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連載[1258] 紅葉狐のぶらり旅

しらす ☆2010.06/22(火)23:42
いない親を捜して故郷にとどまるなんて馬鹿らしい。
それでもそこを発つとき、何となく寂しい気持ちになった。

「はじまりはじまり」

私は生まれ故郷のことをよく覚えていない。
覚えているのは、風に飛ばされるたくさんの紅葉。
成長し、すぐに発ってしまった故郷。
今はどうなっているだろうか。

「あらまぁ、これはずいぶんと…」
久しぶりに見た故郷は、すっかり無くなっていた。
「嬢ちゃんはここの娘か?この村は少し前に地辷りにあってな…」
「地辷り…」
「大雨でね」
一月ほど前らしい。
「旅立ち以来初の里帰りだったんだけどねぇ…」
「そりぁ残念だったな、楽しみだったろう」
親も無く、そこまで思い入れもない場所だったが、
もう一度あの紅葉が見たい、そう思って戻ったが、遅かったな。
せっかく時期も狙ったのに。
そう思っていると、さっき話しかけてきたドダイトスが、
「良かったら俺の家に泊まっていくか?疲れただろう」
と言ったので、ありがたく泊まらせてもらうことにした。

「俺はズイ。嬢ちゃんは?」
「コウヨウ。村の紅葉にあやかった名さ。キュウコンなのにね」
「そうか?俺は似合ってると思うぜ」
「それはうれしいねぇ」
この男は話をするのが好きらしく、ひたすら話しかけてくる。
それを適当に聞き流しつつ、着いた家は結構綺麗なところだった。
「まあ適当に座っといてくれ」
縁側に座り、外を見る。
この村にも紅葉があったが、やはり故郷の方が綺麗だったな。
思い出補正なんて言葉もあるが、本当その通りだと思う。
村にはろくな思い出は無かったはずなのに。
それでもあの紅葉だけは鮮明に記憶に残っている。
多分それが無ければ、故郷に戻ってくるなんて事はなかった。
そういえば、少し前に旅先で見た紅葉も綺麗だったな。
あれはジョウトのあたりだったっけ…
「嬢ちゃん。飯の準備できたぜ」
「おおっ、ありがとう!」
あの塔と紅葉も綺麗だったが、やっぱり故郷にはかなわない。
つくずく故郷は美化されるなぁ、そう思うと少しおかしくなって、
私は笑顔で食卓に向かった。
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しらす ★2010.08/27(金)23:38
古風な雰囲気っていうのは、初めて来た町でも懐かしい気がする。
そんなことを思わせる、いかにも昔な町だった。

「またこんど」

ドダイトスに、泊めてもらった礼を言い、家を出る。
せっかくだから少し観光していくことにした。
瓦屋根が立ち並ぶ、何となく古風な町。
華やかでいて落ち着きがあって、自然と心が安らいでいく。
「ぬしはどこの人?」
突然話しかけられて、振り返るとユキメノコがいた。
「あんたは?」
「ああ、旅人なんて珍しくて、つい話しかけてしまいんした。
わっちはムヒョウ。見ての通りのユキメノコ」
「私はキュウコンのコウヨウ」
不思議なしゃべり方をする娘だ。
「あんたは地元民かい」
「そう。ぬしはどこからきんした?」
「家出して久々に故郷に帰ってきたらすっかりなくなってた所さ。
 ここから少し離れた、紅葉の綺麗だったところね」
「ああ…それは残念でありんした。あそこの紅葉は綺麗だったのに」
「だろ?もう一度くらい見たかったんだけどねぇ」
どうやらこの娘も見たことがあったようだ。
「でも、景色ならこの町も」
「へえ?」
「春になりんしたら見に来るといいでありんす」
そういえば町の入り口あたりに木があったな。
話し振りからして、あれはきっと桜だろう。
「その時まで覚えてたらね」
「ふふ、楽しみにしていんす」
そういって彼女は、楽しそうに笑った。
「じゃあ、私はそろそろいくよ」
「ああ、一寸待ちなんし」
彼女は私を引き止めると、小さな鈴を私に渡した。
「お土産」
「…ははっ、ありがとう。ありがたくもらっとくよ」
それを後ろ足につけると、ユキメノコは笑顔で私を見送った。
町を出るとき、ふと脇の桜を見る。
今は枯れ木だが、きっと春には綺麗な花が咲いていることだろう。
「覚えてるといいんだけどねぇ…」
何となく名残惜しい気持ちで、私は町を出た。
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しらす ☆2010.07/15(木)00:17
目的のない旅は、必ずどこかで飽きがくる。
そんなとき、少し迷ってみるのもいいかもしれない。

