボールに戻っていく。
「まちなさいー!」
その声もむなしく、車は走り出す。
「あぁ…」
バチバチと火がはぜ、焦げたにおいが鼻につく。
あちこちで、火を消そうとしている。
「アリス」
「ディーン?」
「僕らも手伝おう。
 やつらを探すのは、そのあとだ」
「うん…」
燃え盛る炎は勢いをとめず、町を赤く照らしていた。
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レイチェル ☆2009.05/30(土)17:22
5章  水の貴族

リトルートは、あたりが薄暗くなっても、明るく輝いていた。炎でだ。
「ああもう!ちっとも消えない!」
バケツを手にしたアリスが、苛立たしげに叫ぶ。
「あたしとレムじゃあ、手伝えないしねぇ」
ロロがつぶやく。
そのときだった。
「ハイドロポンプ!」
男の声が聞こえたかとおもうと、アリスに思い切り水がかかった。
「きゃあ!」
「ああ、悪い。手元が狂っちまった」
町の外のほうから、ギャラドスがぬうっとあらわれた。
「あ、ああ、あんたは!!」
その上に座っている青年をみて、アリスは青ざめた。
「よう、ちびすけ。
 お前、とうとう放火なんてやっちまったのか?」
「ちがーう!!
 あんたがなんでここにいるのよ、リュウ!」
リュウと呼ばれた青年は、ひょいっとギャラドスから飛び降りると、アリスの頭をぐしゃっとなでた。
「消火の手伝いに来たっつーのに、つれないなぁ。」
「呼んでないっていうか私に水かけてどうすんのよ!
 ぜったいわざとでしょ、あれ」
「ああ、ばれた?」
「開き直るなー!!」
「アリス、もういいでしょう。
 実際いまはそいつの力が必要だし。
 というわけで、馬車馬のように働いてさっさとお帰りください。」
ニッコリ笑ってロロが言った。
「あいかわらず冷たいなーロロは。
 まあいいや。とっとと終わらせるぞー、シルバ、リンス」
ギャラドスとシャワーズがとびだすと、それぞれ水をはき始めた。
すると、すごい勢いで火が消え始めた。
「俺の実力は、こんなもんよ」
「あんたは何もしてないでしょうが。
 …まあいいや。とりあえず助かったわ」
「で、なんでこんなことになったわけ?」
「…仮面の奴らよ」
「あいつら、もうここまで来たのか!?」
「え。ってことは、まさかあんたのところも…」
「ああ。あいつらに、うちの‘みずの石’が盗られちまった」
「水の石?
 そういやうちにもほのおの石があったような…。
 あれってなんなの?」
「お、お前、そんなことも知らないのか?」
リュウは心底呆れたように溜息をついた。
「なによ」
「あれは、純粋な家系、俺らみたいな貴族の家につたわる、この世でただ一つの‘本物’だよ」
「本物?」
「ああ。あれは、進化の石の原石なんだ」
「そ、そんなにすごいものだったんだ…」
「あいつらは、それを集めてるみたいだな」
「そう、そうよ!
 あいつらを追わなきゃ!」
「火、消えたよ、リュウ!」
シャワーズのリンスが、リュウに飛びついた。
「おお、ごくろうさん」
「アリスちゃん、久し振りだね〜。
 まだそんな、暑苦しいコを連れてるのぉ?」
ロロを見て、小馬鹿にしたように笑う。
「あら、あんたたちなんて、しょせんサカナじゃない」
「リュウ〜、オバサンがいじめるぅ〜」
「な、誰がオバサンよ!」
「まあまあ」
「ロロも、相手にしないの。
 火も無事に消えたことだし、行こうか」
「どっかいくのか?」
「仮面のやつら捕まえに行くの」
「なっ…!
 そりゃ、無謀だろ!1人だろ?」
「大丈夫よ。ロロもレムもいるし、ディーンだって」
「ディーンって誰だ?」
「うーん、なんか、森の中であったコ。仲間よ」
「え、そいつ、大丈夫なのか?」
「へーきよ。
 じゃあ、もういくわね」
「え、ちょ、まてよ!」
アリスは話を聞かずにリュウをおいて走って行った。
「はあ…。相変わらずだなあ」
「これからどうするのぉ?」
「んー、まあ、俺らは俺らで仮面のをさがすか」
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レイチェル ☆2009.06/12(金)17:00
第6話  花と少女と占いと

リトルートを後にしたアリス達は、東へ続く道を歩いていた。
「ねぇ、アリス。
 そういえば、さっきの人はだれだったの?」
急に町をでると言ってアリスに連れて行かれたディーンは、首をかしげた。
「火も消えちゃったみたいだし。
 知り合いだったの?」
「た、ただの幼馴染よ。リュウっていうの。
 北のほうにあるアルフォード家の一人息子。親同士がつも仲良くて、よく遊んでたのよ。
 みずポケばっかり集めてる、へんなやつよ!」
「へ、変な奴って…」
「そうそう。
 そのせいでいっつもバトルに負けるのよねぇ…」
ロロが苛立った表情でつぶやく。
「それよ!
 ああもうムカつく〜!今度会ったらただじゃおかないから!」
アリスは頬を膨らませた。
「アリスはいっつもあいつに遊ばれてんだよ」
「レム!
 余計なこといわないでよ!」
「ははは…。
 あ、町が見えましたよ」
「え、ほんと?」
ディーンが指さした先には、確かに町が見えていた。
「グリースかぁ…ここに来るのも久しぶりだなぁ」
「来たことがあるの?」
「うん。友人もいるしね」
アリスはふふっとうれしそうに笑った。
「あいつらの情報あるかもしれないし、さっさといきましょう!」
そういうと、アリスは駆け出した。
「あ、まってよ!」
そのあとを、1人と2匹があわてて追いかけていった。


グリースは、緑があふれる町だ。
いたるところに木々がたち、花壇に色とりどりの花が咲き乱れている。くさポケモンも多くいる。
「ふふふ、今日もいい天気ね、ライン?」
そんな町の花壇の前にしゃがみこんでいる少女がいた。長い黒髪が揺れている。
「…そうね」
横にいたフシギソウがあきれながら言った。
「そのセリフはもう10回目よ。
 あと、いいかげん花壇の前から離れなさい」
「だって、こんなに奇麗に咲いているんですもの。ほら、ラインも見て」
「…はぁ」
彼女は、かれこれ1時間はそうしている。
「あっ!やっぱりここにいた!」
そのとき、うしろから急に声がした。
「あら、アリスちゃん?」
「会いたかったわ、ミリア!」
アリスはミリアに抱きついた。
「あらあら。どうしましたの?急に」
ミリアはおっとりと受け止めた。
「それに今日は知らない方のいらっしゃるのね」
「あ、うん。とにかく今まであったこと全部話すね」
「…その前に、屋敷に移動しない?」
「ああ、そうね、お客様をおもてなししなくちゃね」
ようやくミリアが立ち上がる。
「あ、またずっと花に夢中になって1時間くらいここにいたんでしょ!」
「…その通りね」
「い、1時間ですか…?」
ディーンが顔を引きつらせる。
「まあ、いつものことね。とりあえず屋敷にいきましょう」


