ぴくし〜のーと あどばんす

物語

【ぴくし〜のーと メイン】 【テーマいちらん】 【おともだちぶっく】 【みんなの感想】

続く[1121] Pixie vs 伝説のポケモン

え〜ふぃ ★2009.05/25(月)03:35
プロローグ

西暦21XX年。
ついに全ての種類のポケモンが確認された世界。
今では、その存在が伝説とされたポケモンたちも、全て保護され平和に暮らしていた。
ところが、突如事件は起こった。

希少ポケモン観察保護局の原因不明のセキュリティ故障。
そこに保護されていたポケモンたちは世界各地に散っていってしまったのだ。
数時間後、事態を重くみた政府は特殊精鋭トレーナー隊「Pixie」を緊急招集。
彼らに希少ポケモン捕獲命令が下された。

今、彼ら特殊精鋭トレーナー隊「Pixie」と伝説のポケモンとの戦いが始まろうとしていた。
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え〜ふぃ ★2009.05/25(月)03:54
Mission1-1 玲vsミュウツー その1

「じゃあ玲くん、頼んだよ。」
「なんでオレなんです?他にも何人かいるでしょ?」
「何を言っている?他の者はすでに現地に到着したぞ。」
「はいはい、分かりましたよ。後でちゃんとギャラ払って下さいよ。」

情報によると、X地方Z洞窟にターゲットが潜んでいるらしい。
ターゲットはエスパータイプで非常に強力なポケモンとの事。
エスパータイプのポケモンを使いこなす玲が適任と判断され、今回指令が出たのだ。
「だるいなァ…早く終わらせて帰ろう。な、ぎんとき。」
玲のポケモン、エーフィのぎんときは頷いた。
彼の性格もまた、トレーナーに似て無気力な性格のようである。

「Z洞窟…。ここか…。」
今回のターゲットが潜んでいる洞窟に辿り着いた。
何やら、不気味な雰囲気が漂っている。
情報によると、過去に初めて発見されたターゲットは洞窟に潜んでいるところを捕獲されたらしい。
この洞窟は、今まで地図にも載っていないものだったが、ここ最近になって地元の人間が発見したという。
洞窟は、ターゲットが何らかの目的で作ったものと情報部は睨んでいたのだが…。

「ぎゃああ!」
いきなり何か黒い影が出てくる。
よく見ると、それは野生のゴーストであった。
「何だゴーストか…。脅かすんじゃねえ。怖いだろうが…。」
辺りは真っ暗でよく見えない。
「おい、ぎんとき…先に行け。オレは後からついてくから…。ぎんとき?」
足元を見ると、ぎんときは気絶していた。
「おいー、起きろよてめえ。また野生のポケモンが出てきたらオレが襲われるだろうが。おいー。」
玲は気絶してるぎんときをモンスターボールに戻すと、先へと進んだ。
「暗いトコダメなんだよなァ〜…。でも失敗したらカネが…。ていうか、なんでオレこんな仕事してんだっけ。やっぱ転職考えよかな…。」
ズバットとかゴースとか、暗い場所に生息しているポケモンが沢山棲んでいるようだ。
だが、奥へ奥へと進むにつれ段々野生のポケモンも見かけなくなっていった。

やがて、広い場所に出た。
「こりゃあ、地底湖だなァ…。」
広い地底湖が広がっている。
その先は行き止まりのようだ。
「何もいないじゃん。何もいなかった事にして帰ろうかな…。おい、起きろぎんとき。」
ボールから出してみると、ぎんときは起きていた。
「起きてたか、帰るぞ。」
玲は荷物から「あなぬけのひも」を取り出そうとした。
『玲、何かいる…。』
ぎんときからのテレパシーが聞こえた。
「何だ?今度はオバケか?怖いから早く帰ろうぜ…。ひもひも…あった!」
「あなぬけのひも」を取り出そうとすると、目の前に何かいる事に気付いた。
目のようなものがらんらんと光っている。
「な…なんだ?」
『玲、早くひもを…。』
ぎんときは震えていた。
「お、おう…。」
玲がひもを掲げようとした時、スパッとひもが切れた。
「ああ〜!!」
切れたひもが地面に落ちる。
「ひもが…ひもが…。もう帰れない…。」
『えーんえーん。』
「何をするだァー!!許さんッ!!」
玲はつかつかと光る目の方へと近づく。
「…。」
2mはあろうかという巨体のポケモンが目を光らせて立っていた。
体は白く、太い尻尾がある。
「出たーオバケー!!」
玲とぎんときは必死で逃げた。
戦おうなどとは考えもしなかった。
「ひいっひいっ…。見た事もないポケモンだ…。何だあれ…。」
『あれがターゲットかな…。でも玲、捕まえないとカネ貰えないよ。』
「ばーか、カネより命だ。あんな怖いのと戦いたくない。」

2人はひたすら洞窟を逃げ回った。
だが、その白いポケモンは2人をゆっくりと追い詰めていた。
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え〜ふぃ ★2009.05/25(月)03:57
Mission1-2 玲vsミュウツー その2

「ひいっひいっ。」
ずっと走り続けてひたすら逃げる玲とぎんとき。
「はあはあ…、ここまで来れば…。ん?ここは。」
そこには広い地底湖が広がっていた。
「…ぐるぐる回って1周して来たのか…。」
振り返ると、さっきのポケモンが立っていた。
「うっ…。どうしよう…。」
ポケモンはゆっくり近づいてくる。
「こんな事なら、もっと美味しいもの沢山食べて来れば良かった。最後に死ぬ前に男前豆腐食べたかった…。」
『こんなトコで死にたくない…。ボクだけでも助けて…。』
(おい、聞こえてるぞぎんとき。抜け駆けはなしだぜ…。)

『貴様ら、ここに何しに来た?』
(ん?)
ターゲットは、玲にテレパシーを送ってきているようだ。
「あの…今のはあなたが…?」
『答えろ…貴様らは何故ここへ来た?』
「え…と、それはですね…。」
『よもや、私を捕獲に来たというのではあるまいな。』
玲とぎんときは必死に首を横に振った。
するとターゲットは瞬時にテレポートし、ぎんときの頭に手をあてた。
「あ…いつの間に…。」
『ほう…やはり…。』
ターゲットは強力な念力でぎんときを弾き飛ばした。
「ぎんとき・・!」
『やはり、この私を捕獲に来たのか。あの者の記憶を見させてもらった…。』
「記憶を…。」

ターゲットは語り始めた。
遠い過去に1人のトレーナーによって自分が捕獲された事を、そしてその後のいきさつを。
『今の貴様のように私を捕獲に来たトレーナーは強かった。だが、私はその者と共に生きていこうと決めた。』
「それで…?」
『私は人間のように年をとる事はない。だが長年付き添ったその者は…もういない…。』
「まさか…あんたが…?」
『そうだ。セキュリティを破壊し、皆を逃がしたのは私だ。主を失った今、自分で新たに生きていこうとした私は拘束され、あの場所に監禁されていた。』
「…。」
ターゲットはさらに話を続ける。
『我々も人間同様、命ある生き物…しかし奴ら人間に服従し、自由を奪われるのは我慢がならぬ。』
「そうか…。あんたは頭が良さそうだし、オレたちが何もしなければ他の人に危害を加える事もないだろ。」
玲は携帯を取り出してみた。
「お、電波届くじゃん。もしもし、こちら玲。ターゲットの捕獲はやめにしようと思うんですけど…。」
『ばかもん!そいつがどれだけ危険な奴か言っただろう。何としても捕まえて来い!』
ガチャ!
「あーあ、切られた…。どうやら、あんたを捕まえないとオレたちはクビらしい。」
『特殊精鋭トレーナー隊Pixie…。お前の所属か?』
ターゲットが尋ねる。
「ん?どうして分かった?」
『さっきのポケモンの記憶から、お前の事は何でも分かる。だから、お前が私を捕まえる気はない事も分かっている。』
「困ったな…。ひもも切れて帰れないし…。」
『何故、お前はPixieに入った?あのポケモンも知らないらしいな。』
すると玲はこう答えた。
「イエローブック見て電話した。それだけだよ。オレも仕事に困ってたんで…。カネなかったし…。」
『しかし、精鋭部隊に入るだけの素質があったのだろう?』
「どーだか…。やっぱ転職考えよっかな。」

ターゲットは思った。目の前の人間には悪意はない。
掴みどころのない性格だが、自分と対等に物事を話せる久しぶりに会った人間に懐かしさを感じていた。
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え〜ふぃ ★2009.05/25(月)18:37
Mission1-3 玲vsミュウツー その3

「ま…とにかく帰るよ。悪かったな…。」
『…。』
「おーい、ぎんとき。聞こえてるんだろ?死んだフリは、もうお終い。」
ぎんときはムクリと起き上がった。
『でも、どうやって帰るのさ。』
(あのぎんときというやつ…私の攻撃を受けたのに…。)
『ちょっと待て…。』
ターゲットは玲とぎんときを呼び止める。
「まだ何か…?」
『どうだ?私と戦ってみないか?』
「え?」
『私に勝てたら…お前たちをここから出してやろう。』
玲は一瞬口を閉ざしたが、話をこう続けた。
「じゃあ、その後一緒に来てくれるか?その後の事は任せてくれていい。そうだ、まだ名前を聞いてなかったな。」
『私の名はミュウツー。そう呼ばれている。』
「ミュウツーか…。ぎんとき、準備はいいか?」
『ホントにやるの?』
ぎんときは、まだ多少怯えている様子だった。
『お前、先程の私の攻撃を受けたにもかかわらず、大したダメージも負っていなかった。見かけや振る舞いによらず、かなりのタフさを持っているな…。』
『…。』
『そして、そんなポケモンと共にいるトレーナー。私はお前たちに興味を持ったというわけだ。ではいくぞ!』
ぎんときは、ミュウツーの言葉を黙って聞いていた。
『どうやら、ボクらを始末する気はないみたいだ。』
「ああ、本気でオレたちと戦いたいらしい。」
『凄い気を感じる…。』

ぎんときは、ミュウツーの凄まじい念力を感じ取ったようだ。
「よし、行ってこい、ぎんとき。」
ぎんときも戦闘態勢をとる。
ミュウツーの凄まじい念力で洞窟全体が揺れ始めた。
まるで地震でも起こったかのようである。
「勝負は一瞬だ、ぎんとき。1発にすべてを込めろ…いけ!」
ぎんときも念力でミュウツーを攻撃した。
ミュウツーも、同様に念力を放って応戦する。
2体の攻撃は、激しくぶつかり合ってはじけ飛んだ。
「念力の強さは互角か…。」
ぎんときとミュウツーの気の力がぶつかり合い、洞窟の揺れはさらに大きくなっていった。
さらに、天井も少しずつでは崩れ始め、大きな破片が地底湖に次々と落ちる。
『どうやら、我々の力にこの場所がもたぬようだ…。』
「…。」
『2人とも私につかまれ。脱出するぞ。』
「…ああ。」
2人がミュウツーにつかまると、ミュウツーはテレポートで外へと脱出した。

「ここは…?」
『洞窟の外だ。私が自分ごとお前たちを移動させた。』
「そうか…。助けられちまったな…。」
空は雲1つなく、透き通るように青い。
『…さあ、いくか。』
「え…?」
『この私を捕えに来たのだろう?』
よく見ると、腕に傷を負っている。
『さっきの攻撃、見事な一撃だった…。』
「早く手当を…。」
『私の負けだ…。捕獲するがいい…。』
ミュウツーは、それ以上何も言わなかった。
「ミュウツー…。」
玲は少しの間考えていたが、こう告げた。
「ちょっと寄るところがある。もう1回テレポート出来るか?」
『ん?』

