DARK KNIGHT
クロスライン

 
 
「団長――」
 
 
 
「団長は、もう止めてください」
 
「そう言われても、俺にとっては『団長が過去に団長であったこと』は事実ですし、『これからも過去は変わらない』んだから、やっぱり団長って呼ばせてください」
 
「でも、聖騎士団はもうないんですよ」
「団長が牧師に戻ったら神父様って呼んでも良いですけど“おまわりさん”だけは団長には断じて似合いません!」
「はあ、そうですか……」
  (何故か神父なら良いらしい)
 
「ところで、何か私に用ですか?」
「そうそう。本題に入りましょう。――噂ですが、某所にまだ活動しているギアがいるそうです。先日、そのギアのクビに、賞金がかけられました。……御存知でしたか?」
「――いや、今はじめて聞きました」
「詳細は不明です。それがギアかどうかもまだ、確実には確認がとれていません」
 
 ざざざざ、と風の音がした。
 
 ――これは死者の声なのだろうか、とカイは少し思う。
 ここにはギアに殺された人間がたくさんいるのだから、ギアと聞いてざわめくのも無理はなかろう。
「――興味深い話ですね、それは」
 
「多分、ソルの旦那も今頃は現地に向かっているでしょうね」
「ソルか……。あの男には、最近ぜんぜん会ってない。どうしてるのかな」
「それは意外でした」
「なんでです?」
「団長とソルの旦那は、仲が良いとばかり思ってましたから」
「そんなわけないでしょう! 貴方は一体、どこを見てそんなことを言うんですか?」
 
「団長の常日頃の言動を見れば、いやでも解りますよ」
「もう。私はソルが嫌いできらいで仕方ないのに」
 調
「“嫌い嫌いは好きのうち”っていうじゃないですか」
 
「誰がそんな世迷言を……」
 
「――お花、みんなにあげておいてください」
「もう、行かれるんですか」
「ええ。もうちょっとゆっくりお墓参りをしていきたかったのですが、ギアが出たとなるとそうもいきませんから」
「――それじゃ、団長は、ここの人たちのことは忘れて、昔のことは何も気にしないで行ってきてください」
「え……?」
「団長は、ここのことを夢に見るたびに、死んだ人たちの命を救う事が出来なかった事を詫びに来ているみたいなので――」
 
 
「――何故それを……?」
「ここの人が、そう言っています」
 
「そういえば、ヨウさんはネクロマンサーでしたっけ」
 
「……いいえ、俺はまだ、見習いにすぎないんです」
「あれ、まだ昇級していないんですか」
「どうも、俺は魔道には向いていないみたいで……」
 
「でも、ここには俺の仲間が眠っているから……生前仲が良かったヤツの声ぐらいなら、すこし聞こえます。――さっき、団長が墓に来てるって教えてくれたのも亡霊でした」
「きっと、私は、さぞ恨まれているんでしょうね」
 
「そんなことは……」
 
「絶対に、ありません。」
 
「だから、心置きなく行ってきてください。あとは、俺がかわりに供養しときますから」
「――ありがとう」

 
 ――風は、まだ騒いでいた。

END

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Last update- 0/ 6/24