ミリアの屋敷は、つたに覆われた、大きなものだった。
「…というわけなの」
リビングでアリスは今までのことを話した。
「ああ、リュウ君に会ったのね。元気だった?」
「いや、重要なのはそこでなくて。
 力を貸してほしいのよ。フォレスト家の力を」
「なんなの、それって?」
「ディーンは聞いたことない?…ああ、記憶ないんだったね。
 フォレスト家の人間は、占いの力があるの。かなり当たるのよ?」
「へぇ〜、すごいんだね」
「なにを占えばいいの?」
「仮面の奴らの場所よ」
「そうね、いいわよ。ライン、あれを」
「…ここにあるわ」
ラインが持ってきたのは、カギのかかった箱だった。
ミリアがカギを開ける。
中にあったのは、緑の石。うっすらと輝いている。
「これは…」
「ディーン君はみたことないのよね。
 これはね、フォレスト家の家宝のリーフの石の原石なの」
ミリアはゆっくりと意志をとりだすと、なにかをつぶやく。
石は輝きを増し、その光はミリアの全身をつつんだ。
カッとひときわ強く輝いたかと思うと、光は一瞬で消えた。
「ど、どうだった?」
「仮面のひとたちの基地は、シーランドっていう島にあるわ」
「ほんと!?
 ありがとうね、ミリア!」
「ええ。またあそびにきてね、アリスちゃん」
「うん。仮面の奴らのアジトつぶしてからね!」
アリスはガッツポーズをしてみせた。
「おい、アリス。
 仮面の奴らのにおいがするぞ!」
レムは急に立ち上がると、走り出した。
「うそっ!」
アリス達もあわててあとを追いかける。
「あらあら、大変ねぇ」
ミリアはほのぼのとした調子で言った。
「…私たちもいくわよ」
「そうね、この町に乱暴はさせないわ」
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レイチェル ☆2009.07/12(日)18:32
第7話  兄妹

街の中は、仮面をかぶった人間であふれかえっていた。
その中に、ひときわ目を引く豪奢な仮面をかぶった少女がいた。しかも、他の仮面の人間は黒ずくめなのに対し、その少女は白くフリルやレースで飾ったドレスを着ていた。
「この街はいいなぁ〜。花はきれいだし、空気はおいしいし!
 ここにミントちゃんの別荘建てようかなぁ〜☆」
「…ミント様、早く石を奪わないと…」
隣に佇んでいたサーナイトが、そっと声をかける。
「ああもう、ムーンはいちいちうるさいなぁ〜。わかってるよぅ」
ミントと呼ばれた少女は、口をとがらせる。
「へまなんてしないも〜ん。
 石を奪ったら、お父様ほめてくれるかなぁ〜☆」
へらっと笑ったあと、ミントの瞳に妖しげなな光が宿る。
「うふふ、みんなぁ、ここに住む人たち残さず捕まえてぇ。
 みぃんな人質にしたら、あの館のお嬢様はどうするのかなぁ?」
周りの仮面の人間にそう言うと、いたずらっぽく笑った。


「やっぱりいた!!」
館を飛び出たアリスたちは、一目散に街の中心へと向かった。
すでにあちこちに仮面の男女が立っている。しかも、ポケモンを放ち、街の人間やポケモンを捕まえているではないか。
「レム、ロロ、やっちゃいなさい!」
「おう」
「ふふん、あんな奴ら一瞬でやっつけてあげるわ」
レムとロロが同時にかえんほうしゃを放つ。
「うわぁ!」
目の前にいた仮面の男とグライガーが、おどろいて逃げて行った。
その後も、何人かの仮面の人たちを退けていく。
「ちょっと、誰よ〜。ミントちゃんの邪魔をしてるのは〜」
騒ぎを聞きつけたミントが、ムーンとともにアリス達のもとへ向かってきた。
「あの子も、仮面の仲間なのかな?」
「仮面してるし、そうなんじゃないのか?」
少女の格好を見て首をひねるアリスに、レムが答える。
「そう、よね。
 それにしても、なんか趣味悪い仮面ね」
「な、なによ!?
 もう、ミントちゃん怒った!ムーン、やっちゃって!」
「了解しました、ミント様」
ムーンはゆっくりと宙に浮かぶと、紫の波動をくりだす。
「きゃぁ!」
あたりそうになったアリスを、ディーンが横に突き飛ばす。
「大丈夫、アリス!?」
「う、うん。ありがとうディーン」
その様子を頬を膨らませながら眺めていたミントはさっと顔色をかえた。
「ウラン兄様!?
 ちょっと、ムーン!止めて!」
次の攻撃をしようとしていたムーンの動きが止まる。
「どうしましたか、ミント様」
「な、なんでウラン兄様がいるのぉ!?」
「ウラン様が?」
ミントの視線は、ディーンに注がれていた。
「え、何言ってるの?
 もしかして、ディーンのことを知ってるの?」
「ディーン!?
 なんでその名前を…。
 ウラン兄様、ミントだよぅ。なんでそんなちんちくりんな娘のとこにいるのぉ?」
「ち、ちんちくりんですって!?
 ちょっと、あなたにいわれたくないわ!
 …じゃなくて。ディーン、どういうこと?あの子は敵よね。
 あの子と知り合いなの?あなたも、敵、なの?」
隣を見ると、ディーンはうつむいたまま、押し黙っている。
「ちょっとぉ、兄様から離れなさいよぉ!」
ミントが不満そう言う。
「…ちっ」
小さく、舌打ちが響いた。
それがディーンから発せられたとアリスが気づくのには、少し時間がかかった。
「ディーン?」
「ミントさえ来なきゃうまくいってたのによぉ。台無しだぜ」
「な…、どういうことなのよ、ディーン!」
「あいにく、俺はそんな名前じゃない。俺様はウランだ」
今までのディーンがうそのように、ウランと名乗った少年は、豹変していた。
「ミント、俺には野望があるんでな、俺様は親父の手伝いなんかはしないぜ。
 それじゃあな」
あくまで偉そうにそれだけ言うと、アリスには一瞥もくれず、そのままボールを出した。中から出たオニドリルにつかまり、街から飛び立っていった。
「ディーン…」
茫然と、ウランの飛んで行った方を眺めるアリス。
「あの野郎!」
レムは唸り声をあげた。
「兄様、相変わらずだなぁ。
 まあいいや。あんたたちは利用されてただけみたいだし、やっつけてもいいよねぇ」
「あ、あなたたち、いったい何なのよ!」
「聞かれて答えるわけないでしょお〜?
 とりあえずぅ、死んじゃって☆」
「そこまでですよ」
不意に、アリス達の後ろから声がした。
「ミリア!」
「やっとでてきたぁ、お嬢様☆」
ミントがにっこりと笑う。
「言っとくけど、街の人たちはほとんど捕えちゃったからねぇ☆」
「はい、皆さんに乱暴はしないと約束してくださるなら、これを」
ミリアがさしだした手のうえには、鍵のかかった小さな箱。
「それはっ!」
アリスの顔が青ざめる。
「なーんだ、もう持ってきちゃったのぉ?つまんないなぁ。
 いいよ、原石が手に入れば、ミントのお仕事終わりだし。引き上げてあげる」
ミリアから箱を受け取ると、ミントは仮面の軍団に引き上げるよう指示をだした。
「か〜えろっと。
 あ、そうそう。ウラン兄様は自分のことしか考えない人だから、期待しない方がいいよぉ。
 あんたたちのこと、仲間だなんて思ってないだろうしねぇ☆」
意地悪に微笑むと、ムーンとともにさっと消えてしまった。
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レイチェル ☆2010.01/05(火)14:52
第8章  出港