――希少ポケモン観察保護局・局長室
「大丈夫ですかね?玲のヤツ…。」
「ああ見えて、腕は確かなトレーナーだ。きっとやってくれる。」

「どもー。ただいま戻りましたー。」
テレポートで辿り着いたのは、希少ポケモン観察保護局・局長室。
「れ、玲…。どうやって戻った!?」
「えへへ…。それより局長、ミュウツーを連れてきましたよ。」
(いいか…お前は黙っててくれるだけでいい。オレとぎんときに全て任せておきな。)
『…。』
「そ…そうか。やっぱりやってくれると思っていた。」
すると玲は、局長にある提案を持ちかける。
「えっとですね、このポケモン、私が引き取っちゃっていいですか?なんか気に入っちゃって…。」
『!?』
「ほらー、よく見るとちょっと可愛いかなー。みたいな。」
「何?そんな事が許可出来」
(ぎんとき。)
ぎんときは念力で…
「るわけあるぞ。はっ!」
「いいんですか?じゃあ、この書類に印鑑を。私はもう押してます。」
「バカな、そんな事が出来るわけ…なんだ体が勝手に…。」
(局長、ゴメンなさいっ!)
局長は印鑑を押してしまった。
「希少ポケモン引き取り証明書 貴殿に希少ポケモン1種、ミュウツーの引き取りを許可する。ありがとうございましたー。カネもちゃんと口座にお願いしますよ。」
(ほれ、もっかい頼む。)
玲たちはミュウツーのテレポートでまたどこかに消えた。
「き…消えた…。あいつ、自分が何やってるのか分かってるのか全く…。」


「ふー、もう大丈夫。ほれ、手当してやるよ。」
『それには及ばぬ。』
ミュウツーが念力を腕に集中すると、みるみる腕の傷が完治していった。
「へー、すっげえ事出来んだなァ。」
ぎんときも感心している。
『…。』
ミュウツーは、何か考え事をしているらしい。
「どうした?他の仲間の事が気になるのか?」
『…どうして分かった?』
「さあ、何となく…。もしかしたらオレもエスパーなのかもな…。」
『…。』
「心配しなくていい。ちょっと変わったヤツらばっかりだけど、あいつらなら大丈夫だ。」

こうして玲のミュウツー捕獲任務は終了した。
しかし、まだ世界各地には多数の希少ポケモンが散り散りになっている。
彼らとPixieとの戦いは、まだまだこれからである。
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え〜ふぃ ☆2009.05/27(水)00:24
Mission2-1 ジェミニvsスイクン その1

Pixieの1人、ジェミニはJ地方の湖に来ていた。
情報ではこの地方の湖で見た事のないポケモンの目撃が相次いでいる。
「少しここで休憩しよっか。」
持っているモンスターボールからブラッキーのドーカッサを出す。
「また寝てる。よく寝られるな…。でもいい天気だ。」
森林の中に大きな湖、空も晴れ渡っていて心地良い。
のどかな風景に、ついうとうとしてしまいそうな気分になる。

「ん…寝ちまったのか…。」
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
あたりはすっかり暗くなっている。
「お、ドーカッサ、起きてたのか…。どうした?」
ドーカッサは日頃は寝ている事が多いが、周囲の気配を敏感に感じ取る。
「お前が起きたって事は、近くに何かいるって事か。」
ドーカッサは湖の方へと歩いて行く。
ジェミニもついて行ってみた。
今夜は月明かりが照っていて夜でもそれなりに明るかった。
湖の向こうに、森が続いておりその奥には山があるのもはっきりと見える。

湖の遠い水面をよく見てみると、何か水の上に立っているように見えた。
水の上に立っている、奇妙な表現だが、ジェミニたちにはそう見えたのだ。
湖に満月が移っており、その水面の上に立っている、今までに見た事もないもの…。
「もしかしたら…あれが。」
近づいてみたいが、近くにボートはないし泳げるポケモンも持ってはいなかった。
ちょうど湖の中央あたりに静かにずっと立っている。
とりあえず湖を迂回し、どこか近づける場所を探そうとした。


湖を迂回してすでに数十分。まだ湖から動く様子はない。
歩いていると、足元に落ちていた小枝を踏んでしまったようだ、パキッと小さな音がした。
湖の生物はこちらを向いた。
(気付かれたのか…?)
その生物はその場を動かず、こちらをじっと見ている。
耳が非常にいいらしい。ジェミニたちと謎の生物との距離は200mはあると思われるが、音がハッキリ聞こえていたのだ。
「…。」
ジェミニたちも、その場をじっと動かない事にした。
湖の生物も、相変わらずその場を動いてはいない。

(どうする…。)
ジェミニが考えていると、その生物が少しずつ近づき始めた。
(こっちに来る…。)
引き続き奇妙な表現だが、水の上をゆっくり歩いてくる。
やがて、その姿がハッキリと見え始めた。
(間違いない、オレが探しているターゲット…スイクンだ。)

やがて、ジェミニの目の前までやってきた。
スイクンに敵意は感じられない。
情報では、スイクンは穏やかな性格であり、自ら人間を襲う事はしないらしい。
ジェミニも生まれて初めてスイクンを見たが、その鮮やかな姿に少しの間見惚れていた。
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え〜ふぃ ★2009.05/27(水)00:30
Mission2-2 ジェミニvsスイクン その2

ジェミニはスイクンに手を近付けて触れてみた。
水のように冷たい。
スイクンは少しも動く様子はない。
どうやらジェミニを敵とは認識していないようである。
ジェミニの目的は、このスイクンの保護及び捕獲である。
しかし、このスイクンも保護局での暮らしより、こうして自然の中で野生のポケモンとして暮らした方がいいのではないか、ふとそう思った。

スイクンから手を離すジェミニ。
するとスイクンは、ジェミニから離れ湖に向かって大きく吠えた。
(な、何だ…?)
滝が落ちるような音をたてて湖が割れていく。
信じられないような光景であった。
湖の中央に1本の道が出来あがっている。
次にスイクンは、冷たい風を起こしジェミニとドーカッサを舞い上げて自分の背中に乗せた。
「お・・おい…!」
スイクンは勢いよく湖に出来た道に飛び降り、凄まじいスピードで道を駆けていく。
湖の中央部分に辿り着いたかと思うと、スイクンは立ち止った。
ジェミニたちはスイクンから降り、話しかけてみた。
「まさか…ここで戦おうって事か…?」

スイクンは咆哮し、戦闘態勢をとった。
スイクンは、ジェミニの戦いにやってきたという意思を感じ取っていたのかもしれない。
「どうやらその気らしいな…。ドーカッサ、準備はいいか?」
戦場は1本の細長い道で壁は水、ドーカッサの行動出来る範囲は限られている。
しかしそれは、スイクンとて同じ事であろう。
「よし、こっちから仕掛けよう。」
ドーカッサは頷き、「あくのはどう」を放った。
攻撃は決まったが、ダメージはあまり受けていないようである。
(ドーカッサの攻撃を受けても、平然としてやがる…。あのスイクン、やるな…。)
スイクンも攻撃の態勢をとる。
周りの水の壁から大量の水を集め出した。
「あれは!」
集めた大量の水を一気に撃ち出すスイクン。
攻撃を受けたドーカッサは大きく吹き飛ばされる。

(何てやつだ…。この湖全体が、スイクンの武器ってわけか…。それに、この場所ではあんな攻撃はかわしにくい…。)
吹き飛ばされたドーカッサは、すぐにジェミニのそばに戻ってきた。
まだ余力は十分残っているようである。
(とはいえ、あんな攻撃をもう1回受けたら…ドーカッサもさすがにもたないだろうな…。)

目の前の相手、水を自在にあやつるスイクンが予想を大きく超える強さを持つ事を認識したジェミニとドーカッサ。
彼らに勝算はあるのだろうか…?
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え〜ふぃ ☆2009.05/27(水)00:25
Mission2-3 ジェミニvsスイクン その3

スイクンは、再度大量の水を集め始める。
「ドーカッサ、あそこだ。」
ドーカッサは水の集まっている中心部を狙って攻撃する。
水は弾かれ、スイクンに命中した。
ドーカッサの攻撃を2発受けたスイクンは、少しよろめく。
「もう同じ手は食わない。」
するとスイクンは、先程起こした冷たい風を起こし始めた。
いや、冷たいというよりは凍えるような烈風である。
左右の水の壁が一瞬に凍りついてしまった。
(何をする気だ…?)
今度はドーカッサに向かって風を起こし始めた。物凄い冷気である。
凄まじい風だが、ドーカッサは必死に耐えている。
しかし、風が強くて身動きが取れなくなっていた。
同時に、体力も徐々に失われていく。

「こちらもやれるだけ反撃するしかない…!」
ドーカッサも凍える体で必死に反撃する。
スイクンの方も、ドーカッサの攻撃を受けながら攻撃を続けているため、かなり疲労してきたようだ。
もはや、どちらが先に力尽きるかの勝負となりそうである。
やがて、スイクンの体力が消耗してきたせいか、凍える風による攻撃はおさまった。
スイクンの息がかなり切れている。
「よし、これで決めるぞ。」
ドーカッサに最後の攻撃を指示しようとしたジェミニ。
すると、周りの氷の壁が割れ始めた。
割れた個所からは、水が流れ出している。
「これは…。」
スイクンの力が弱ってきたため、壁を作りだす能力の効果が消えつつあったのだ。
「もうすぐ水が溢れるな…。いったん戻れ。」
ボールにドーカッサを戻すジェミニ。
そして一気に岸へと走り始めた。
「ん?」
後ろを振り返ると、スイクンはその場を動かず立っていた。
疲労で動けなかったのだろう。
「スイク…」
スイクンの方へ引き返そうとすると、パリンと氷が一気に割れる音がした。
湖の表面を覆っていた氷が一気に溶けたのだ。
あっという間にジェミニとスイクンは水に飲み込まれた。


数分後…。
「ぷはー、何とか生きてる…。」
そしてどうにか岸まで辿り着く。
(あの時、とっさに捕まえなかったらどうなってたか…。もしかしたら溺れてたかもしれない。)
ジェミニの手には、スイクンの入ったモンスターボールがあった。
「さ…て…と。」
ボールからスイクンを出した。
「一応、傷薬くらいは持ってるから…。」
スイクンの手当てをしながら、ジェミニは語りかける。
「さっきの戦い、湖をずっとあやつりながら戦ってたんだろう?だから、ずっと気力を放出し続けていた…。そうなんだろ…。」
スイクンの眼がわずかに大きく開いた。
このトレーナーがその事に気づいてた事が意外だったのだろう。
「さ…て。これでよし…と。」
ジェミニはボールからドーカッサを出すと、スイクンにまた語りかけた。

「今回はおあいこだ。だから、今はお前を逃がすよ。」
スイクンも、ジェミニの方をじっと見ていた。
「けど今度出会った時は…そん時は今度こそ負かしてやるよ。」
その時、ジェミニの携帯がなった。
どうやら、希少ポケモン観察保護局からのようだ。
「もしもし…ええ・・ええ…。ここにスイクンはいないようです。…はい、分かりました。」
ジェミニは携帯を切った。
「さ、もう行きなよ。さっきの約束、忘れるなよ。」
今までずっと無表情なスイクンであったが、その言葉を聞いた時少しだけ微笑んだようにジェミニには見えた。

スイクンは、後ろを振り返り物凄いスピードで走って行った。
少し見送ろうとしたが、すでに姿はどこにも見えなかった。
「せっかちなやつだ…。…もう夜が明けるな…。」

山の奥から日の出が見え始めた。
ジェミニの気分は、昇りゆく朝日のように清々しかった。
次に彼らが出会うのは、いつの日になるのであろうか…。
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え〜ふぃ ★2009.05/29(金)00:22
Mission3-1 チロルvsサンダー その1

