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「暗黒釣行記 − 鷹橋晋一の小戦争−」
【6】


_かくして、鷹橋さんの此度の釣行は、異民族に「釣り」という娯楽を伝える結果となったのであります。その後しばしば、カリフォルニアをはじめアメリカ西海岸のあちらこちらで、一風変わった釣り客が見られるようになりました。また同時に現地の住民らが多数行方不明になったということですが、釣り客との関連はわかっていません。今日もニュースはアメリカ西海岸の話題で持ち切りです。

_「…行方不明になっているのはサンフランシスコ在住の宝石商のアンソニー氏(52)で、
_宝石の入荷のために店舗を留守にした8月27日の午後、取り引き先の輸入業者から、
_『店の裏で誰かが空に浮かび上がったかと思うと、そのまま空へ消えていってしまった。足元を見ると、アンソニーさんの名刺入れと粗悪な宝石がいくつか落ちていた』
_との通報がありました。現在警察では、一連の住民消失事件との関連を調査している模様です」

_「ラスベガスモ良カッタガ、ココモぽいんとトシテハ良サソウダ」
_「ウム、ソウダナ。デハ、 第一投ヲ!…エイヤッ!」
_光ファイバーらしきもので造られた釣り糸を垂れ、今日も『来訪者たち』は獲物狩りに興じています。人間の物欲の深さを試して楽しむことが、彼らの娯楽になったようですね。そういえば、あの有名な文学作品、『蜘蛛の糸』にも似たようなシーンがあったような気がいたしませんか?
_「宝石ノトキハ、実ニウマクイッタナ…今日ハドウダロウ?」
_「次ハ、札束を詰めたボストンバッグを垂ラシテミヨウカ?」
_「オイオイ、アレハ日本ノ獲物デナイト駄目ダ。『竹薮』ッテイウ、好ポイントガナイカラナ…」


「暗黒釣行記−鷹橋晋一の小戦争−」

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