▲ ブリタニア見聞録 凸 王城

>:Recall:02

SKI:Recall-01

一つ目の言葉は風
行く手を教えて
やすらぎの
そらのなかへ
つばさをのばす

これは外れることの無い鎧に身をまとった女性と、その鎧に挑む冒険家の物語…。
 これは平成13年9月8日に開催された、ギルドSKI「生活向上委員会」のイベントです。。
 「RPイベント」と銘打たれたこのイベントは、ブリタニア世界のキャラクターになりきってストーリーを展開していくというものです(このサイトでは便宜上、演技系イベントと呼んでおきます)。
 荒々しい戦士や繊細な心をもつ魔法使いなど、参加者やスタッフが皆それぞれ役者となり、ブリタニアにふたつとない物語を生み出します。

注: ゲームの視点がいち参加者によるものであるため、ページの内容には一部脚色・事実誤認が含まれている可能性があります。何卒ご了承ください。
(参加者・主催者の方でお気づきの点がございましたらご一報ください)


旅立ちの地 ニュジェルン

 オス、俺はアーダン。究極の鎧を求めて旅をしている戦士だ。自慢じゃないが肉体のほうも鋼鉄の鎧のように鍛えているぜ。
 そんな俺が今回耳にしたのは、「決して外れることのない鎧」の話だ。何でもヒミコという女が鎧を着たまま2年以上も生活しているという。その鎧にひかれた俺は、「鎧をはずすことのできる細工師探し」の募集を見て迷わず志願。こうしてニュジェルンにやってきた。
 町の中央広場に足を運んでみると、真紅のローブを身にまとったホムサという男が冒険家たちを集めている。
 彼のまわりには俺と同じようなガタイのいい奴や、何を考えているかさっぱりわからねえ魔法使い、はてまた職業すら推定できなさそうな奴までさまざまな冒険家が集っている。あげくのはてに広場中央では、
 「弓はことたりましたか?」
 といった武器の取引の話までされている始末。彼女はいったい何者なのか?
 極限まで鍛えた肉体に似合わず、ただひたすら不安におののく俺の姿がそこにはあった。

勇者・戦士・僧侶・魔法使い

 募集の知らせを受けて志願した冒険家は18人にものぼった。この人数ではさすがに行動に支障をきたすと判断したのか、部隊を4つの小隊にわけることとなった。
 まあ確かに、大隊を統率するだけの資質は一介の冒険家にそうそう備わっているものではない。正しい選択だろう。
 こうして数人ごとに小隊を組むときには、メンバー同士が互いの欠点を補うことのできるよう、職業別に効率よく配分することが必要だ。

 まあ王道では「勇者・戦士・僧侶・魔法使い」。古の冒険譚には「戦士・戦士・戦士・盗賊・僧侶・魔法使い」というのもあった。あとは、「熱血のレッド・クールなブルー・カレー好きのイエロー」なんていうのはどうだ?
 といった感じで小隊の組み方の好例は枚挙に暇がない。
俺は力だけがとりえだから、軍師による助言や魔法によるサポートを行ってくれる奴が必要だ。
 どれどれ。

 「むむ?」

(な、何者だあの女は?)
 おおかた小隊が編成され終わったころ、広場中央には頭にシイタケ(ツキヨタケ?)を模した頭巾をかぶる女が取り残されていた。我々に背を向けて立ち尽くす彼女は、果たして何者なのか?
 こうしてまたしても俺に不安材料が提供されてしまった。今日はなにやら考え事の多い日になりそうだ。

隊長アーダン

 弓取引の女やツキヨタケの女はどうやら別小隊に配属されたらしい。果たしてどのような能力を持っていたのか気にならないではないが、俺の小隊は左の写真のとおり。緑のたすきが目印だ。
 そしてなんと俺が隊長に抜擢されてしまった。向こう見ずで生傷の絶えない俺に部隊統率がつとまるのか? しかも今回は細工師さがしが仕事と聞いている。細工師といえば決まって芸術家肌、やたら神経質な奴が多いと思うぞ。ううむどうしたものか。
 まあ、ここは隊長に抜擢された理由を「名前の順」とでも考えることにして、悩む材料を減らしておこう。

 さあ、出動命令が下ったぞ!