SシティT発電所。
ここに伝説のポケモンの1つ、サンダーとそれに対峙するトレーナー・チロルの姿があった。
「すげぇ!あれがサンダー…。」
凄まじい電撃でチロルのパートナーであるサンダースのスピッツに攻撃してくる。
「負けるな、スピッツ!こっちも反撃!」
スピッツも負けじと電撃で反撃する。
「そうだ、いけースピッツ!…ぎゃっ!」
時々飛び散った電気の欠片がチロルに当たる。
こんな調子の戦いが、すでに半時間続いていた。
「先にこっちが感電死しそう…。」

過去の記録によるとサンダーは、とある発電所で偶然発見され捕獲されたらしい。
性格は攻撃的だが、自分から他の生物に危害を加える事はないという。
尤も、今回は先にサンダーを見つけるや否や攻撃をしかけてしまったため、サンダーはかなり怒っているようだが…。
が、そんな事はチロルは全く気付いていないようである。

ここSシティT発電所は、世界でも有数の発電所の並ぶ都市である。
ここ数日、何かが原因で停電が相次ぐという事件が続発していた。
その原因が、今チロルが戦っているサンダーだったのである。
サンダーは、保護局を抜け出し野生が戻ってきたため、発電所から電気エネルギーを摂取していたのだ。
サンダーとサンダース、両者とも電気ポケモンであるため、勝負がなかなかつかない拮抗状態にあった。
しかし、サンダーの方が体力では上回っているらしく、次第に押されていく。
「ああ…まずい…。」
チロルのスピッツはかなり鍛えられたポケモンであるが、せっかちなのが欠点で戦いが長引くと集中力が途切れる事が多かった。
「しょうがない、1回戻れスピッツ!」
しかし、スピッツはボールに戻ろうとしない。
「何してんの!このままじゃあやられるでしょ!」
サンダーは、スピッツに向けて雷を落としてきた。
「あ、危ない…!」
急いでスピッツの元へ走るチロル。
物凄い落雷の音がした。
スピッツをかばうチロル。
「し…しびれた…〜。」
その場にばったり倒れこむチロル。
それを見たサンダーは、勝ち誇ったように空に飛んで行った。
『チロル、しっかりしてよ…。チロル…。』


「ん〜…はっ!」
チロルが目を覚ましたのは、サンダーが飛び立ってから1時間くらいしての事だった。
「あ〜…死ぬかと思った。これを着てなかったら、どうなってたか…。」
チロルは耐電用の特殊なスーツを服の下に着込んでいたので命が助かったのだ。
並の人間がサンダーの雷をまともに受けたら、おそらく助からないだろう。
「スピッツ…相手は強敵なんだから、もうちょっと落ち着いて戦わないと…。あんた体力には自信がないでしょ?」
『でもさー、だから早く終わらせたいんじゃん…。それに、何も考えずに攻撃しろーなんて言ったの、チロルじゃん。』
「あれ?そーだっけ…。ごめーん。…でも、マジに強いよあいつ…。勝てるかなあ…。」

チロルも同じ電気ポケモン使いとして、サンダーとの戦いには自信があったのだが、そう簡単にはいかないらしい。
チロルたちに、次なる秘策はあるのか…?
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え〜ふぃ ☆2009.05/29(金)00:19
Mission3-2 チロルvsサンダー その2

「もしもし。」
「こちら希少ポケモン観察保護局。どうだ?サンダーは見つかったか…?」
「はい…見つけた事は見つけたのですが…逃げられてしまいました…。」
「そうか…。何なら…誰か応援を送ろうか…?相手は伝説のポケモンだ。一筋縄では」
「いいえ!私1人で頑張ります!失礼します!」

「はあ…。」
サンダーの捕獲に失敗し、少し落ち込んでいるチロル。
スピッツも、心配げな表情だ。
チロルは若干11歳、Pixieでも最も若いトレーナーだった。
Pixieとしては、彼女の類まれな才能を見込んで入隊させたのだが…。

――数日前。

「私、行きます!どうしても伝説のポケモンを見てみたいんです!」
「しかし、いくらなんでも危険過ぎる…。確かに君の素質は認めるが…。今回ばかりは…。」
「いいんじゃね?行かせてやれよ…。」
そう言って、出動を推したのは玲だったのだが…。
「玲さん…。」
「子供は大人の見てないトコで大きくなるってモンよ。なあ?」
チロルは頷いた。
「…分かった。そこまで言うなら…。でも、無理だけはするなよ。」
「はい!ありがとうございます。」


「おっと、さっきのはオレのおかげだから、今度豆腐おごれよ豆腐。」
「え〜、子供におごらせるんですか?ていうか、どんだけ豆腐食べたいんですか?」
「あはははは、そんじゃな。」
「何て人なの…。」

―――

(はあ…、これじゃみんなに会わせる顔がないよう…。)
チロルは、Sシティのポケモンセンターでスピッツの治療を待っているところだった。
(やっぱり、私には無理なのかな…。)
相手は伝説のポケモン。
過去に達人と言われた一流のトレーナーたちが、やっとの事で捕獲したと言われる強豪たちである。
その事はチロルもよく分かっていたつもりだった。

うつむいて座っていると、何やらあたりが騒がしい。
気が付いてみると、まだ昼なのに薄暗い。停電だろうか。
「どうしたんですか?」
近くにいたセンターの看護婦さんはこう答えた。
「またらしいんです。この頃見た事もない鳥ポケモンが出てきて、それが原因で停電が起こるって噂があって…。」
「それ、サンダーです。」
「サンダー…?あの伝説の…?でも保護局にいるんじゃ…。」
「それが逃げ出したんです、私はサンダーを捕まえに来て…それで…。」
「そうだったんですか…。もうあなたのポケモンは回復しているはず。早く行って下さい!」


「スピッツ、もう体はいいの?」
スピッツは笑って頷いた。
「よし、今度は気を引き締めていこう!」
さっきまで落ち込んでいたチロルだが、立ち直りも早いのが彼女の長所でもあった。

先日戦った発電所の近くの、別の発電機にサンダーが止まっていた。
「いた!よーし、今度こそ!サンダー、降りて来ーい!」
チロルの声に気付いたサンダー。
チロルたちを、すでに敵と認識していたのだろう、すぐさま物凄いスピードで急降下して来た。
「来た…!」

次回、チロルvsサンダー最終決戦。
勝敗や如何に?
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え〜ふぃ ★2009.05/29(金)00:27
Mission3-3 チロルvsサンダー その3

「いけ!スピッツ!」
サンダーとスピッツの凄まじい雷撃による戦いが続いていた。

「スピッツ、動きを良く見て…。素早さならあんたに勝てるヤツなんかいないし、絶対に見切れる!」
『早く倒れてくんないかな…。あいつホントにしぶといよ…。』
スピッツは焦る気持ちを抑え、チロルは全神経をサンダーの動きに集中して戦っていた。

(はっ!…あの動きは…。前にも確か…。)
サンダーは風を起こすかのように激しく羽ばたきだした。
「スピッツ、右に避けて!雷が落ちるよ。」
スピッツは、何か分からなかったがチロルの指示通りに動いた。
その後、すぐにサンダーの雷が落ちる。
まともに受けていれば一撃でやられていただろう。
『チロル、どうして分かったの?』
「えへへ…ちょっとね…。」

――

「いいか、どんな強い奴にも必ず弱点はあるんだ。敵の動きをよく観察してればそれが見えてくる。」
「動き…ですか?」
「例えば強力な攻撃を加えようとすれば、そこには必ず隙が出来る。力だけでなく、神経も集中力も全て出し切って体が一時的に硬直するからだ。」

――

スピッツはチロルの指示で電撃を間髪入れず浴びせかける。
スキをつかれたサンダーは交わす間もなく攻撃を受ける。
「やった!」

――

「あとは…敵の癖とかもあるかもな。」
「え…?」
「ま…こいつはよっぽどの達人じゃあなきゃあ見つけられないだろうが…。けど、もしそんなヤツいたら最強だろうけど。」
「癖ですか…。玲さんは、そんな事出来るんですか?」
「…さあな。さ、早く行けよ。おっと、さっきのはオレのおかげだから、今度豆腐おごれよ豆腐。」

――

(分かる…サンダーの次の行動が…。)
サンダーは大きく迂回し始めた。
これは次の攻撃の力を溜めるための予備動作だった。
「スピッツ・・長引いてるけど、しっかり集中して!」
スピッツもかなり息切れしているが、戦いには集中出来ている。
(次は10まんボルトが来る。こっちはそれを上回る攻撃が出来れば!)

天気は曇天。
曇っている時、雷を呼べるのがスピッツの得意技だった。
サンダーは10まんボルトを放ってくる。
「負けるなスピッツ!雷を呼べー!!」
スピッツは10まんボルトを受けながらも、力を振り絞って雷を呼ぶ。
攻撃に集中していたサンダーの真上に落ち、ついにサンダーは地へと落ちていった。
「よし、今度こそ捕まえる!」
チロルはモンスターボールを投げた。
サンダーはボールに吸い込まれ、やがて動かなくなる。

「…や…やったあ!!」
『おめでとう、チロル!』
「よくガンバったね、スピッツ。」

傷ついたスピッツを治療するために、先程いたポケモンセンターに戻ったチロル。
「あ、さっきの看護婦さん。」
「無事でしたか、良かった…。そうだ、さっき保護局の人から連絡があって…。」

「あー、もしもし。やはり気になってもう1度連絡したのだが…どうだ?」
チロルは少しの間、黙っていた。
「どうした、返事をしろ…。聞こえてるのか?」
チロルはじらすために黙っていたのだが、ようやく
「はい、捕まえましたよ、サンダーを。」
「何…。そうか。」
「やったんですね、チロルさん!」
「ぶいっ!」

チロルのサンダー捕獲任務はこうして幕を閉じた。
そしてチロルはまだ知らなかった。
自身の類まれな才能を、そして自分が一番最初に任務遂行を果たしていた事も。
だがその事実は、これからすぐに知る事になるのだが。
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え〜ふぃ ★2009.06/01(月)00:44
Mission4-1 リク編1 慕情

その日は三日月の夜だった。
「やっと現れたか…。」
伝説ポケモンの1つ、クレセリアの情報を受けたリクはM島にやってきていた。
何もない、ただ広い草原が広がる地。
月明かりを受け、クレセリアはほのかに輝いているように見えた。
(よし、出て来いグロウリー。)
リクは静かにガブリアスのグロウリーを出す。
こちらに気づいていないクレセリアに、こちらから奇襲をかけようとしたのだ。
「いつものように、速攻で終わらせてくれよ。早く帰って寝たいんだからな。」
リクは、クレセリアがなかなか見つからず、半分は寝て待っていた。
今もさっきまで寝ていたため、いつも寝起きの悪いリクは多少ご機嫌斜めのようだ。

グロウリーは、ゆっくりとクレセリアに近づいていく。
やがて、あと10mというところまで来た。
ふと、後ろを振り向くクレセリア。
「気付かれたぞ、こうなったら攻撃あるのみ!」
グロウリーは、クレセリアに素早く向かって行った。
そして、鋭い一撃を浴びせかける。
不意打ちを受けたクレセリアは、グロウリーの強力な一撃によろめく。
「よし、いいぞ!」
グロウリーは、間髪入れず追撃に出る。
クレセリアも態勢を素早く立て直し、グロウリーの攻撃に備えている。
グロウリーは、その鋭い爪でクレセリアを攻撃しようとした。

『!?』
その時、何故かグロウリーは攻撃の手を止めた。
そのまま、グロウリーは全く動かない。
「…?どうしたグロウリー?」
グロウリーの手は、あと数cmでクレセリアの顔というところで止まったままだ。
「何やってるグロウリー!」
しかし、グロウリーはリクの言葉には従わず、そのまま手を降ろしてしまった。
クレセリアは、攻撃をやめたグロウリーを念力で弾き飛ばす。
グロウリーは、リクのところまで飛ばされてしまった。
「一体どういう事だ?グロウリーがこんな簡単に…。」
倒れこんだグロウリーは、立ち上がろうとはしなかった。