アリスはただ、抜け殻のように茫然と立ち尽くしていた。
「アリス…」
ロロが心配そうにのぞきこむ。
「…あいつは、あたしたちを利用しようとしてたの?」
そう、誰にいうでもなくつぶやく。
「そうみたいね…」
うつむいたアリスの肩がふるえる。
「アリスちゃん…」
ミリアも心配そうに声をかける。
と、アリスがいきなり顔をあげた。かと思うと大声を張り上げた。
「ゆるせない!!
 あのウランとかいうやつも、あの仮面の女の子も、仮面の奴らもみんなゆるせない!」
「あ、アリス?」
「そうよ!
 どうせみんな仮面の奴らの仲間なんでしょ!? だったらあた しがあいつらの本陣に乗り込んで、あいつらから石を奪い返し てやるわ!!」
ロロが唖然とした顔で、口をポカンと開けた。
「いいんじゃねぇの? アリスらしいじゃねぇか」
レムがなんでもないことのようにいった。
「ちょっと…」
ロロが呆れたようにため息をついた。
「まぁ、いいわ。どうせそう言うとは思ってたし。
 さっさと行きましょ」
「そうこなくっちゃ!」
アリスはガッツポーズをとると、走り出した。


「…もう行っちゃうの? さみしくなるわねぇ」
「うん… ごめん、ミリア。全部終わったらまた来るわ」
町の入口で、そう言葉を交わす。
アリスは荷物を抱え、少しさみしそうな顔のミリアの手を握る。
「じゃあ、いろいろありがとね、ミリア」
最後に大きく手を振ると、アリスはレムに飛び乗った。
「レム、ロロ!
 シーランドまで全速力で!!」
2匹の獣が、勢いよく駈け出して行った。


「で、どうやって行くわけ?」
しばらく走ると、ロロがたずねた。
「う〜ん、あたしも詳しいことは知らないんだけど、もうすぐ港につくはずよ。
 そこから船ね」
「ってことは、海!?
 いやね、そんなところを渡るなんて…」
ロロは露骨に嫌そうな顔をする。
「そんなこと言わないでよ。
 あそこは島なんだから、ほかに道が無いのよ」
「それにしてもねぇ…」
それでもロロは不満顔だ。
「レムだっていやでしょ?」
「いや…
 水なんかこわくないしな」
「なに強がってるのよ。
 リュウが来た時、いっつも隠れているくせに」
ロロが呆れていう。
「そんなことはねぇ!!」
レムがかみつくように言うが、ロロは気にも留めない。
「あら、見えてきたわよ?」
「あ、ほんとだ。
 あそこから船に乗るのね」
船、という単語を聞き、また2匹は嫌そうな顔になった。


「すみません、シーランドに行きたいんですけど…」
港に着いたアリスたちは、さっそく近くにいた船乗りに話しかける。
「シーランド?
 あそこは島ごと私有地だから、ここから船は出てないよ?」
「えぇ!?」
「前まではただの観光地で、船も出てたんだけどね。
 どっかの金持が買い取ったみたいだよ」
「あいつら…」
「じゃあ、どうすればいけるわけ?」
ロロが聞く。
海が近いせいか、少し弱弱しい声だ。
「そうだなぁ、なみのりができるポケモンがいればいいが、あん たらはなぁ…」
ロロとレムをみて、首を振る。
「そんなぁ…」
アリスは肩をおとす。
「おっ、アリスじゃん」
ふいに声がした。
「えっ?
 …ってあんたはリュウ!!」
後ろから、シャワーズのリンスを連れたリュウが近づいてきた。
「げっ…」
ロロが顔をしかめる。
「なんであんたがこんなとこに…」
「いいじゃねぇか。
 それより、ここにいるってことはシーランドに行くんだろ?」
「…そのつもりだけど。
 あっ、あんた、乗せて行きなさいよ!!」
「いいけどさ。
 ようやくちびすけも、水ポケのありがたさがわかったか?」
にやにやしながやリュウは言う。
「うぐっ…
 こ、今回だけよ!! それに炎ポケの方がすごいんだから!」
「アリスちゃんも頑固ねぇ。
 あんなおばさんよりもアタシの方が可愛いと思わない?」
「大人の魅力がわかってないのね。
 あんたなんかただの魚でしょ? 陸で生活できないくせに!」
「なによ、こんな海も渡れないくせに。アタシが連れてってあげようか?」
「結構よ!!」
キャンキャンと口げんかをやめない2匹に、2人は苦笑する。
「そのくらいにしとけよ」
「いい加減やめなさい」
しぶしぶ2匹は口を閉じる。
「それじゃ、行きますか!」
リュウが勢いよくボールを海に向かって投げる。
ボン、という音とともに、ギャラドスが現れる。
「じゃあシルバ、頼むぞ」
リュウはひらりとまたがり、リンスは海に飛び込んだ。
「ロロ、レム、ボールに戻って」
ポンッ、と2匹がボールに吸い込まれる。
「じゃあ、よろしくね、シルバ」
アリスもシルバの背中に飛び乗る。
「ちょっと、俺には?」
「あんたは何もしてないでしょうが」
「ちょ、ひどくない? 一応こいつらの主人は俺なのに…」
リュウのぼやきも聞かず、シルバは滑るように海の上を走りだした。
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レイチェル ☆2010.01/24(日)11:37
第9章  潮の香りと砂浜

「ねぇ、あれじゃない?」
海を渡るギャラドスの背中から乗り出して、アリスは前方を指した。
その指の先には、小さく島が見え始めている。
「おぉ、あれだな!
 よーし、シルバ、もっとスピードあげろ!」
その声に応じて、ぐん、と速くなった。
「ひゃあぁ!」
アリスは落ちそうになり、慌てて顔を引っ込めた。
「あっはは、興奮して島に着く前に海に落っこちんなよ」
リュウが腹を抱えて笑う。
「ちょっと、そんなに笑うなぁ!」
アリスは頬を膨らましてリュウを睨む。
「あっはは、悪い悪い」
リュウは悪びれた風もなく、軽く流す。
「もう!」
そんなことを言ってる間に、島はすぐそばまで近づいていた。
島は小さいが、その中央にそびえたつ真っ白な要塞のようなものが異色を放っていた。
「ねぇ、見張りがいるんじゃないの?」
リンスが下から声をかけた。
「そうだなぁ…」
リュウが身を乗り出し、前方に目を凝らす。
「…居ないみたいだ」
シルバが低い声で呟くように言った。
「そうなの? 結構不用心なのね」
アリスが呆れたように言う。
「金持ちの考えることはわかんねぇなあ」
リュウはそう言うと、目の前に近づいてきている砂浜を指した。
「あそこに乗り上げるか」
「…あぁ」
シルバはゆっくりと浜に乗り上げると、背中の2人を下ろした。
「な〜んか殺風景なところね。あの建物しかないみたい」
アリスはぐうっと背伸びした。
「ほんとだねぇ。でも、行きさきが分かっていいじゃない?」
リンスも浜に上がると、楽しそうに言った。
「じゃあ行きますか!」
アリスはボールを投げ、ロロとレムを出した。
「ふぅ、やっぱりボールは窮屈ね」
「あぁ、同感だ」
2匹は大きく伸びをした。
「ずっとボールにいてもよかったのにね」
リンスが挑発する。
「なんですって? あんたなんかもう出番ないのよ。さっさと引っ込みなさい!」
ロロはキッと睨みつける。
「まあまあ」
リュウが慌てて間に入る。
「ほら、さっさと行きましょ!」
アリスがレムに飛び乗り、走り出す。ロロも後に続く。
「あ、ちょっと待てよ!」
リュウが慌ててシルバをボールに戻し、走る。しかし、レムはあっという間に距離をあけて行ってしまった。
「もう、アリスちゃんは相変わらずせっかちね〜」
リンスが横を走りながら、ぼやいた。
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レイチェル ☆2010.02/08(月)22:38
第10章  白の砦の地の底で