「迷い道」

「す、すいません!こっちだと思ったんですけど…」
「本当、入り組んでるねぇ…」
返す返事は上の空。
完全に方向感覚が働いていない。
森に入ってきた時は普通だったはずなのに。
もしかしてこいつのせいか?と横のオオタチを見ると、
あちこち見回し、酷く混乱しているようだった。

こいつを拾ったのは、偶然道端にいたからだ。
目的地もなく、適当に歩いて入った森にそいつはいた。
「おい、あんた」
「ひっ、だっ、誰ですかあなたはっ!」
「…そんなに怯えなくても」
どうやら酷く臆病らしく、話しかけた途端後ろに飛び退いた。
苦笑しながら声をかけると、おずおずとよってくる。
「私はコウヨウ。あんた、名前は?」
「ぼ、僕はテンっていいます、よろしくです」
「テン、ね。で、あんたはそこでなにしてたんだい?」
「じ、実は…道に迷っちゃって…」
それを聞いたとき、思わず、はっ?と言ってしまった。
だってなぁ、この道…
「一本道じゃないのかい…」
「あっ、目的地は道を逸れたところなんです」
あ、そういうことか。
よく考えれば一本道で迷うのもどうかしてるよね。
「じゃ、目的地までついてってやろうか?」
「えっ、い、いいんですか?」
「どうせ暇だったからね」
すぐ終わるだろう、そう高を括ってたんだがねぇ…

「まさかここまで方向音痴だったとは…」
「?なにかいいました?」
覗き込んでくるオオタチに笑ってごまかす。
あいにく私は心がくじけないようにするので必死だ。
と、ふとむこうに人影が見えた。近づいてくる。
「あっ、シャロン!こっちこっち!」
それがはっきりした途端、オオタチはうれしそうな声を上げた。
現れた相手は毛並みの綺麗なギャロップだった。
「…お前、いい加減学習したらどうだ」
「僕だって頑張ってるんだよっ!」
「頑張りがまるで生かされていないが」
二人はしばらくそのノリで言い争っていた。
そっとため息をつくと、ふとギャロップがこっちを向いた。
「この馬鹿をここまで連れてきてくれたようだな、礼を言う」
「別にいいよ、困った時はお互い様」
自分も迷っていたのは秘密だが。
「ありがとう、おい、いくぞ馬鹿」
「馬鹿っていうな!」
「あー…この森の出口を聞いてもいいかい?」
「む…そこを少し進めば道に出る。その後西だ」
「ありがとう」
そこで別れて出口を目指すと、拍子抜けするほど簡単に出られた。
…あのオオタチには人を迷わす力でもあるのだろうか。
妙なものにであってしまったようだ。
まあ…それなりに楽しかったし別にいいか。
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しらす ☆2010.08/27(金)23:38
運命っていうのは結構そこらへんに転がっている。
今日私はその一つを拾った。

「一度目」

気の向くままに道を進んでいると、突然そいつは現れた。
そして開口一番。
「お前、俺と勝負しろ」
最近のガキは物騒だ。
とりあえず燃やしといた。

このポチエナのガキはリオンというらしい。
一月ほど前、強くなりたいと家を飛び出したんだという。
強くなりたいなら相手の強さくらい見極めろ、
という思いは胸の内にしまっておいた。
なんか一瞬で負けて落ち込んでるっぽいし。
「素質はあるんだろうけどねぇ…」
そのつぶやきが聞こえたのか、リオンは顔を上げた。
「…本当っすか」
「筋はいいと思うよ」
素直な感想。
それを聞いた途端、リオンは顔を輝かせた。
「なんか自信出てきた!」
結構単純みたいだ。
「あーそりゃよかったねー」
これ以上ここにいると後々面倒くさくなる気がする。
なんか大丈夫っぽいしじゃあ私はこれで、と立ち去ろうとすると、
「練習、付き合ってくれないっすか?」
…やっぱりか。