「おい、しっかりしろ!グロウリー!」
はっと我に帰ったグロウリーは、ゆっくりと起き上がった。
体には少し痛みがあるだけで、大したダメージは受けていないようだ。
だが、どこか元気がない感じだ。
さっきまで、どこにも怪我もなかったし病気にもなっていない。
いつの間にか、クレセリアは姿を消していた。
「お前らしくもないな…。ま、気にするなよ。今度は頼むぜ。」
グロウリーは静かに頷き、ボールに戻った。
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え〜ふぃ ☆2009.06/01(月)00:21
Mission4-2 リク編2 三日月の舞

翌日。
その日も三日月が見える夜だった。
昨日と同じ場所にクレセリアがいた。
どこか、遠いところを眺めているようだ。
ここに今、何故クレセリアがいるのかは、リクには分からなかった。

リクは、クレセリアに悟られないようにグロウリーをボールから出す。
「今日は大丈夫だな、グロウリー?」
グロウリーはリクの言葉に頷くが、昨日同様どこか元気がない。
「…。」
グロウリーを励ますリクだったが、何となくグロウリーの気持ちに気が付き始めてはいた。
「よし、行ってこい。無理はするなよ。」
その言葉を聞いたグロウリーは、いつもの鋭い目つきに変わる。

グロウリーは、昨日同様に奇襲に出ようとする。
するとクレセリアは、グロウリーとリクに気がついたのか後ろを振り向いた。
リクたちとクレセリアとの距離は、50mほど離れていた。
木陰に隠れていて、クレセリアの方からは姿は見えないはずだったのだが…。
『…。』
グロウリーは、一瞬攻撃をためらう。
だが、やはりクレセリアに攻撃をかける事を決意し、そのまま向かって行った。

グロウリーは、リクと共に数々の戦いを戦い抜いたポケモンであった。
他のPixie隊員のポケモンたちと同様、実力は確かなポケモンである。
特にパワーとスピードには定評があり、間合いをつめての接近戦では無敵。
凄まじいスピードでクレセリアに突進するグロウリー。
クレセリアは、その場を全く動かない。

2体の距離があと10mと迫ったところで、クレセリアが動いた。
何かを感じ取ったグロウリーは、その場で足を止める。
するとクレセリアは、ゆっくりとその場を飛び回った。
まるで、宙を舞っているように見える。
背後の三日月と星空と重なり、とても美しい。
(あれは…クレセリアが踊っている…?)

過去の記録によると、クレセリアは争う事を好まない性格であり、メスしか存在しないという珍しい種類である。
三日月の光を受けて羽を美しく輝かせ、舞うように空を飛ぶという記録が残されている。
クレセリアの羽には病を治す不思議な力があるとされ、慈愛・看護の神とも言われている。

グロウリーを目の前にしても、クレセリアは動じず舞い続けている。
リクも、グロウリーの元へと歩み寄る。
クレセリアが、何故観察保護局から逃げ出したのかはリクには分からかった。
捕獲の指令を受けてここまでやってきたのだが、クレセリアと戦う気はすでになくなっていた。
しかし、クレセリアが何故逃げ出したのか、それが気になっていた。

「クレセリア…。」
リクは、静かにクレセリアに語りかける。
クレセリアは舞を止め、リクたちの方を見つめる。
「何故…お前が…みんなが逃げ出したのか…教えてくれないか?」
リクの言葉を聞いたクレセリアは、静かに目を閉じ、念力をリクたちに送る。
(これは…?)
クレセリアの記憶だろうか。
クレセリアの記憶が、リクたちの脳に働きかけて幻影を見せている。

ミュウツーとレックウザの2体が施設のセキュリティを破壊し、多数のポケモンたちがその場から去っている光景が見えた。
その中にクレセリアもいた。
だが、他のポケモンたちがいなくなってしまった後も、クレセリアだけは残っていた。
クレセリアは、ただ1人残ってしまったため、施設を破壊しポケモンたちを逃がした犯人だと決めつけられ追い出されていたのだ。

(そうだったのか…。こんな事オレたちも聞いていなかった…。)
それでもクレセリアは、リクと攻撃をためらったグロウリーに対して敵意を持つ事はなかった。
「すまなかったな…クレセリア。」
グロウリーは、クレセリアに近づいた。
すると、鳴き声で何かを語りかけている。
クレセリアも、グロウリーの言葉に耳を傾けている…リクにはそういう風に見えた。

やがて、リクの方を振り向くグロウリー。
「どうした?」
するとクレセリアは、リクの目の前に近づき、頭を傾け始めた。
まるで、頭を下げているように見える。
「お前…。」
リクは、クレセリアの頭に触れる。
「…一緒に行きたいのか…?」
クレセリアの羽が、ぴかぴかと輝く。
「お前の事は、オレとグロウリーが守ってやるよ。なあ?」
グロウリーも納得したようだ。

ボールにクレセリアを回収するリク。
「でも、施設には連れて行けないな…。これじゃあカネも…。ま、いっか。…さあ、オレたちも行こうぜ。」
リクがクレセリアと一緒に行こうと思ったのは、他ならぬクレセリアとグロウリーのためであった。

世界各地には、まだ多数の伝説ポケモンが散らばっている。
この先リクは、クレセリアと共にどんな冒険をしていくのだろうか…。
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え〜ふぃ ★2009.06/01(月)00:51
おまけストーリー1 バチで太鼓以外のものを叩くと、いつか自分にバチが当たる

「暇だなー、ゲーセンにでも行くか。」
リクは、退屈しのぎに久しぶりにゲームセンターに向かった。
すると、入口に見覚えのある顔が。
「あらー?リクさんじゃないですか?どーしたんです?」
玲だった。
「あんたこそ…。まだ何も捕まえてないんでしょ?」
「いやー、体がダルくて…。でもゲームで遊びたいかなー、みたいな。」
「あんた、病気で学校休んでもゲームとかやってて後で親とかに怒られるタイプだね、絶対。」

中に入る2人。UFOキャッチャー、格闘ゲーム、メダルゲーム等々沢山ある。
今日は平日で、今は昼間なので中にいるのは小さな子連れの母子を何人かみかけるだけで、あとは玲とリクだけだった。
「さって…久々にアレでもやるかな。」
そう言いながら玲が向かったのは、音楽ゲーム「太鼓の廃人12」だった。
「太鼓ゲームか…。でも廃人なんて…あったっけ?」
「良かったら、一緒にどうです?」
玲は200円入れた。
『太鼓を叩いてスタート☆太鼓を叩いてスタート☆』
2人は面を叩いてゲームを始める。
『参加だドン♪』
「曲はどうするかな…と。」
コインを入れた後、2分以内に曲を決める事になっている。
「あんな曲いいな、こんな曲いいな、あんな曲こんな曲いーっぱいあーるっけどー。みたいなー。」
何かドラえもんの歌風に歌いながら曲を選ぶ玲。
「早くして下さいよ…じれったい。」
フチをカンカン叩いてる玲を見ていたら、何だかイライラしてきたリク。
思わず、面を叩いてしまったのだが…。

1曲目『エロエロアタクシ』

「な…何じゃこりゃ?何の曲だよ?」
「あ〜、よりによってこんな曲選んじゃって…。わたしゃその横の『創聖のアクエリアス』やりたかったのになァ…。」
「いや、じゃあ最初からそうしてよ。イライラしてつい叩いちゃったじゃん…。」
「今さら遅い…。さ、やりますよ。」

『たったかたったかたた・・た どんどこどんどこどんどこどんどこ でん! ででん! ででん! で てて・・てて み〜つけたあ〜♪』

【ドン ドン ドン ドン】
玲は、いつもの眠そうな目つきで太鼓を叩いている。
しかしリクは…
(恥ずかしい歌詞…。よくこんな曲入れてるなこのゲーム…。)

【ドン ドン ドン ドド・ン ドン ドン ドン ドド・ン ドン ドン ドン ドド・ン ドド・ン ドド・ン】
『コンビニ行って 週刊雑誌の TOラヴRU グラビア 閉じ込みページも(見てますよー 見てますよー)』
(く…く…。)
あまりにアレな歌詞に、ゲームに集中出来ないリク。
「どーしましたァー?さっきから不可ばっかり続いてますよ。ほら、しっかり叩いて。」
リクは奥手な性格なので、こういうのは苦手らしい。
玲はそんな事知らず気にせず、叩いている。

【カカッ カカッ カカッ カカッ カ・・カ】
『脱げ脱げ〜 脱げ脱げ〜 …(だーいすきだよー)』
(ダメだ、限界だ…!)
思わずバチを放り捨ててしまうリク。
「…?どうしかましたかァ?」
「はーっ、はーっ…。いや、あんた…。よくこんな曲で平然としてられるなあ…。」
リクは手に膝をついて立っている。
「何言ってるんです?あんたもう大人でしょ?今時高校生でもその手の本くらい部屋にいくらでも隠し持ってまさあ。こんなんで動揺してちゃあ…」
「てか、てめえも16だろ?高校生が何ナマ言ってんだよ?」
「ああオレ、ホントは26ですから。履歴書も、つい魔が差して年ゴマしちゃいました、みたいな。」
「10歳も年ゴマしてんじゃねえよ。ていうか、オレより年上だったのかよ。」
「いやね、オレ結構高校生とか、たまに女に間違われる事あるんスよ。だからいいかなーみたいな。」
「全っ然よくねえから。普通に法律違反だから。」
【ドドカ ドドカ ドドカ ドドカ ドドカ ドドカ ドドカ ドドド…】
『さあ今夜も、盛り上がって…イク ぜー!』
(○×△☆□)
リクは、もう汗だくである。
「よーし終わりィー。」

得点結果 玲 200/200 100% リク 57/200 28%

「ま、こんなモンかな…。てか、変な事考えてるから集中出来んのですよ。」
リクは、顔を上げて玲の方を見た。

「あんた、鼻血出てるよー。あんたこそ何想像してたんだよ。」
「ああ〜、こりゃ昨日食べたアルフォートが原因かなァ。つい5箱も食べちゃって。しかもビターで、すんげえ糖分高かったし、みたいな。」
「関係ねえだろ、そんなの。今ぜってえ何かを想像してたよね?てかこの小説、Pixieの良い子も読んでんだぞコラ。こんな生々しい曲かけてんじゃあねえ!」
「だって選んだのリクさんでしょ?ボク曲選んでただけなんだもん、みたいな。おっと、次の曲を決めないと。」
「今度は、オレが選ぶから…。」
「はいはい。」
リクは、フチを叩いて曲を選ぶ。
「お、これなんだ?」
「あー、そりゃアニメ『銀玉』の主題歌ですね。それ行きます?」

2曲目『豚天』

【ドン ドン ドンドンドンドン ドンカッ ドドカッ ドンカッ ドドカッ】
(今度はまともそうな曲だ…よかった…。)

「お、リクさんやりますね…豚天は結構難しいんですよ。」
スコアを見ると、リクの方が少し勝っていた。
「でも、後半からが本番ですから。」

【ドンカッ ドドカッ ドンカッ ドドカッ ドンカッ ドンカッ ドドカッ…】
『豚天の肉を からりからりと 揚げる彼女は 汗にまみれてる ので 僕は ハンカチ取り出して 汗を 拭う』
「何だよ、この歌詞。どんなヤツを歌った歌詞だよ?どんだけ豚天に一生懸命なんだよ?」
「『銀玉』知らないんですか?宇宙人に支配された町で暮らしてる侍が出てくるギャグアニメです。」
「いや中華料理と侍、関係ねえし。」