「ここから入れるのかな?」
白い建物の入口で、アリスが仁王立ちで見上げる。大きく、重そうな扉が目の前にある。
「これ、どうやって開けるのよ」
ロロが扉を眺める。
「こんなもん、オレのかえんほうしゃで吹っ飛ばしてやるよ」
レムが牙をのぞかせながらニヤリとした。
「なら、あたしもやるわ!」
ロロとレムは視線を交わすと、思い切り炎を口から吐き出した。
ドォン!!
重く、腹に響く音があたりを包む。
「やった!」
アリスが飛び跳ねる。
ゆっくりと、白い扉が開いていった。


「あーあ、派手にやってんなぁ」
その少し後ろにいたリュウが、呆れたようにため息をつく。
「そうねぇ、あんなにやったらすぐ見つかっちゃうよぉ〜
 まったく、あのコたちは単細胞なんだから」
リンスが隣で馬鹿にしたように言う。
「ねぇ、リュウ〜、見つかったらあたしたちだけで逃げようよぉ」
「そんなわけにはいかないだろ」
リュウが苦笑する。


「さぁ、とっとと乗り込むわよ!」
アリスはレムに飛び乗ると、まっすぐ続く白い道へと走り出した。ロロも走り出す。
そして、数百メートル進んだその時。

バキッ。

嫌な音とともに襲いかかる浮遊感。
「へっ?」
「ちょっ、いやぁ―――!!」
足元の地面が崩れだしたかと思うと、1人と2匹はあっという間に下に開いた穴に吸い込まれていった。


「おい、あれ!」
「ちょっと…なに、これ?」
その音に驚き、リュウとリンスが目を見張る。
その目の前で、少女とポケモンたちが落ちていく。
「これって…あれだよな?」
「うん…、まさかとは思うけどぉ、落とし穴ってやつ?」
「はぁ…」
リュウは頭を抱えた。
「うわぁ、ほんっとにバカだなぁ…」
リンスがしみじみ言う。
「どうしよっか」
「う〜ん、とりあえずアタシたちは先に進も?」
「…はぁ」
ひとつため息をつくと、リュウは歩きだす。
「しょうがない、さっさと終わらせるか」


「おい、なんか音しなかったか?」
「まさか、こんなところに誰が来るっていうんだ」
白い建物の中の白い廊下の途中。これまた白い白衣を着た若い男が2人、立ち止まって会話を交わしていた。
「でも、確かになんかが壊れる音がしたような…」
「何の話してるのぉ〜?」
廊下の向こうからミントが現れた。室内だというのに、仮面は付けたままだった。
「あ、ミントさん!?」
「い、いえ、別に大したことでは…」
「教えてくれないのぉ〜?」
ミントは頬をふくらませ、不満そうだ。
「あ、え〜っと…」
「実は、こいつがなにかが壊れるような音を聞いたっていうんですよ」
「壊れる音…?」
ミントの目がキラリと光る。
「あ、でも、聞き間違いかも…」
「いいの。
 暇だったし、ちょっと見てこよぉかなぁ〜☆」
白衣の男の言葉をさえぎると、ミントは身を翻し、さっさと行ってしまった。


「はぁ…。
 どうやってここから出ようかな…」
アリスは上を見上げながら言った。高さは5メートルくらいありそうだ。
「いったぁ…。
 もう、こんなところに落とし穴なんて、どういう神経してんのよ!」
「あっはははは!!」
不意に、上の方から甲高い笑い声が響いた。
「なっ! あんたは!?」
「きゃははははは、あ〜、本物のバカだぁ☆」
見ると、穴の淵から仮面の少女がお腹を抱えて笑い転げていた。
「ちょ、そんなに笑うんじゃないわよ!」
「だ、だって、あはは、ホントにこんなのに引っかかるのが居るなんてぇ…」
笑いすぎて苦しそうだ。
「ううぅ、そんなに笑うんじゃなーい!!」
上を見上げ、必死に叫ぶ。
「あっはは、あ〜笑った。
 っていうか、なんでこんなとこにまで来るかなぁ。しつこいコは嫌いだよぉ?」
そう言って、ミントはおもむろにボールを取りだすと、穴に投げ入れた。
「ムーン、やっちゃってぇ☆」
「はい、ミント様」
ボールから飛び出したサーナイトは、穴の底、5メートルくらいの高さで浮いたままサイコキネシスを繰り出す。
「ちょ、こんな狭いとこでっ!
 レム、ロロ、かえんほうしゃ!!」
すぐさま2匹はムーンに向かって炎を吐く。
「くっ…」
ムーンはひるむ。
「ちょっとぉ、なにしてんのよぉ!
 さいみんじゅつよ! はやくしなさぁい!」
ミントは不満そうにムーンを叱る。
「はっ、すいません」
ムーンは表情を変えずにさいみんじゅつをかける。
レムは素早くよけたが、ロロに直撃した
「うぅ…」
ロロが倒れそうになり、よろける。
「ロロ!!
 くっ、こんな狭い所じゃ不利だわ…」
アリスの頬に汗が流れる。
目の前には、少し高い所に浮遊しているムーンが狙いを定めている。
「あっ、そうだ! ロロ、レム、戻って!」
不意にボールに戻すと、アリスは駈け出した。
「何をする気〜?」
ミントは不審そうにアリスの行動を眺める。
「ちょっとごめんよ!」
アリスはそのままムーンに突進すると、その胴にあたりにとびついた。
「あぁ、何をするんですか!?」
それまで無表情だったムーンは、初めて狼狽をあらわにした。
「ちょっと、なにしてんのぉ!?」
ミントも叫ぶ。
「さっさと振り払いなさいよぉ!」
「は、はい…」
「絶対離さないから!」
ムーンはしばらく飛び回り、振り払おうとしたが、アリスはがっちりつかんで離さない。
「うっ…」
ムーンは体制を崩し、立ちなおそうとしてそのまま高度をあげ、穴から出た。
「よっし!」
ムーンの体を離すと、アリスは穴の外に降り立った。
「あぁ!?
 バカのくせに、ムーンを使って穴から出るなんて!!」
ミントが頬を膨らませる。
「ふん、あたしにかかればこんなもんよ!
 ロロ、レム、出番よ!」
「おう!」
「やっと出れたのね」
ロロは体を伸ばすと、ムーンに向き直る。
「よくもやってくれたわね。あたしはね、こんな海だらけのところに来て、しかもリンスの奴にバカにされて、さらには落とし穴…
 機嫌が悪いのよ!」
完全なるやつあたりだが、気にせずロロはムーンに牙をむく。
「ロロ、ほのおのうずよ!」
アリスの声に反応し、ロロが吐き出した炎はムーンの体を包みこむ。
「ちょっとぉ、何すんのよ! 抜け出しなさいよ!!」
ミントは腕をめちゃくちゃに振り回し、ジタバタした。
「は、はい…」
ムーンは身をよじり、炎から逃れようとするが、動けば動くほどに炎はムーンを締め付ける。
「さあ、勝負はついたようね」
アリスが勝ち誇ったように言った。
「ま、まだだもん! ムーン、そんな炎なんて振り払いなさい!」
そんな声に、ムーンはなおも炎の中でもがく。しかし、その表情は歪み、苦しそうだ。
「ちょ、もう勝負はついたでしょ!?
 あんたのポケモン、苦しそうじゃない!」
「関係ないでしょお! このコはミントちゃんのモノだし、どうなろうがミントの勝手でしょ!」
「てめぇ、ポケモンを何だと思ってやがるんだ!!」
レムが牙をむき出し、今にも襲いかかりそうだ。
「やめて、レム」
アリスはレムを手で制すと、ミントの方へ早足で近づく。ぱしん、と乾いた音がした。
「なっ…」
呆然とした表情でつぶやいたミントの頬が、赤くはれていた。
「バカじゃないの!?
 あんたが今、そこに立っていられるのは、あのコのおかげじゃないの? あんたが受けるはずの攻撃を、体張って守ってくれてるのは、あのコなんじゃないの!?
 あんたはそれを当たり前だと思ってるかもしれないけど、あのコの痛みをわかってるの!? どんなに苦しくても、あんたの命令を守ってるあのコを道具みたいに扱って…
 ポケモンだって、あたしたちと同じ、生き物なんだよ!!」
頬に手を当てて、目を見開いているミントに向かって、アリスは言葉をぶつける。
やがて、ミントはゆっくりと口を開いた。
「…あんたには、わかんないよ」
「えっ?」
「‘オリジナル’のあんたたちには、‘レプリカ’の気持ちが分かるはずない!!」
気持ちを吐き出すように、声を張り上げる。
ドサッという重い音がした。
見ると、ムーンが炎からようやく解放され、地面に倒れていた。
「戻りなさい、ムーン」
ムーンをボールに戻すと、ミントはアリスたちに背を向けた。
「今日のところは、これで勘弁してあげる。でもね、ミントはあんたたちを許さないから」
それだけ言うと、ミントは建物の中に消えていった。
その背中を、見えなくなるまでアリスは呆然と眺めていた。
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レイチェル ☆2010.03/09(火)14:28
第11章  要塞の秘密