なんだかんだで付き合わされているあたり私も相当甘いらしい。
「だから力押しすれば良いってもんじゃないんだって!」
「よくわかんねぇっす!」
始めてわかったがこいつは相当物覚えが悪い。
というか何も考えてない。
「面倒くさ…」
「何かいいました?」
「なんでもないなんでもない。お前は練習」
「はいっ!」
動きはなかなか。
技もそれなり。
それが考えなし一つでここまで生かされないとは知らなかった。
うーん、新しい発見だ。
全くうれしくないが。
「…そこらへんの奴には勝てるしもう良いんじゃないか?」
だが素質がある分ポチエナにしては十分強い。
「いや、それじゃダメなんです。
 見返してやりたい奴がいて、そいつに勝ちたくて…」
おお、ちゃんと理由があったのか。
「そいつはアブソルなんですけど、♀のくせにやけに男勝りな奴で、
 よく喧嘩売られるんすけど結局勝てなくて…」
「ほう、じゃあそいつは戦い方がわかってるんだな」
「だと思います」
「で、周りの誰かに協力求めるのが嫌で飛び出したと」
「…はい」
よくある話だ。
だが大体そういう奴はすぐ連れ戻されて諦める。
こいつはなかなか根性あるみたいだ。
「んー、だったら私が教えるのは間違ってるね」
「うっ…」
「私だっていつまでもお前の相手をしてる気はないし…そうだな」
なかなか面白い奴を見つけた。
これも運命ってやつかな。
ならそれに感謝しつつ。
「強くなったと思ったら、私を探して会いにこい」
一回手を付けちまったら、最後まで見守るもんだろう。
こういうのも楽しいもんだ。
「まあ、簡単に捕まりゃしないけどね」
さて、こいつは会いに来れるだろうか。
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しらす ☆2011.02/13(日)22:16
ニンゲンというのは、道を選べば割と出会わないものだ。
ただ、その辺境に好んで入ってくるやっかいな奴もたまにいる。

「我が道を行く」

『おいしいか?おいしいか!』
「ごめんね。無視していいよ」
「いやー…あはは」
ここは山奥。本当に山奥。
霧が立ちこめている暗い森の中。
なぜかそんな所で出会ったニンゲンとその手持ちと一緒に、
なぜか一緒に昼飯を食べているこの現状。
なんでこんな事になってしまったのか自分でもわからない。
「ユーリは基本的にこんな感じなんだよ。
 出会ってしまったのは不幸だったけど、まあ諦めて」
主人に冷たい視線を送るバシャーモは名をクレイだといった。
幼い頃から近くにいて、あるとき共に家を抜け出したとか。
十年以上一緒にいてお互い気心知れてるらしく、
彼女は問答無用で主人に蹴りを入れる。
曰く「ユーリはこれくらいしないと止まらない」。
主人の方もそれを許していて、姉妹のようだと私は思った。
「あれはこういう山奥とかの険しい所が好きでさ、
 よく周りに変人扱いされてるよ」
変人扱い、というか変人じゃないのか。
「まったくだね。あれで可愛い方だからさらに厄介だ」
遠い目をしたバシャーモが、いい年頃なのにとため息をつく。
確かにあれの婿になるならかなりの運動スキルが必要だろう。
サバイバルスキルもないと多分生きていけない気がする。
「いい加減いい相手見つけて落ち着いてほしいんだよね。
 あの馬鹿にだって気になる相手の一人や二人…」
といいかけて、口をつぐんでしまった。
ああ、思いつかなかったんだな。
そう思ったら顔に出てたのか睨まれた。
「…仕方ないんだけどさ。なんせあの性格だよ。
 旦那できても絶対無茶させるからいろいろ心配だし、
 でも夫婦の事だからずっと見張ってるわけにもいかないし」
…さっき二人の事姉妹みたいだと言ったけど。
これは、うん、なんだ、あれだよね。
思わずぼそっと、親みたいだと言ったら割と本気で殴られた。
そんなお昼時。
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ここにつづきを書けるのは、作者本人だけです。本人も、本文じゃない フォローのコメントとか、あとがきなんかは、「感想」のほうに書いてね。

物語ジャンルの注目は、長くなりがちなので、いちばんあたらしい1話だけの注目に なります。だから、1回の文章量が少なすぎると、ちょっとカッコわるいかも。


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しばらくお話の続きが書けなくなりそうな場合は「一時停止」にしておいてね。 長い間「一時停止」のままの物語は、Pixieの 容量確保(ようりょうかくほ) のため消されることがあるので、自分のパソコンに 保存(ほぞん)しておこう。

やむをえず、連載を 途中(とちゅう)で やめる場合は、凍結をえらんでね。ただし、凍結をえらんでも、次の物語が 書けるようにはなりません。感想をくれた人や、次回を楽しみにしてた人に、 感想 で おわびしておこう。


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