そして…
「はあ…何か疲れた…。」
「いやあ、楽しかったです。またお願いしますよ。」
その時だった。
リクたちに緊急の連絡が入る。
「おお、リクか…。クレセリアの情報が入った。ただちにM島へ向かってくれたまえ。玲、お前もいつまでも遊んどらんで、早くX地方へ行け、分かったな。」

「はァ…だるい…。」
2人は口を揃えて言った。
「お互い、大変ですね。」
「全くだ…。伝説のポケモンを捕まえないとカネ一銭も出さないとかありかよ…。」
「はあーあ…やっぱ転職考えよっかな…。」


リクがクレセリアを捕獲する36時間ほど前の出来事だった。
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え〜ふぃ ★2009.06/07(日)23:22
Mission5-1 ポケピン編1 疑惑

リクがクレセリアを捕獲してから12時間後。
希少ポケモン観察保護局。

「何?ではミュウツーとレックウザの仕業だったというのか?」
「リクの報告によれば、そうらしいです。」
「ううむ…。」

リクが送ってきた1枚のDISC。
それは、クレセリアの記憶を念写したものだった。

「信じられん…。まさかこんな事が…。」
「我々も、まさかと思っていました。だがクレセリアがそんな事をするはずはないと…。」
局長とPixieの最高司令官・武麗も驚愕の映像だった。
レックウザが環境コントロールシステムを破壊し、ミュウツーはコンピュータの対応に追いついていないセキュリティを破壊したのだ。
「これからどうします、局長?現在捕獲出来ているのは、まだチロルのサンダー、リクのクレセリアの2体のみ…。我々Pixieだけでヤツらに対抗出来るでしょうか?」
「すでにPixieの者には指令を送り、現地に向かわせている。だがいくら彼らでも、やはり簡単にはいかぬだろう…。」
事態は一刻を争う。
施設から逃走した伝説ポケモンは全部で30種類にも及ぶ。
そのうちの、まだ2匹しか捕まえられていなかった。
すでに事件から1週間が経過している。
施設で暮らしていた伝説ポケモンたちは、時間が経つにつれ次第に野性を取り戻し、強力な力を呼び戻す事さえある危険な存在でもあった。

「私の方も、隠れた優秀なトレーナーを探してみます。」
「ところで…このレックウザを捕まえるトレーナーは誰にした、武麗?」
「レックウザはポケピンが適任かと存じます。彼ほどドラゴンポケモンを知り尽くしている者はおらぬでしょう。」
「うむ…。」

コンコン。
局長室のドアをノックする音がした。
「入りたまえ。」
「失礼致します。」
2人の若い男女が入ってきた。
ここ希少ポケモン観察局には、数百名という大人数の優秀な人材が集められている。
武麗も局長も、局員1人1人の顔を覚えてはいるが、この2人はあまり見かけない顔だ…と思ったのだが…。
「何かね?」
「伝説のポケモンの捕獲、我々にも手伝わせて下さい。」
「何?君たち、伝説のポケモンがどれほど危険な存在か分かっているだろう?」
武麗が2人に問いかける。
「私たちも、伝説のポケモンと同等に戦う力と自信があります。」
そう言ったのは女の方だった。
2人とも、年齢は10代後半から20代前半くらいだろうか。
また、家族なのか顔もよく似ている。
局長は、少々不審にも思っていたが…。
「そこまで言うなら、武麗。少し彼らを試してみたまえ。ちょうど今日は玲も呼んである。ポケピンも今からレックウザ捕獲を直々に伝えるため、ここに呼んでおこう。」
「分かりました。では2人とも付いてきなさい。」
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え〜ふぃ ☆2009.06/06(土)21:11
Mission5-2  ポケピン編2 正体

玲が局長に会ったのは、武麗が2人を連れて外に出て少し経ってからの事だった。
「何ですか?」
「Pixie設立当初からいる君には、是非協力してもらわねばならん。」
「関係ないですね。」
玲は断る言葉を返す。
「伝説ポケモンなんて関係ねえし。」
「このままヤツらを放っておけば、2年前のあの大戦以上の被害が世界に及ぶだろう…。」
「…もう帰りますね。」
玲はそう言い残すと、局長室を黙って出た。
(玲…。)

「何だろ…ボクに用事って…。」
急いで自転車をこいで観察局に向かっているのは、ポケピンという少年。
彼は、ドラゴンポケモンに関して優れた知識を持っており、それを買われてPixieにスカウトされた。
「なんだか、曇ってきたなァ…。」
空は灰色に曇っている。
風も少し強くなってきたようだ。


――希少ポケモン観察局 約500m離れた草原地帯
「ここでなら、思う存分ポケモンバトルが出来よう。さあ、どちらから私と戦う?」
武麗が2人に尋ねると、少し妙な返事が返ってきた。
「私たちは、このポケモンだけで貴方と戦います。他にはいません。」
「何?2人で1体のポケモンしか持っていないだと?」
武麗は、さきほどからずっと2人を不審に思っていた。
本当に観察局の人間なのか…。
「では行きますよ。」
ボールを男が投げる。
中から出てきたのは――。


武麗たちがいる場所から200m先の道路。
「何だあれは?あれはポケモンか?」
何か巨大な龍のようなものが見える。
「あれは…まさか…。」
ポケピンは、方向をかえ龍のいる場所へと向かう。

「これはレックウザ…?何故お前らが持っているのだ?」
「フ…武麗。Pixieの中心人物である貴様を殺せば、残りは烏合の衆。」
「自由を束縛してきた私たちを怒らせた罪は重くってよ…。」
すると2人の姿がみるみる変化していった。
「貴様らは…ラティアスにラティオスか…?」
『ミュウツーと、このレックウザが施設を破壊してくれたおかげで、我々は脱出出来た。』
『今度は私たちが、あなたたちにお返しする番…。』
(何という事だ…。俺の目の前に3体の伝説ポケモンが立ち塞がろうとは…。)

「何だ…?あんたは武麗…。ここで何してる?…あいつらは何だよ…?」
たまたま通りかかった玲。
「玲か…。俺は今信じられない光景を目にしているぞ…。」
ラティアスたちも玲に気が付いたようだ。
「武麗の仲間か…。ちょうどいい、そなたも血祭りにしてくれようぞ。」
「玲、説明は後だ。このままでは我々は殺されるぞ。」
「どういう事だ、武麗。あいつらは伝説の…。」

『あいつは私に任せてもらえるかしら?あまり手応えなさそうだけど…。』
ラティアスは、玲の方へと物凄い速さで向かっていく。
「まずい!玲、早くポケモンを出せ!」
(ち…ぎんときは家に置いてきちまった。)

武麗たちの前に現れた3体の伝説ポケモン。
今ここに、壮絶な戦いが繰り広げられようとしていた。
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え〜ふぃ ☆2009.06/06(土)21:17
Mission5-3 ポケピン編3 死闘

(ち…。こうなったら…。)
玲は腰に差している刀を抜き、そのまま一振りする。
だが、斬ったと思った瞬間ラティアスの姿は消えていた。
「玲、後ろだー!」
玲は後ろを振り向く。
(いつの間に…。)
『お馬鹿な子…。私にそんな刀で挑もうなんて。いいわ、遊んであげる。』
ラティアスは再び人間の姿に戻り、念力で剣を作り出した。
『こうやって、斬り刻んでいじめてあげるのもいいかもしれないわね…。』

『そなたの相手は、私がしてあげよう。』
「ちいっ…。黒雲、かたくなれいッ!」
武麗はコクーンの黒雲を出し、硬くさせる。
武麗は、この硬くなったコクーンを装備し、自身の高い戦闘能力をもってポケモンと戦うのだ。
『フン…。そなたらは変わった戦いをするな…。』
ラティオスも人間の姿に戻り、念力で剣を作り出した。
『さあ…。』『遊んであげる…。』
『レックウザ、我々がこやつらと遊んでいる間に、街を破壊せよ!今こそ復讐の時だ!』
ラティオスの声に応じるかのように、レックウザは咆哮し、街へと飛び立っていった。
「まずい…。このままでは…。」


そこへ、ポケピンがやってくる。
「やっぱりレックウザだ…。どうしてここに…。」
武麗がポケピンに気付く。
「ポケピンか…。局長に変わって俺が命令するッ。お前にレックウザ捕獲指令が出た。今すぐ向かえいッ!ヤツはこいつらに利用されているのだッ!」
「けど…2人ともどうしたっての?」
玲もポケピンに気が付く。
「オレたちは今忙しいんだ。終わったら手伝ってやるから、早くヤツを捕まえろ。お前ドラゴン大好きなんだろ?」
ポケピンは何が何だか分からなかったが、頷いてモンスターボールを投げる。
ポケピンが出したのは、相棒のポケモン、カイリューのセントリー。
「よし、行こう!セントリー。」
ポケピンはセントリーに乗り、レックウザを追いかける。

「ったく、今日はなんて日だ…。」
ラティアスと戦っている玲だが、剣筋の早さも力の強さも人間の女とは比較にならないものであった。
少しずつ防戦一方になっていく。
『人間にしてはやるな…。だが、所詮それが人間の限界…。』
並外れたパワーの持ち主の武麗も、ラティオスの凄まじい剣撃に徐々に押されていく。

一方、街はレックウザによる破壊を受けていた。
レックウザの破壊光線の破壊力は凄まじく、たった1発で半径数百mが壊滅状態に陥って行った。
「やめろー!」
レックウザは、ポケピンの声に気付き、方向を変えるや否や破壊光線を放ってくる。
セントリーは素早く身をかわし、レックウザに接近する。
「何としても、レックウザを止める!」

レックウザの強大な力の前に、ポケピンはどう立ち向かうのであろうか?
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え〜ふぃ ☆2009.06/06(土)21:20
Mission5-4 ポケピン編4 逆鱗

セントリーは、右腕に冷気を込め始める。
「いくらレックウザでも、ドラゴンはドラゴン。冷気には弱いはず…。」
しかし、レックウザも猛然と攻撃を仕掛けてくる。
しかも、悠に7mはあろうかという巨体にも関わらず、物凄いスピードである。
セントリーとレックウザでは、飛行スピードが雲泥の差であった。
それでも、レックウザにダメージを与えるには何としても接近する必要がある。
方法は1つ。レックウザの方からこちらに近づかせる事であった。
危険は大きいが、レックウザの注意を自分に引き付け、接近戦に持ち込まなくてはならない。
セントリーは、注意を引くためにりゅうのはどうや火炎でレックウザを攻撃する。
レックウザはセントリーの攻撃に苛立ちを覚えたのか、ついに恐ろしい形相で向かってきた。

「セントリー!れいとうパンチ!」
セントリーは、ギリギリまでレックウザを引きつけて拳を繰り出した。
顔面にれいとうパンチを受けたレックウザはよろめく。
レックウザもすかさず、長いしっぽでセントリーを凄まじい力で叩きつける。
ポケピンを乗せたセントリーは、地面に叩きつけられる前に態勢を立て直し、着陸する。

「大丈夫か?」
セントリーは片膝をつき、頭を手で押さえながら頷く。
さすがにかなり効いているようである。
叩きつけられた後頭部には傷が出来ている。
レックウザは、再度こちらへと向かってきた。
セントリーは、再びれいとうパンチの構えを取る。
如何に氷に弱いレックウザとは言え、あの巨体である。
レックウザに比べ体の小さいカイリューのセントリーが普通に攻撃しただけでは効果は見込めない。
だが、ポケピンはレックウザのあの物凄いスピードを逆手に取る事を無意識に悟っていた。
敵の向かってくるスピードによる大きな運動エネルギーとセントリーの攻撃エネルギーの過剰効果でダメージを与えなければレックウザは倒せない。
接近戦しか出来ないセントリーにとって、これが唯一かつ最良の戦法であった。