人気のない真っ白な廊下を、リュウとリンスは歩いていた。
「ここ、何のための建物なんだろうな」
リュウが高い天井を見上げながらつぶやく。人がいないせいか、よく響いた。
「う〜ん、わかんないなぁ。やっぱ、あたしたちの家を襲ったのに関係するんだろうケド…」
リンスは顔をしかめる。
「これだけ広いのに、人が見当たらないね」
確かに、長い廊下の左右には扉は見当たらず、ひっそりとしていた。
「というか、扉も階段もないな…」
もう大分歩いたはずなのだが、時折角を曲がる程度で、あとはただまっすぐ道が延びている。
「…あれ?」
「なっ…」
リンスは首をかしげ、リュウは絶句した。
目の前にあるのは、自分たちが先ほど入ってきたはずの入口だった。
「なんだこれ…。オレたちは、一周してきたのか?」
「…そう、みたいだね。ってことは、この建物の真ん中に何かあるんじゃない?」
四角い建物は、入ってすぐの外周にそって廊下があるのだが、それならば建物の中心部分に何かがあるはずだ。リュウもうなずく。
「ってことは、この壁を壊せばいいのか?」
白く、ひとつのひびも無い壁を触る。ずいぶんと堅そうだ。
「よっし、リンス、れいとうビームだ!!」
「うん、いっくよぉ!!」
すうっと息を吸うと、リンスは壁にれいとうビームを発射した。
ビキビキと音を立てながら壁が凍りつく。
「ハイドロポンプ!!」
続いて放たれたハイドロポンプに、壁はドゴン、と音を立てて崩れていった。
「リュウ、あれ…」
技を放ち、壁の奥を覗いたリンスが、リュウを呼んだ。リュウものぞきこむ。
「こんなところにあったのか」
壁の奥にあったのは、地下へと続く階段だった。
「よっし、行くか!」
リュウとリンスは、がれきを飛び越え階段を勢いよく駆け下りていった。
いや、正確には駆け下りていこうとした。しかし、すぐに足を止める。背後から、聞き覚えのある声がしたからだ。
「ちょっと待ちなさい、あんたたち!!」
走って追いかけてきたのは、アリスたちだった。
「おお!無事だったか」
「あれぇ、生きてたんだぁ。ザンネ〜ン」
リンスはロロを見て、露骨に顔をしかめた。
「うるさいっ!私だってあんたの顔なんか見たくなかったわよ!!」
ロロは歯をむき出し、吠えるように言う。
「無事だったか、じゃない!置いてくなんて酷いじゃない!」
アリスもリュウに噛みつかんばかりに詰め寄る。
「いやぁ、なんか落ちた後も、元気そうだったし」
しかしリュウは平然とそう言う。
「くぅ〜!!
 いいわ!後はあたしたちがあいつらをやっつけるんだから、邪魔しないでよね!」
アリスはふんっとそっぽをむくと、ロロとレムを引き連れさっさと階段を下りて行った。
「ここまで来てそれはないだろ」
リュウも苦笑しながら、後に続いていった。


「なに、ここ…」
階段を降り、つきあたりにある扉を開けた瞬間、アリスは絶句した。
「これは酷いな…」
リュウもあたりを見まわし、眉をひそめる。
扉の向こうにあったのは、長い廊下だった。しかし、その壁にはびっしりと筒状の巨大な容器が置かれていた。その中には緑色の液体が満たされており、その液に浸かっていたのはさまざまなポケモンたちだった。
「なんで、こんなこと…」
「リンス、ハイドロポンプだ!」
「うんっ!」
どんっという重い音が壁に反射して響いた。
しかし、容器にはヒビひとつ入っておらず、周りが水浸しになっただけだった。
「なによこれ!あたしのハイドロポンプが効かないなんて…」
リンスが悔しそうにつぶやく。
「これだけ水浸しになったら、炎タイプの技が使えないし…」
靴の底を濡らす水たまりをみながら、アリスも言う。
「ようは、あいつらを倒せばいいんでしょう?」
ロロがこともなげに言った。
「…そうね。やったことを後悔するまでめっためたにしてやるんだから!」
こぶしを振り回し、アリスが叫ぶ。
「そうね。オバサンも、たまにはいいこと言うじゃない」
「少なくとも、あんたよりは役に立つわよっ」
「こらこら。とにかく、さっさと奥にいこうぜ」
リュウがなだめ、2人と2匹は廊下を奥へと進んでいった。
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レイチェル ☆2010.03/16(火)14:48
第12章  本物と偽物と

