Re: エンディングに関する大胆な解釈 [エイジス] へのコメント 1997-2-21 06:08:26
少年はその日、眠れぬ夜を過ごしていました。
枕許には新鮮な革の匂い。買ってもらったばかりのサッカーボールの匂いです。
昨日まで、サッカーボールは友達に借りてばかりでした。
でも、明日からは違うのです!誰に遠慮する事もなく、思うさまボールを蹴る事が
できるのです。こっそり影で練習して、超必殺シュートをマスターする事だって
できるはずです。少年は幸福で胸が一杯になります。
ああ、でも。ちびのサムはまだ自分のボールをもっていません。
時には、あいつに貸してやっても良いな。少年は思います。
あいつには、この前こっそりカードを分けてもらったんだ。それに海辺の洞窟の
秘密だって教えてくれた。そうだ、まずあいつにボールを貸してやろう。
僕はいつでも遊べるものな。
明日は朝一番にサムの家に行こう。あいつ、どんなに喜ぶだろう。
青年は眠れぬ夜を過ごしていました。
何度目を閉じても、浮かんでくるのは愛しいマリーの顔ばかり。
マリー、ああマリー。青年は低くつぶやきます。
その夜は彼女の誕生日。ない勇気を振り絞って、彼女に結婚を申し込んだ甲斐が
ありました!
限りなく美しく清らかな愛しい愛しいマリー!君が僕を好いてくれていたなんて、
今でも信じられない気分だよ。まるで夢のようだけど、これは決して覚めない
夢なんだ。
明日起きたらすぐに君の家に行こう。お父さんに結婚の許可をもらわなくては。
お父さんは反対するかな?もしかすると1発くらい覚悟しないといけないかも
知れない。だけど、大丈夫。きっと最後には笑顔で許してくれるよ。
君の為なら何だってできる。一生幸せにする。誓うよ、愛しいマリー。
おやすみ、明日また会おう。
男は、大きく背伸びすると、目頭を押さえた。
こんな時間になってしまった。今日も寝顔の息子にしか会えないのか。
ここの所残業が続いている。朝帰りどころか、会社に泊まり込むのもしばしばだ。
(第一、顧客が仕様をばんばん変更するからいけないんだ!)
だけど、それもどうやら今日でおしまい。明日は久々に休暇がとれそうだ。
男はがたごとと机上を片付けはじめました。
明日は一日どうやって過ごそう。のんびり寝て過ごすのも良いかな。
いや、それよりも息子と思い切り遊んでやろう。そうだ、しばらく釣りにも
連れて行っていないな。カームの近くまで足を伸ばして川釣りと行くか。
妻にも淋しい想いをさせたろうから、一緒に誘ってやろう。お弁当を作って
河原で食べればきっとあいつも喜ぶぞ。
男は幸福な笑みを片頬に浮かべて、ゆっくりと席を立った。
その夜、ホーリーが発動し、人類は光となって静かに地上から消えていきました。
地上には永い永い平和と安らぎが戻ってきました。
鳥が空を舞い、動物がのびのびと駆け回り、家々はやがて朽ちて緑に覆われて
いきました。
寄り添う恋人同士も、路地ではしゃぐ子供達の歓声も永遠に失われてしまいました。
川面には鱒の背鰭がきらきらと踊っていますが、それを見つめる親子の眼差しが
輝く事はもうないのです。
こうして、星は救われ、無限の安寧を手に入れたのでした。(画面暗転)
確かにラストには、このような解釈も可能でしょう。
だが、果たしてこれが真に「すばらしい」事なのでしょうか?
ただ「生きたい(生きつづけたい)」と願う事はエゴなのでしょうか?