「来るぞ・・!」
レックウザは、怒り狂っている。
破壊光線などではなく、直接セントリーたちを攻撃してくるつもりのようだ。
相変わらずの猛襲でセントリーに襲いかかる。
セントリーもタイミングを計りながら、れいとうパンチを繰り出した。
レックウザとセントリーの拳が激しくぶつかり合い、お互いに吹き飛ばされた。
両者とも倒れこみ、すでに体力の限界のようである。
「大丈夫か、セントリー?」
セントリーは倒れこんだままレックウザの方を指差した。
早く捕獲しろ…と言っているのだろうか。
ポケピンは、モンスターボールを取り出そうとした。
レックウザの方は、まだ起き上がろうとしている。
もし起き上がったら、さらに反撃してくるだろう。
今モンスターボールを投げれば、レックウザは捕まえられるかもしれない。

投げようとした時、ふと倒れているセントリーの方を向いた。
明らかにセントリーには、もう反撃するだけの体力は残っていない。
レックウザの攻撃をカウンターした反動も凄まじかったのだろう。
全身にダメージを負っていて、体に力が入らないらしかった。
すぐに手当てを受けなければ、命に関わるかもしれない。
レックウザを捕まえている余裕はない、ポケピンはそう思った。

「すまん、セントリー…。」
ポケピンはセントリーをボールに回収し、自転車の方へと向かう。
ここから一番近い回復施設があるのは、希少ポケモン観察保護局であった。
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え〜ふぃ ★2009.06/07(日)23:23
Miision5-5 ポケピン編5 竜の血

自転車の元へと辿り着いたポケピン。
だが、乗ろうとすると後ろにレックウザが追いついていた。
しかしどこか様子が変である。

「!?」
何故か、セントリーがボールから引きずり出された。
レックウザの能力であろうか。
さらにレックウザは自分の体を少し傷つけ、流れ出た血をセントリーに与える。
(これは…何をやっているんだ…?)

伝説では、ドラゴンの血には不思議な力が宿っており、これを浴びたり飲んだ者は不死の体を得るという言い伝えが世界各地にある。
ポケピンも竜の血の伝説の事は知っていたが、レックウザにもそういう力があるかどうかは分からなかった。
すると、みるみるうちにセントリーの傷が癒えていく。
「これは…信じられない…。」
目を開けるセントリー。
急に体が楽になったためか、きょとんとしていた。

「レックウザ、お前が治してくれたのか?」
何故、レックウザがセントリーを癒してくれたのかはポケピンには分からなかった。
レックウザはポケピンをしばし見つめていたが、やがて後ろを振り向き空へと飛んで行った。
「…。」

――一方
(何?)(こ…これは…?)
武麗と玲と戦っていたラティアスたちは、レックウザの行動を戦いながら念視していた。
(まさか、あんな小僧にレックウザが心を許したというのか…。)
その理由は、この2人にも分からなかった。

「どーしたィ?顔色が良くねえぜ…。」
「その様子だと、どうやらポケピンがやってくれたようだな。」
ラティアスとラティオスは、戦いながらテレパシーで会話する。
(ここは一旦引くぞ…。)(了解…。)

ラティアスとラティオスは2人から遠ざかり、姿を元に戻す。
『どうやら、レックウザのヤツはしくじったらしい。我々もここは引く事にする…。』
『全く…使えないヤツだったわね…。』
『武麗…今度会った時には容赦はせんぞ。』
『あなた…玲って言ってたわね…。また遊びましょう。』
そう言い残すと、2体はテレポートでフッとどこかへ消えて行った。
そこへ、ポケピンがやってくる。

「おう、ポケピン。レックウザは捕獲出来たのか?」
ポケピンは、事情を2人に話した。
「そうだったのか…。多分レックウザは、お前の事を認めたのかも知れん。」
「レックウザが…?」

ポケピンは空を見上げた。
雨が降りそうだった曇り空が、少しずつ晴れ始めている。
またいつか、もう1度レックウザと出会ってみたい。
雲の隙間から差し込む日差しを見ながらそう思うポケピンだった。
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え〜ふぃ ☆2009.06/11(木)01:51
Mission6-1 羽葉編1 何故か勘違いし過ぎているペンギン

『ポチャ!』(訳:よう、オレ様はポッチャマの「ふわ」だ。)
『ポチャ!』(訳:今オレ様は、子分の羽葉と共に伝説のポケモン「セレビィ」と「シェイミ」を捕獲すべくC地方の大森林に辿り着いた。)
『ポチャ!』(訳:ようやくこの物語の真の主役、このふわ様の活躍をお見せする時が来たようだな。)
「おーい、ふわ。早く行くよー。」
遠くから呼びかけているのは、ふわのトレーナーの羽葉(ばば)である。
「ポチャ!」(訳:おい貴様ッ!子分の分際でこのオレ様より先を歩いてるんじゃあないッ!)
しかし、ポッチャマの歩幅と人間の歩幅では、間隔がまるで違う。
羽葉の歩幅を1mとすると、ふわの歩幅はせいぜい15cm程度であった。
どんどん遅れていくふわ。
『ポチャ!』(訳:羽葉め…。こうなったらお仕置きせねばな…。)
ふわは「くさむすび」で羽葉の周りの草を操り始めた。
羽葉は気が付いていないが、草が足元に絡み始める。
『ポチャ!』(訳:ふふ…これであと数歩あるいたら、羽葉はスッテンコロリンだ。ご主人より前を先々歩くようなヤツはこうなるのだー!)
相変わらず、羽葉は普通に歩いている。
「ポチャ!」(訳:さあ、そこで転ぶがいい!)
ブチッ。
『ポチャ?』(訳:何?)
草は簡単に引きちぎれて、羽葉はそのまま歩いている。
ふわのくさむすびの威力というより、使い方が下手なため絡み具合が弱かったのだ。
だがふわは、自分が頼りない羽葉のために仕方なく戦ってやってるという認識しか持っていないポケモンなのだが…。

急に振り向く羽葉。そして、ふわの方へと引き返して来た。
『ポチャ?』(訳:な…何だ?オレ様のお仕置きに文句言いに来てるのか?)
先程も述べたが、羽葉本人はそんな事は気付いてもいなかった。
あんな草がちょっと靴にのっかる程度の事、森を歩いていればむしろ当たり前である。
羽葉はふわの前で立ち止まり、抱きかかえる。
『ポチャ!』(訳:き、貴様が悪いんだぞッ。オ、オレ様より前を歩くなどと…。)
「かーあいーいー♪」
羽葉は、ふわをぎゅうっと抱きしめる。
『ポチャ!』(訳:く…苦しい…ッ!やめんか…おい…。)
「すりすりー♪」
今度は頬ずりをする。
『ポチャ!』(訳:近い!近いから!)

見ていて非常に微笑ましい羽葉一行。
しかし、こんな調子で大丈夫なんだろうか…。
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え〜ふぃ ☆2009.06/11(木)01:55
Mission6-2 羽葉編2 何故か姑気取りなペンギン

羽葉は、ふわを抱いたまま歩き続けていた。
どこまでも、奇麗な森が続いている。
ここに、伝説のポケモン「セレビィ」と「シェイミ」がいるとの情報を受け、羽葉とロウが別行動で二手に分かれて来ていた。
「綺麗な森ね…。」

C地方の大森林。
ここには太古の自然がそのまま残っている。
かつて武麗が参加していた大戦時の最中も、多くの人々の犠牲によって守られた。
羽葉とロウが探している「セレビィ」と「シェイミ」。
伝説によれば、それぞれ「時」と「感謝」の神とされている。
太古の自然の中でひっそりと暮らしており、人の前には滅多に姿を見せない。
しかし過去に、人間の自然に対して反感を抱き姿を見せたところを捕獲されたという記録が残っている。
この2つのポケモンは、人間に敵意を持っている可能性があるため、十分に用心しなくてはならないのだが…。

『ポチャ!』(訳:一体、伝説のポケモンはどこにいると言うのだ?もう歩き疲れたぞ…。)
よく言う。さっきから羽葉に抱っこしてもらっているくせに。
「あ、何か見える・・。」
羽葉は目の前に何かを見つける。
何か墓標のような大きな石が置いてある。
文字が彫ってあるが、古代の文字だろうか。
羽葉には意味が分からなかった。
『ポチャ!』(訳:よし、ここで一旦休憩にするぞ。羽葉、お弁当の用意をしろ!)
羽葉はふわを下に置くと、石を調べ始める。
最近置かれたものではないようだ。
多分、何百年と経っている。
『ポチャ!』(訳:おい貴様ッ、聞いているのかッ?お弁当だッ!)

当然ながら、羽葉にふわの言葉が分かるはずがない。
その事に、羽葉のポケモンになってかなり経つふわは、未だに気が付いていないから困ったものである。
羽葉は、さっきから石の方をじーっと見ていて動かない。
『ポチャ!』(訳:何だこんなモン!)
げしっ げしっ
ふわは、石を蹴飛ばし始める。
何とも、バチ当たりなペンギンポケモンである。
「あ、こらやめなさい。」
しかし、石に憎しみを込めて蹴り続けているふわを目の前にしている羽葉は、何かを感じ取ったようだ。
「かーあいーいー♪一生懸命ケリンチョしてるふわ、かーあいーいー♪」
ぎゅううっ。
『ポチャ!』(訳:く…苦しい…ッ。)

「けど、この石にゴメンなさいしようねー。」
ふわを石の前に座らせると、羽葉は手を合わせて何かを祈り始めた。


――少しして…。
「よし、お弁当にしましょう。」
『ポチャ!』(訳:だから、さっきからそう言っていただろうがッ。まあ、今回だけは許してやろう。)
羽葉は持っているモンスターボールからサクラビスのルルドを出し、1人と2匹でお弁当を食べ始める。
『ポチャ!』(訳:うむ、まあまあだな。羽葉もようやくマシな弁当が作れるようになってきたようだな。少しだけ褒めてやる…。)
「ルルド、美味しい?」
ルルドは羽葉の言葉に嬉しそうに頷きながら食べている。

『…。』(訳:何かオレ様…空気になってね…?)
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え〜ふぃ ☆2009.06/11(木)02:00
Mission6-3 羽葉編3 シリアスになるにつれ空気になっていくペンギン

「あれ?いつの間にか随分減ってるね…。」
羽葉はサンドイッチを20個作って持って来ていた。
羽葉は今4個目、ルルドは3個目、ふわは5個目を食べている途中。
まだ8個くらいは残っているはずだが、いつの間にか4個しか残っていなかった。

『ポチャ?』(訳:む?)
ふわは、羽葉の後ろに何かがいる事に気が付く。
「?…ふわ、私の後ろに何かいるの?」
羽葉は後ろを振り向くが、何もいない。
『ポチャ!』(訳:あ、上だ!)
ふわは指をさして…というか手を挙げて上に何かいる事を知らせる。
上を向く一同。
「あ!」
見た事もない小さなポケモンが空中に浮かんでサンドイッチを食べている。
『ポチャ!』(訳:貴様、何者だッ?何故オレ様のサンドイッチを食べているッ?)
お前の…じゃないだろう。お前たちのものだろうが。
「…もしかして、あれが。」
羽葉の見ているポケモンこそ、伝説のポケモン「セレビィ」であった。

『ポチャ!』(訳:怪しいヤツめ。野郎ども、戦闘準備だッ!)
『あー美味しかった。』
「あ…喋った。」
羽葉たちには、まだこのポケモンがセレビィかシェイミのどちらか…という事しか分からなかった。