ドォン!という音とともに、扉が破られた。
机の前のコンピュータに目を向けていた男が、ゆっくりと顔をあげた。その顔には、ミントのように、豪奢な細工の施された仮面をつけている。
「あなた、この建物の責任者は?さっさと言ったほうが身のためよ」
勝気な目をした少女は、入ってくるなり横暴な口調で言った。
しかし男はあからさまに嫌そうに口を曲げたかと思うと、ため息をついてまたコンピュータに向かった。
「ちょっと!」
「あたしたちを無視するなんて、いい度胸じゃない」
リンスは今にもとびかかろうとしている。
「リンスはちょっと落ち着け。アリスもな。だが、本当に無視しててもいいことはないと思うぜ?その仮面前を見たところ、幹部かなんかか?」
少年が前に出、言った。こちらも落ち着いているように見えるが、殺気立っていることはわかる。
男は再び大きくため息をつくと、億劫そうに立ち上がった。茶色い髪をガシガシとかく。
「さあ、ここの責任者は誰だ?なぜこんなふざけたことをしたんだ」
リュウは男を睨んだ。
男はリュウを正面から見、観察するように上から下までジロジロ眺めた。
「帰れ」
ようやく発した言葉は、そんなものだった。
「なっ!」
「そんなことを言われて、いまさら帰れるわけないだろう!」
レオが牙をむいたかと思うと、男に襲いかかった。
「…ウィリー」
男が億劫そうにそう言うと、ボンッという音とともにピジョットが現れ、あっという間にレオを押し倒した。
「レオ!」
アリスが駆け寄ろうとするが、ウィリーが鋭いくちばしをむけ、威嚇してきた。
「もう一度だけ言う。帰れ。ここはお前らみたいなガキの来るとこじゃないんだ」
けだるそうだが、明らかにいら立ちを含んだ口調だ。
その言葉にアリスは眉をつりあがらせた。
「ガキじゃないわ!あたしはディレン家の次期当主、アリス・ディレンよっ!」
腰に手を当て、堂々と言い切った。リュウは後ろで、頭を抱えていた。
「…!」
男は息をのみ、動きを止めた。
「どう、驚いた?
 あたしたち貴族を敵に回すとどうなるか思い知らせてやるわ!」
「…貴族、か」
男がひとり言のようにつぶやく。
「何、ようやく話す気になった?
 なんでこんなことをしたのか」
「…ああ、いいだろう。ただし、お前らのしでかしたことをな」
「何?」
「ウィリー」
いぶかしがるリュウを無視し、男はウィリーを肩にとまらせた。そのあと、ゆっくりとした動作で仮面を外した。
「えぇ!?」
その下の顔を見て、アリスは声をあげた。その顔は、髪の色や瞳の色をのぞけば、リュウにそっくりだったからだ。
「俺の名はディーンだ。まったく、忌々しい顔だよな」
ディーンはリュウを悪意のこもった目で睨みつける。
「…な、お、オレの顔!?」
「あなたが、本物のディーンなのね…」
「あぁ、弟が勝手に俺の名前を使ってたらしいな」
たいして興味もなさそうにそう言うと、ディーンは椅子にすわり、2人を見た。
「さぁ、楽しい楽しい昔話をしようじゃないか」
ディーンは口を曲げたが、その目は冷たく、笑ってなどいなかった。
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レイチェル ☆2010.03/24(水)15:45
第13章  独白

これは、本当に昔。お前たちのご先祖様の話だ。
貴族、といってもその時には無かったが、の先祖は1人の男だといわれている。研究者だったらしいな。今の地位を築けたのは、なんといってもあの石のおかげだろう。
その男の子孫が増え、各地に散らばり、貴族と呼ばれるようになった。そいつらは各家庭に石を持っている。あの石は、お前らが思っているようなものじゃない。どうせ、ただの宝石かなんかのように思ってたんだろ?
…その顔は、図星だな。
はは、別にそれでもいいさ。だがな、これだけは覚えておけ。あの石は、多くの犠牲のもとにできたものさ。

進化の石は、もうすでに自然にとれるものはほとんどない。知ってるだろ?最近盗みも頻繁に起こっている。
それは、人間が好き勝手にポケモンをつかまえ、簡単に進化できるということで石を使うようになったからだ。
今では旅に出るトレーナーも少なくなったからな。商売としても成り立つのだろう。進化の石が発掘され、もうとれる場所はほとんど残ってないんじゃないか?
それを見越してかは知らないが、男が作ったものは無くならない石だ。
石は、ふつう消耗品だろ?だから足りなくなったわけだが。
しかし、あの石は無くならない。何度でも使えるんだ。
初めはその石を、自分のポケモンに使ってただけらしいが、じきに味をしめたのだろう。金儲けにはしった。
金持相手に、さんざん儲けたらしいな。
しかし、それは長くは続かなかった。
男は死んでしまったのさ。あっけないものだな。
しかし、そのあとが問題だった。
男の家はそこそこ名のある家で、親戚縁者は腐るほどいた。その石をめぐって、かなりもめたらしいな。
だが、男は遺書を残していた。
自分が死ぬまでに作った、ほのお・みず・リーフ・かみなり・つき・たいよう・ひかり・やみ・めざめの石を自分の9人の子供たちにあたえる、とな。
男は愛人も多くいてな、子供も各地にいた。そのころには金持になってたから、金には困らなかったんだろうな。
親戚どもは、何とかしておこぼれにあずかろうとしてたからショックだったろう。
だが、遺書をつがえせるわけもなく、石は各地に住んでいた子供たちの手に渡った。
問題はここからだ。
子供たちは、自分の石を何とか守ろうとした。そして今の地位を確立させた。金や、自分たちのコネを使ってな。
そうして貴族になり、それぞれ地位を確固たるものにしていった。
特に大きくなったのは、男の正妻の子だった、ほのおとみず、リーフの石をもらった家だったな。
その3家は他の事業でも成功し、石に頼らなくてもよくなったからな。
あぁ、お前らの家か。
しかし、石を手放すわけにはいかなかった。まぁ、うまくつかえば金の卵だもんな。
お前らのひいひいじいさんばあさんくらいか。そいつらは思いついた。石を守る存在を作ればいいのだ、とな。
そうして生まれたのが…俺たちだ。
お前たちの家系に、けっして2人目以降の子供が生まれないのを知っているか?
そう、生まれる子供はいつも一人っ子…ということにされてきたのさ。俺たちの存在を無かったことにしてな。
俺たちは常にお前らの周りに気を配り、時にはスパイじみた事までやったさ。石を盗もうとした奴をつかまえ、主犯を割り出し、しぼりあげて犯行を認めさせたりな。盗もうとしたむくいとかだって、かなりあくどいこともやらされたさ。
お前らの親はな、自分の子供を石を守る道具として扱ってたんだよ!!
特殊な訓練をガキの頃から叩き込まれ、お前らに気づかれないように影のように生活してたんだ。
だからな、これは復讐だよ。
俺たちの未来を奪った貴族の連中に、それに気づかずぬくぬくとこれまで生きてきたお前たちに、そしてそんな仕組みを許した世界に!!