   隊長:Ardan(プレートメイル)
吟遊詩人:Khan-Nik(黄色のローブ)
 探検家 :Lig(白いシャツ)
 槍戦士 :Ruby(茶色の皮鎧)
動物使い:Syu(黒いローブ)

呪われた女性 ヒミコ

「なんとまぁ、ずいぶんまた山奥まできたもんだ」

 案内された場所はカーミラという神父が住まう教会だった。なんでも始終離れない鎧によって生活に支障をきたしているヒミコは、ここの田舎神父によって養われているのだという。
 「こんな辺境の教会までよくぞお越しくださいました。さぞかしお疲れのこととは思いますが、さっそく件のヒミコをごらんに入れます。 ヒミコ、入りなさい」
 神父の紹介により礼拝堂の奥から現れたのは、俺の鎧にもまけない重厚な鎧に包まれた女であった。
 いくら鎧を着慣れた俺であっても、さすがに2年間も鎧と寝食をともにすることなどできはしない。彼女にはただただ頭がさがるばかりだ。
 「ヒミコがこんな姿になったわけには・・・」
 ヒミコを部屋へ招き入れると、神父は再び口を開いた。

神父の依頼

 「今から2年前のことです。彼女、ヒミコは倒れていました。今ご覧のとおりの姿のままで・・・。
 私は彼女を引き取り、この教会で養うことにしました。神父としての仕事を全うしながら、鎧に関してもあれこれと研究しつつ。そしてあるとき、ひとりの細工師の名を耳にしたのです。
 その者の名はピグマリオ。彼の腕ならば、間違いなくあの鎧を外すことはできたと思われます。しかし残念なことに2年前、何者かの手により殺害されたとのことでした。
 その後彼には6人の弟子がいることを知りました。きっとピグマリオの腕を受け継いでいるに違いありません。あなた方にはその弟子たちを探し出し、ヒミコの鎧を外していただきたいのです」
 なるほど。おっ死んじまった細工師には弟子がいて、その者たちにヒミコの鎧をはずしてもらえと、要はこういうことだな。
 よし、神父のおっさん、あんたの頼み、我々がかなえてやるぜ!

 「弟子たちは師匠殺害の事件以来、名を変え、姿を変えているとのことです。捜索は容易なことではないでしょう。噂では弟子の一人である、アルキュオネという女性がベスパーにいるとのこと。まずはベスパーに向かってください」

ヨットレース大会と脅迫状

 我々冒険家一行は、神父のおっさんの頼みで山を降りて南下し、ベスパーへと向かった。ブリタニアでもひときわ栄えるこの町は、海運や漁業が発達しており大小さまざまの船が接岸されている。
 この賑やかな港では、なんでもこれからヨットレースが開かれるらしい。しかも、アルキュオネらしき人物がこの大会にエントリーしているとのだという。
 波止場近くのヨットクラブを訪ねると、その入り口で苦悩する女性船員がまず目についた。
 「貴方がアルキュオネさんですか」
 唐突にも誰かがその船員に問いかけると、彼女はおもむろに否定しつつも目をそらしつつ返答してきた。
 「ち、違うわ。私はカ、カトリーナ。このレースの出場者よ。いきなりこんなに沢山人が来るなんてちょっとびっくりしたわね。とはいえ今こっちは大変なことになっているの」
 もしそのとき、俺が細工に少しでも心得があったならば、彼女の指のあちこちに細かい切り傷があったことを見逃さなかったことだろう。労働にいそしむ者の指先にはきまってクセみたいなものが出るということだが。

 カトリーナの話はつづく。
 「実は『参加した船を沈める』、という旨の脅迫状が会場宛に届いたの。おそれをなした参加者の多くが棄権してしまったわ。
 このままでは開催が不可能となってしまでしょうね。せっかくこの日のために訓練したというのに・・・」
 なるほど、今でこそ定員割れが起こりそうなレースだが、本来はかなり大規模なものらしく、賞金額や協賛団体はなかなかのものであった。確かにこれならば脅迫状が出されても何ら不思議なことはない。

 「俺達が出場すれば、シースはできそうか?
 もし大会が無事終了したならば、そのあとでちょっと話を聞いてもらいたいのだが・・・」
 彼女がアルキュオネであるならば、大会開催で恩を売っておくことは必要に違いない。そう判断した我々は、すぐさま各小隊ごとにエントリーをはじめるのであった。
 ちなみに賞金額に目のくらんだものは・・・いないと言っておこう。