『あなた方は、この石に祈りを捧げましたね。』
セレビィは、何か語りかけてくる。
「え…?」
この石には、古代の文字でこう書かれている。

『時に祈りを捧げよ、感謝の意を示せ』

羽葉たちは、この石に刻まれている文字の意味は分からなかった。
『そこの人、あなたは今こう祈った。いつまでも、ずっとこの子たちといたい、と。昔、この子たちに出会えた事にありがとう…と。』
羽葉は、少し驚きながら頷いた。
『あなたの、小さいけど純粋な気持ちに惹かれ、僕はあなたとお話がしてみたくなりました。ちょっとその食べ物も美味しそうだったし。』
『ポチャ!』(訳:フン、がめついヤツだ。腹が減っていて盗み食いしただけだろうが。4つも食いやがって。)
「ああ、まだ残ってるから、良かったらどうぞ。」
羽葉は、サンドイッチを1つ手に取りセレビィに差し出す。

『ありがとう、あなたのような優しい人間も、まだこの世の中にはいるんですね…。』
「私の友達は、みんないい人ばかりですよ。」
『でも、世界は今も荒れ果て続けている。あなたも知っているでしょう?この世は戦争の繰り返し…。』

セレビィは、羽葉に何か念力のようなものを送る。
すると、何か映像のようなものが視界に映ってきた。

「これは…。」
沢山のデオキシスと、それと戦う人間とポケモンの姿。
それは4年前に起こった「1000日戦争」だった。
かつて武麗も参加していた戦争であり、この戦争で多くの人間とポケモンが犠牲になり、地球の全生物数は半数以下に激減したという、過去最大の大戦であった。
地球侵略にやってきたデオキシスは、優れた科学力に加え自身の持つ不思議な力で人類とポケモンを恐怖のどん底に陥れた。
羽葉の見ている光景は…「凄惨」、ただその一言に尽きるものであった。
この大戦は1000日続き、終結したのは約1年前。
かろうじて生き残った武麗たちの活躍によって、辛くもデオキシスを撃退、地球の平和は守られたのだが…。
その後の地球は、デオキシスの科学力の利用によって素晴らしい速度で復興していった。
このC地方の大森林や希少ポケモン観察保護局といった、世界的に重要な個所は、様々な人々から辛くも守られていた。
『あなたのような、ほんの少しでも時に感謝をしてくれる人がもっといてくれたら…あんな事にはならなかったでしょうに…。』

セレビィの言いたい事は、こう言う事であった。
過去の過ちを繰り返してはならない。
過去を教訓とし、過去に犠牲となった者たちに感謝すべきだと。
そのおかげで、今の自分たちがあるのだという事を。
過去という時に敬意を払い、感謝せよ…と。

TO BE CONTINUED
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え〜ふぃ ☆2009.06/13(土)00:09
Mission6-4 ロウ編1 石碑

羽葉と同様、ロウもC地方の大森林に来ていた。
ロウも、この大森林のどこかにいるという「セレビィ」・「シェイミ」の捕獲が任務である。
もうかなり奥まで足を踏み入れているはずだが、ポケモンの1匹の姿も見かけなかった。

ロウは、ポケットからカードを取り出し、きり始めた。
占いでもするのだろうか。
『ん?ロウ、何をしてるんです?』
ロウに質問したのはグレイシアの「まつ」。
「ん〜、このまま歩いててもラチが明かないから、ちょっと占ってみようと思って…。」
占いなんかで、伝説のポケモンが見つかるのだろうか?
まつは、そう思っていたのだが…。

やがて、ロウはカードの束をまつに見せる。
「好きなカード、選んでみて。」
『ん〜…、じゃあ一番上のカードでいいですぅ。』
「一番上ね。」
一番上のカードをめくってみるロウ。
「罠カード『破壊輪』…。何か危ない事が起こるかも…。」
『って、それ遊戯王女カードじゃないですか。そんなんで何が占えるんですか?』
(駄目だ、こいつ駄目だ。)
ハクリューの「チャリオット」も呆れている様子だ。

ふと、チャリオットが離れたところにある何かに気が付く。
恐る恐る近づいてみると、何か墓標のような石がある。
石には、何か古代文字のようなものが彫られている。
『チャル、どうかしましたか?』
まつも石のそばにやってくる。
『これは…古代のアンノン文字のようですね。意味は「時に祈りを捧げよ、感謝の意を示せ」…か。』
チャルは関心した。
(凄い、まっちゃん凄い。)
「どーしたの?何この石?」
『妙な石を見つけました。ほら、見て下さい。古代のアンノン文字で「時に祈りを捧げよ、感謝の意を示せ」と書かれてあります。』
「う〜ん…。何の事だろうね。」
『私の勘ですが、もしかしたらこの石とセレビィ・シェイミは何か関係があるのかもしれませんよ。彼らはそれぞれ時と感謝の神と言われてますから。』
「へえ、そうなの。」
ちゃんと観察保護局から送られた資料に書いてあった事である。
こんな事もあろうかと、まつは一応目を通していた。
まつは頭がよく、人間の言葉や文字すら理解出来る、Pixieポケモンの中でも頭のキレる存在であった。

「とにかく、この近くに伝説のポケモンがいるかもしれないのか…。みんなで探しましょう。」
2匹のポケモンも頷き、それぞれ付近を探し始めた。
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え〜ふぃ ☆2009.06/13(土)00:13
Mission6-5 ロウ編2 星の記憶

ロウたちは知らない事だが、この石碑はほんの少し前に羽葉たちが見つけたものと同一である。
つまり、ロウたちは知らないうちに羽葉たちの近くに来ていた。
「あ!」
ロウは、何か見つけたようだ。
『何かありましたか?』
まつとチャルも、ロウのところへ駆け寄る。
「ほら見て。あそこにいるの、羽葉姉さんじゃあない?」
20m先くらいに、羽葉たちがいる。
あちらからこちらは見えにくいし 、まだこちらに気付いている様子はなかった。
よく見てみると、羽葉は何か見た事もないポケモンと、何か話している。
「あれ、もしかしたら…。」
『恐らく、あれがセレビィかシェイミのどちらか何でしょう。羽葉さんが先に見つけていたのですね。』

『もしもし。』
後ろから、何か声がする。
「何?チャル…ってチャルは言葉は話せないんだっけ…。」
『私は、さっきから何も言ってませんよ。』
すると、チャルはロウの袖を咥えて引っ張り始めた。
「え?何どーしたの?」
ロウが振り向くと、そこに何か見た事もないポケモンがいた。

『あなた方は誰?ここには何用で来たの?』
「え…え・・と。」
ロウは慌てていたので、代わりにまつが答える。
『私たちは、この森にいるというセレビィとシェイミの保護にやってきました。私はまつで、これはチャル。この人はロウです。』
「あ、そうそうロウです。よろしく…。」
チャルも、一応お辞儀らしき行動をしてみた。

「あそこにいる人は、私の友達なんです。」
ロウは、事情をポケモンに話してみた。
『そう…で、私たちを観察保護局に連れ帰る事が目的…そうなの?』
「はい…一応そう言われてますです…。」
伝説のポケモンを初めて見たからか、ロウは妙に緊張していた。
『今、あの子は大事な話の途中だから…。』
『あの…あなたはシェイミさんですか?それともセレビィさん…?』
まつがポケモンに質問する。
『シェイミ…そう呼ばれてる…。それならあの子はあなた方でいうセレビィ…。』
「やっぱり…。やっと見つけたね。」

『ちょっと待っててくれる?』
シェイミは空を飛んでセレビィたちの元へと向かう。
「ねえ、これからどうなるんだろう?」
『とにかく、我々に敵意はなさそうです。ここは彼らの言う事をよく聞いて、様子を見ましょう。下手に刺激を加えないようにして…。』


――一方、羽葉一行とセレビィたち。
「…。」
『今のように、この星の記憶…つまり時を他の生物に見せるのが私の能力です。』
羽葉がセレビィから伝えられた、凄惨な星の記憶。
森に着いてからさっきまでは穏やかな表情だった羽葉も、今は悲しげな表情でうつむいている。
「あれ…?何か羽葉姉さん、元気がないみたい…。」
『何かあったんでしょうか?』
「はっ、もしかして、あのセレビィに何かされたんじゃ…。」
ロウは、草むらから走り出す。
『あ、ここで待てってさっきシェイミに…。』

「ちょっと!あんた姉さんに何したの?」
「ロ…ロウちゃん?」
羽葉もロウに気が付く。
『誰ですか、あなたは?』
『やれやれ、面倒な事に…。でも君は、この人に星の記憶を伝えてしまった。』
「星の記憶…。」
ロウには、何が何だか分からなかった。
「それより、姉さんに何したの?凄く悲しそうな顔…。」

いつも、ロウやチロルのお姉さん的存在として優しくしてくれていた羽葉。
その羽葉が、初めて悲しそうな顔をしているのを見たロウはショックだった。
ロウは、きっとこの2体のポケモンが羽葉に何かしたに違いない、そう思ったのだった。
「まつー!チャル!出てきなさい!」

まつとチャルも草むらから出てくる。
「まつ!チャル!準備はいい?」
『でも、ロウ…。』

まつは、どこか戦う事に引け目を感じていた。
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え〜ふぃ ★2009.06/13(土)00:19
Mission6-6 ロウ編3 憧れ

「まつ!ふぶき!」
まつは先程からふぶきで攻撃しているのだが、セレビィを乗せたシェイミには全く当たらない。
どう攻撃しても紙一重でかわされているのだ。
(私には時を見る力がある。過去も…そしてこれから起こる未来も全て見える…。)
セレビィに未来予知能力がある事を知らないロウは、ただ我武者羅にまつに攻撃を指示していた。
チャルも、いつもなら「駄目だ、こいつ駄目だ」とか考えるところだが、今実際に起こっている事自体信じられなかった。
『…ロウ、彼らの何か隠された能力…それを見極めない限り私たちに勝ち目はありませんよ。』

『やむを得ませんね…。』
セレビィは、まつとチャルの2体に念力で攻撃をする。
2体とも、セレビィの攻撃を避ける事は出来なかった。
『何という…重い攻撃…。』
まつとチャルも、相当なダメージを受けたようである。
もう、強力な攻撃を出し続ける事は不可能であった。
「まつ…チャル…。」
2体とも、すでにセレビィたちに攻撃を続けていたため体力もかなり消耗していた。
呼吸も乱れており立っている事がやっとだった。

「ロウちゃん、もうやめましょう…。」
羽葉がロウのところに歩み寄る。
そして、セレビィから伝えられた星の記憶についてロウに話す。

かつて、武麗が参加していた1000日戦争の事。
そして、かつて幾千年と続いた人類の戦争の事。
星の主導権を持つ人類が、時への敬意と星への感謝を忘れている事。

「…姉さん。」
「だから、もう帰りましょう。ね?」
「…でも。」
すると、セレビィはロウにこう質問した。
『あなたは、何故私たちと戦おうとしたのですか?』
ロウは、口調を尖らせてこう言った。
「それは、あなたたちが姉さんに何かしたからでしょ?」
セレビィとシェイミは顔を顔を合わせて首をかしげた。
『何の事…?』
「とぼけないでよ!」
『もう1度聞きます。この羽葉さんに、私たちが何かしたとでも?』
「そうじゃないの?私はいつも羽葉姉さんに助けてもらってばっかりで…。だからそんな姉さんを悲しませたあなたたちが憎くって…!」

セレビィは思った。
ロウが自分たちを攻撃してきたのは、他ならぬ羽葉のためだったのだと。
シェイミは理解した。
ロウは、羽葉に対する感謝の気持ちから自分たちを憎んでいたのだと。

TO BE COTINUED
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え〜ふぃ ☆2009.06/14(日)00:40
Mission6-7 時代の傷痕

C地方の大森林。
ここに、Pixieのトレーナーの1人、ジェミニも来ていた。
そして、ジェミニの目の前にはスイクンがいた。
ジェミニは、あの日以来、スイクンの行方をずっと追っていた。
「とうとう会えたな、スイクン…!」
ジェミニはドーカッサをボールから出す。
スイクンもすぐに戦闘態勢をとった。