昔話はここまでだ。
さあ、ここまで知ったならもう思い残すことはないだろう?
親父にお前たちを差し出せば、喜ぶかもな。
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レイチェル ★2010.06/19(土)10:34
第14章  2×2

アリスとリュウは、しばらく言葉もなく立ちつくしていた。
目を見開き、呆然としていたアリスが、ゆっくりと口を開いた。
「…本当、なの?」
「さあな。信じたくなければ信じなきゃいい。
 だが、俺たちが遊びでこんなことをしたと思うなよ」
ディーンは冷めた口調で言った。
「おい、ミント。いるんだろ?」
そして、自分の背後にそう声をかけた。
「お前のことだ、全部聞いてたんだろう」
「むぅ、お兄様はいじわるねぇ」
すると後ろの扉が開き、ミントが口をとがらせながら現れた。
「あたし、あの女絶対に許さないから!
 お兄様、手を出さないでよ」
「まあ待てよ。ちょうど2人ずついるんだ、ダブルバトルといこうじゃないか」
「…まあいいわ」
少し不服そうな顔だったが、ミントはボールを取りだすと、投げた。
「いきなさい、シンシア!」
飛び出してきたのはグレイシア。気取ったようにツン、とすまして立った。
「行ってこい、ウィリー」
ディーンが手を振ると、ウィリーは飛び上がってアリスたちを威嚇するように一声鳴いた。
「…まだ、捕まるわけにはいかないわ!」
「そうだな。リンス!」
「なんか訳わかんないけど、いけすかないわね、あいつら。
 あたしがやっつけてやるわ」
「行って、ロロ」
「ええ、あっという間に終わらせてあげるわ。
 あなたは休んでていいわよ」
「あんたこそ、出る幕ないから」
「ちょっと、こんなときに喧嘩しないでよ!」
戦う前から険悪な雰囲気が漂う。
「あっはは☆
 あんな奴らに負ける気がしないわね。シンシア、ふぶき!」
びゅう、という音とともに、激しく雪の粒が2匹を襲う。
「リンス、れいとうビーム!」
「あんな気取ったグレイシアになんて、負けないから!」
ふぶきの雪のつぶてと氷のビームが激突し、がりがりと嫌な音を立てながら押し合う。
「なさけないわねぇ」
ロロがふんっと鼻を鳴らし、二つの力が激突している中間へ向けて炎を放つ。かえんほうしゃだ。
ジュッ、とすさまじい音がしたかと思うと、雪と氷は霧になって消えた。
「ちょっと!
 あたしの技にも当ててどうすんのよ!」
「助けてあげたんだから、感謝しなさいよね」
ロロとリンスは、バトル中にもかかわらず言い合っている。
「あんなやつら、まとめてやっちゃいなさい!」
「…」
シンシアはこくりとうなずくと、ロロに狙いを定め、技を放った。
「ちょっとロロ、よけて!みずのはどうよ!!」
「だいたいあんたは!」
「なによ!!」
2匹は気付かずに、口論を続けている。
水の塊が2匹に襲いかかり、あたりそうになった時。
「「邪魔しないで!!」」
ロロはエナジーボール、リンスはめざめるパワーを同時に放つ。
ドンッという音とともに、水の塊ははじけ飛ぶ。
「きーっ!!
 お兄様、あいつらぼっこぼこにしていいよね!?」
「あぁ。俺もそうしようと思ってたところだ」
その言葉の後、どこかからひゅうぅ、という風を切る音が聞こえてきた。
「なんだこの音…?」
リュウがあちこちを見回す。すると、天井すれすれにウィリーの姿が。
「まずい!よけるんだ!!」
「えっ?」
そのままギュン、と急降下し、リンスに向かって突っ込んできた。
「ウィリー、そらをとぶ!」
ドォン、と重い音が響いたかとおもうと、もうもうと埃が舞った。
「リンス!!」
リュウが叫ぶが、返事はない。埃の煙がはれると、ウィリーに抑え込まれたリンスが、目を回していた。
「姿が無いと思ってたら、ずっと上にいたのか…」
「さっすがお兄様!」
ミントがはしゃいだように飛び跳ねる。
「ちょっとあんたたち」
ロロは、炎のように静かに尻尾を揺らしていた。
「あらら、ロロってば本気で怒ったみたいね」
アリスがニヤッと笑った。それは、ロロが本気になった時のくせだった。
「なによぉ、あんたの嫌いなシャワーズを倒してあげたのよ?
 むしろ感謝してほしいくらい」
「そうね、あのこは大っきらいよ。いっつも負けるし…
 でも、だからね、あのこを倒すのは、この私よ。私以外に倒されるのは、認めないわ!」
今までよりも、さらに熱く燃える瞳で、ミントを睨む。
「ロロ、いっくよー!!」
「えぇ、いいわ。覚悟なさい!!」
「はかいこうせん!!」
シンシアとウィリーに向かって、ロロは大きく口を開くと、そこから光が溢れ出て、そのまま光は一直線にシンシアたちを襲う。
チュドン、とすさまじい破壊音とともに、ガラガラと壁の崩れる音、がりがりと床の削れる音が混ざる。
「きゃあぁ!!」
ミントの悲鳴が聞こえた。
「相変わらずすごい威力だな…」
音に顔をしかめながらも、リュウが呆れたように言った。
「ふぅ、これで先に進めるわね」
アリスが満足そうに言った。
「まて、あれ…」
リュウの視線の先を追うと、そこには倒れたシンシアと、そのそばで立ちつくしているミント。そして、その奥に、ぼろぼろになり、震えながら立っているウィリーの姿が。
「なっ、まだ立てるというの!?」
「まだいけるな?」
ディーンの声に、ウィリーはうなずく。
「あぁ…もちろんだ」
「よし、ブレイブバード!」
力を振り絞るように飛び上がると、ロロに向かって飛び出した。その勢いはどんどん増していき、あたりの空気を切り裂きながら、突進するように突っ込んでくる。
「ロロ!!」
アリスがロロに必死に呼びかけるが、ロロは先ほどの衝撃で動けないでいた。苦しそうに身をよじり、どんどん迫ってくるウィリーを睨みつける。
ひゅうぅ、という音が近づき、ぶつかると思いアリスがギュッと目を閉じた瞬間。
「止まれ!」
鋭い声が響いた。
アリスがそうっと目を開けると、ロロと、その数センチ手前で停止しているウィリーの姿が映る。
「…なぜとめた?」
ウィリーが問いかける。先ほど制止の声を発したディーンが、表情の読めない顔で立っていた。
「別に。ただの気分だ。
 あのまま突っ込んでも、どうせ技の反動でお前もひん死になるだろ、だから意味がないと思ったのさ」
それだけ言うと、ウィリーをボールに戻してしまう。
「…どういうつもり?」
アリスは思い切り睨みつけながら言う。
「いったろ、気分だって。
 お前らが何をしても、俺たちの計画に支障はないしな」
そう言いながら、きびすを返す。
「おい!どこに行くんだよ!」
「帰るのさ。ミントも、もういいだろ?」
「…悔しいけど、しかたないもんね。
 もう、戦えるポケモンもいないし」
「そういうことだ。後のことは他の奴らに任せて、俺らはもういくさ。
 …どうせ、あれはもう完成してるんだ」
「ちょっと、どういうこと!?あんたたちの計画ってなんなの?」
「それを教えてやるほど親切ではないさ」
それだけ言うと、さっさと出て行ってしまった。
「待ちなさいよ!!」
「アリス、とりあえずあいつらはほっといて、ここの親玉に会いに行こうぜ。あいつらのやったことが、多くの町や人やポケモンに出した被害に見合うものなのか…確かめないとな」
「うん…行こうか」
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レイチェル ☆2011.05/06(金)23:23
第15章  自由

「なにここ、迷路!?」
アリスとリュウは、走っていた。
長い長い廊下。左右に扉が並び、曲がりくねり、時折行き止まりとなる。
時折すれ違う白衣の人々をつかまえて道を聞いたりしたが、彼らは襲ってこない代わりに何も話してはくれなかった。
「こういうのって、たいてい偉い奴は上にいるよなー」
リュウがどこか遠い目をしながらつぶやく。
「その上に行く階段が見つからないんじゃない!!いったい何考えてこんなの建てたのよ!!」
アリスがいらいらした顔で返す。そうしてまた何度目かの角を曲がった時。
「あぁ!!」
目の前にあったのはエレベーター。
「か、階段が無いと思ってたらこんなものがあったなんて…」
アリスが呆然とした様子で呟く。
「さっすが、島を丸ごと買い取るような連中は違うなー」
「もう、さっさと行くわよ!!」
アリスは一秒も惜しいというようにエレベーターのボタンを押した。


「…なんだ、ここ?」
エレベーターの扉が開くと、そこは電気がついておらず、真っ暗だった。
「何も見えないわね」
降りてあたりを見回すが、何も見えない。
「誰かいないの!?」
と、アリスが闇に向かって叫んだとき。
カッ、と一斉に明かりがともった。眩しくて、2人は思わず目を閉じた。
「…ウラン、か?」
しわがれた声が響いた。かすれていて、今にも消えそうだ。
「ウランって、あいつのことよね。違うわよ、失礼ね!
 そっちこそ誰よ」
アリスは声のした方へ挑むような眼をむける。
「…なんだ、この部屋は」
リュウがあたりを見渡す。
だだっ広いホールのようなところだった。壁際のいたるところによくわからない機械が所狭しと並べられている。そして、それらに囲まれるように椅子が一つ置いてある。椅子といっても、がっしりと大きくて、装飾はほとんどない。
そこに、一人の老人が座っている。体のいたるところからコードがのび、かすかにのぞく腕や足は枯れ枝のようだ。
「…何だ、違うのか…」
老人はアリスたちに向けていた目を空中にぼんやりとむけた。もうアリスたちに関心はないようだった。
「ちょ、ちょっと、無視!?」
「落ち着けって。
 …あんただな? あいつらの言っていた”父親”は」
「…」
老人は心ここにあらず、といった様子だ。
「ちょっと、こっち見なさいよ!!
 …あんなこと、なんでしたのよ。許されると思ってるの?」
アリスはいら立ちと怒りのこもった目を向ける。
「おぉ、そうだ。石を使わないとな」
老人は腕をあげ、横のパソコンを操作し始めた。
「な、何する気?」
見ると、周りの機械も作動し始めているようだ。ウィーン、ガシャン、と重い金属音をたてている。
と、壁の一部がせり出してきた。壁の中には透明なカプセルが入っていて、その中にはさらに握りこぶし大の石が入っていた。
「おぉ、これじゃ。これでようやく、わしは自由だ…」
「な、なに?何をするつもり?」
「何がいいだろう…そうだ、やはりボーマンダがいい」
老人は椅子の横の机に置いてある電話を取り上げ、ぼそぼそとなにかつぶやく。するとすぐに、白衣の男が荷台に大きなカプセルのようなものを乗せて運んできた。それは、廊下に並べられていた容器。中身はボーマンダだ。
白衣の男は容器を老人の前に置くと、静かに部屋から出ていく。
「おぉ…これだよこれ」
老人は嬉しそうににたりと笑うと、細い指で容器の前についてあるボタンをおした。すると容器を覆っていたカプセルのようなガラスが左右に分かれ、開いていった。緑色の液体がこぼれ、床に広がっていく。
「さぁ、目を覚ますんだ」
その言葉に反応するように、ボーマンダの目がゆっくりと開かれていく。それは、ボーマンダの力強い瞳ではなく、どこかうつろだった。
「よーし、いいこだ…
 さぁ、この石で自由を手にするんだ」
「なんなの、あの石…」
鈍く光るその石は、他のどの石とも違う、不思議な光を放っていた。赤のようにも、緑のようにも、青のようにも見える石。
「これはわしの石だ。ポケモンを本来あるべき姿、完璧な姿にするパーフェクトストーンだ」
「パーフェクトストーン…?」
「そうだ!!
 人間に飼われ、いいように使われる! そんなことがあっていいはずがない!」
老人は震える手で石をボーマンダに近づける。
「何度も実験を繰り返し、ようやく出来たんだ。
 さぁ! 何もわかっていない人間どもに、復讐をするのだ!!」
石が体に触れ、ボーマンダの全身が光りだす。
「なんでだ? ボーマンダがこれ以上進化するはずがない!」
「何よ、これ…」
リュウは目を見開き、アリスはおびえたような目を、それに向けた。
光に縁取られたボーマンダの形は膨れ上がり、いびつな形となる。
と、ボーマンダが遠吠えのような声を発した。空気を引き裂く、狂ったような鳴き声。
「いやっ…」
アリスは体が震えだすのを感じた。あれは、危険。本能が、体中の細胞が悲鳴をあげている。
やがて成長は止まり、光がおさまる。
そこに現れたのは、もはやボーマンダではない。しかし、ポケモンでもなかった。
開けたままの口からは太くまばらな牙が生え、うつろな瞳は、奇妙にぎらぎらと光っている。体中にこぶのようなごつごつしたものができ、アンバランスなほど長くなった翼は、黒く変色してきている。
「ふふふ…」
老人の枯れた笑い声が響く。
「ふはははははは!!」
しわに埋もれ、しかし妙に生気を感じる目をぎらつかせながら、ゆっくりと立ち上がる。ずるり、と彼にまとわりつくコードも動いた。
「お、おい!!」
「危ないわよ!!」
しかし、老人は耳に入らないように進化を遂げたボーマンダへと近づく。
と、その恐ろしい生き物は上を向いたかと思うと、舌をだらしなく出しながら凶悪な口を開いた。コオォォ、という息を吸い込む音がしたかと思うと、次の瞬間それは口から莫大なエネルギーはを放った。
その余りの眩しさにアリスとリュウは目を閉じ、リュウはとっさにアリスをかばうように腕の中に抱いた。
「きゃぁあ!!」
「うわぁあ!!」
光に遅れて、ドウン、と腹の底に響く音が部屋に広がった。そのあともガラガラとコンクリートの崩れる音がする。
なんとかがれきから逃れた二人が目にしたのは、天井だったところに広がる青空と、高笑いを続ける老人だった。
「な、によこれ…」
アリスが老人をおびえたように見る。
「くくく…すばらしい!!」
「あんなのが暴れだしたら、町一つじゃすまないわよ!?」
「ああ…ここでくい止めないと!!」
リュウがリンスをだす。
「いけるか?」
「平気よ。それにしても…かわいそうに」
悲鳴に近い鳴き声をあげるそれを見上げて、つぶやく。その鳴き声は、泣いているようにも聞こえる。
「助けてやらないとな…」
リュウもうなずく。アリスもロロをだす。
「ポケモンをなんだと思ってるのよ!!」
二匹は走り出し、技を繰り出そうとした。しかし。
「オオォオウ!!」
苦しそうにうなりながら、完璧な怪物と化したそれが尻尾を振りまわした。
「きゃん!!」
「きゃっ!」
まるで虫でも払うように、二匹は軽々とはたき飛ばされてしまった。
卑怯なほどに軽々と。
「リンス!!」
「こんなの…倒せるわけないじゃない…」
アリスが力なくへたり込む。
「さぁ!!愚かな人間どもに復讐しようではないか!!」
老人がそれをいとおしそうになでる。主人と知ってか知らずか、それは老人に攻撃しないようだった。
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やむをえず、連載を 途中(とちゅう)で やめる場合は、凍結をえらんでね。ただし、凍結をえらんでも、次の物語が 書けるようにはなりません。感想をくれた人や、次回を楽しみにしてた人に、 感想 で おわびしておこう。


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