『やはり来ましたね。この森に、あなた方の仲間が1人来ています。』
「え?」
ロウは意外そうに質問した。
「誰?」
『あなた方がスイクンと呼んでいる者と人間が1人、そのポケモンが1体…。』
「スイクン…まさかジェミニ君?」
羽葉は、ジェミニがスイクンを捕獲して行ってから、全く連絡がなかったため気になっていた。
ジェミニとスイクンが最初に出会ってから、もう随分日が経っていた。
他のトレーナーと違い、ジェミニだけは音信不通になっていたため、行方が分からなかったのだが…。

「セレビィ、どこにいるの?」
セレビィに質問する羽葉。
『この先の湖の畔にいます。少し歩いたところです。』
「ロウちゃん、行ってみましょう。」

『ちょっと待って…。行ってどうするの?』
2人に問いかけるシェイミ。
『あの2人の戦いを止める気なの?最初は私たちを捕獲に来ていたあなたたちが…?』
「それは…。」
返す言葉が見つからないロウ。

『それは違いますよ、シェイミ。』
セレビィは、シェイミの言葉を否定する。
『違う?』
『ええ…。あの者たちは、互いに戦う事を望んでいた。スイクンも、あのジェミニという人間も…。』
『まさか…我々と同じポケモンが人間と戦う事を望んでいた…?』
『そしてこの2人には、もう私たちを捕獲する気はない。そうですね?』

「今は、早くジェミニ君のところに行ってあげたい…。」
ロウも羽葉の言葉に頷く。
『この世界に、あなた方のような人間がまだいてくれて良かった。』
「私も、あなたたちの事は忘れません。」

そう言うと、羽葉は走って湖へ向かった。
『ポチャ!』(訳:おいー、オレ様を置いて行くなー!ていうか作者ー!オレ様を途中から空気扱いにしおってー!許さんぞー!)
後からペタペタと足音を立てながら追いかけるペンギンポケモン。

「…。ねえ、1つだけ聞いてもいい?」
『何でしょうか?』
「私は…これからどうすればいいの?」
『…。』
「この星の記憶って言ってたけど…それに対して私はどうしたら…。」
『…そうですね。とにかく今は行ってあげて下さい。羽葉も、あのジェミニという者もあなたを待っているはずですから。』

この星の記憶、この星の傷痕は誰かに語り継がれては伝えられ残り続ける。
セレビィの言う時への敬意と感謝をロウが理解出来る日は、まだ少し遠いのかもしれない。
しかしセレビィは、羽葉とロウに人間に対する希望のようなものを抱いていた。
いつか世界を良い方向へと向けてくれるという、そんな希望を。
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え〜ふぃ ★2009.06/17(水)00:05
Mission7-0 紅修羅と狂乱の貴公女

4年前に起こった「1000日戦争」。
突如宇宙から訪れた宇宙生物「デオキシス」と人類の戦いは、地球上の生物の半数以上を死滅させた。
人類とデオキシスの兵器と兵器の戦争は、大戦が続きにつれ互いに消耗し尽くし、やがて剣と体のみでぶつかり合う戦へと移っていった。
大戦末期、辛うじて生き延びた地球側の戦力は、当時の黒井中佐が率いていた地球連邦政府軍・第78隊のわずか7000の軍のみ。
対するデオキシス側は、まだ20万という隠れた生き残りがいた。
黒井中佐は、これまでの長い大戦の最中で負傷、当時黒井の部下であった武麗大尉が代わりに指揮をとり、戦いを続けていた。
だが、選りすぐりの軍人からポケモントレーナーとそのポケモンまで戦場に駆り出されたものの、その大多数は戦死し、すでに戦力差は明らか。
もはや、戦況を覆すのは絶望的であった。

そんな中、武麗大尉のもとに2名の生存者の報告が入った。

1人は、現特殊精鋭トレーナー隊Pixieの一員である「玲」という22歳の青年。
自らもどこかで手に入れたのであろう軍刀を手に、エーフィと共に戦っていた。
武麗が初めて会いに行った時、紅蓮の炎の中に敵の返り血で顔も剣も全身を真紅に染めた阿修羅がそこにいたという。

もう1人は、同じく現特殊精鋭トレーナー隊Pixieの一員である「ちるる」という15歳の少女。
彼女は恐ろしく鍛えられたキュウコンとグラエナと共に、敵を退けていた。
武麗は、ちるるの可憐な姿に似合わぬ荒々しい戦いを今も鮮明に記憶しているという。

武麗は2人を生存者として保護、そして共に戦う同志としてその後の大戦を2人と共闘。
その結果、武麗軍はデオキシスの撃退に奇跡的に成功する。
これが、現Pixieの前身となる3人の最初の出会いであった。

大戦後、軍を引退した黒井は「希少ポケモン観察保護局・局長」に就任。
一方、武麗は軍を解散し「特殊精鋭トレーナー隊Pixie」の司令官となる。
Pixieは政府管轄による希少ポケモン観察保護局所属の極秘精鋭隊であった。
その最初のメンバーに当たるのが、筆頭となる武麗をはじめ、玲とちるるの3名であった。

玲とちるるは、最初はPixieに入る事を拒んでいた。
これは政府管轄所属という事が最大の原因だった。(この事の詳細は後に記述する)
だが黒井と武麗の説得の末、2人は入隊を承諾。
当時の主な任務は、地球復興の際に起こりうる事故・事件の解決に極秘に従事する事であった。
2人をPixieに招いたのは、2人のトレーナーとしての能力もあるが、何より2人には身寄りや行くところがなかったためである。
(この2人に関する事は、黒井局長が詳しく調べていたらしいが、武麗には知らされてはいなかった。)

それから数か月後。
黒井と武麗は生き残った世界の人間たちから、玲やちるると同等の能力を持つ者、
あるいはそれ以上の素質を持つ可能性がある者をPixieにスカウトしていった。
さらに約1年後。
希少ポケモン観察保護局から伝説のポケモンが逃走。
ジェミニを初めとするPixie第2期メンバーを中心に各地の伝説ポケモンの捕獲・保護活動が始まる。

だが玲とちるるは、それに対しあまり協力的ではなかった。
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え〜ふぃ ★2009.06/17(水)00:04
Mission7-1 ちるる編1 ツンデレ女に悪い人はいない

「じゃあ、ちゃんとカネはオレの口座に頼みます。」
そう言って、玲は局長室を出ていった。
(やれやれ、ようやくその気になってくれたか…。)
局長がそう考えるのもつかの間、局長がもう1人呼んでいたPixieのメンバー、ちるるが入ってくる。

「何度も何度も呼び出すの…やめてくれません?」
どうやら、ご機嫌は斜めのようだ。
「どうだ?伝説のポケモンの捕獲…力を貸してくれる気にはならんかね?さっきやっと玲のやつも行ってくれた。」
「玲が?あはははは!」
ちるるは急に笑い出す。

「あんな無気力な草食系男子、役に立たないでしょう。おかし〜。」
「…。」
「いいですよ。あんなのより、あたしの方がずっと凄いってところを見せてあげます。」
「おお、では行ってくれるのか。」
ちるるは、局長の机に散らばっている伝説ポケモンの写真に目をやった。
しばらく考え込んでいたが、やがて1枚の写真を取り出す。
「じゃあ、この可愛いヤツ。この子を捕まえてきます。」
ちるるが手にした写真は、「マナフィ」という海洋性のポケモン。
現在目撃情報はないが、過去にはH地方の海底遺跡で発見されたという記録が残っている。

局長室を出たちるるは、外に出る途中に誰かいるのを見かけた。
「何だと、このカマボコ小僧ー!」
「もぐもぐ。玲だって豆腐オタクのくせに。」
「男前豆腐はなァ…男を上げるアイテムなんだヨ。」
「また始まった…やめてよ2人とも…。でも面白いww」
玲とカマボコを食べているカズマがケンカしているところだった。
それを、止めようとして…というかただケラケラ笑って見ているだけかもしれないリッペもそばにいる。
こういうのは、観察保護局ではいつもの事である。
ちなみに、カズマもリッペもすでに伝説ポケモンの捕獲に成功しており、
それぞれダークライ、ルギアという強豪ポケモンと戦って帰って来たばかりだった。
(ふん、あんなのより私の方が強いもん。)

「ちるる先輩っ。」
後ろから、誰か呼ばれた。
振り返ると、そこにはアンティークと優がいた。
「あの…ちるる先輩、頑張って下さい。」
「やっとちるるさんも、伝説ポケモンを捕まえに行くんですね。」
この2人も、すでにギラティナやレジスチルといった伝説ポケモンを捕獲していた。
2人ともまだ13歳と若いが、しっかり者である。
なかなか捕獲に出掛けないちるるの事を気にしていたようだ。
「え…ええ、任しといて。」

ちるるはそう返事すると、慌てるように保護局を出た。
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え〜ふぃ ★2009.06/17(水)00:14
Mission7-2 ちるる編2 お小遣いのおねだりは、お母さんの顔色をよく見て判断

――観察保護局から500mほど離れた公園
『ねえ、もうボクここにいるじゃん。』
ボールから飛び出してきたのは、伝説のポケモン「マナフィ」であった。
「数日したら、またあんたと一緒に局長に会いに行くから。」

ちるるの事情はこうである。
今日呼び出される少し前に、すでにちるるはマナフィを仲間に加えていた。
何度か局長に呼び出されてはいたが、今回の前に呼び出された時は、まだ出会ってもいなかった。
マナフィを捕まえていたのは、ほんの数日前の事であった。
それまで、ちるるは大戦で行方不明になっていた父の消息を探していた。

ちるるの父はポケモン起源学の第一人者であり、ポケモンの起源において、ある新説を唱えていたらしい。
ちるるは、その学説については詳しい事は聞いていなかった。

話は変わるが4年前の大戦よりさらに1年前、デオキシス星の宇宙電波をNAZAの宇宙局が探知した時、
国連政府はデオキシスの来訪を受け入れた。
地球の位置を知らせる信号をデオキシス星へと飛ばし、デオキシスの宇宙船を誘導させた。
この時、デオキシスの来訪に異議を唱えた科学者が2人いた。
その1人が、ちるるの父であった。

しかし2人の異議は国連政府はおろか、世間やマスコミにさえ受け入れられる事はなく、初の宇宙からの来訪者に誰もが感銘を受けていた。
その結果、1年後にはデオキシスは地球に来訪。
あの悪夢のような1000日戦争が幕をあける事となった。
ちるるは父と戦火の中を逃げていたが、その最中で生き別れとなる。

ここ1カ月、あちこちを飛び回りずっと調べていたが、有力な手掛かりは見つからなかった。
しかし最近、局長が当時デオキシス来訪に関する会議に参加していたという事をつきとめる。
(マナフィと出会ったのも、それとほぼ同時期である。)
唯一の手掛かりは局長である。

局長なら、何か知っているかもしれない。
しかし今は、伝説ポケモン捕獲任務に就いている・・という事になっている。
ある程度の時間を置いてから話を切り出そうとちるるは考えていた。
今すぐに話を切り出しても、まだ任務を受けていたばかりであるし、第一父の調査については局長には黙って勝手にしていた事である。
それまでは、自分は他の者と同様に任務に赴く事もしていなかったのだし、数日空けて改めて捕獲した事にすれば、局長からの話も聞きやすい。

ちるるは、伝説ポケモン捕獲に対して非協力的な態度を取るつもりではなかった。
大戦で父とはぐれ、行くところもなかった自分の面倒を見てくれた局長と武麗には、
今では感謝しているし、同期としてPixieに入った玲の事も嫌いではなかった。
他のメンバーも、優やアンティークのように慕ってくれている者もいる。

だが、日頃は突っ張ってたり冷静な態度を取っているが、内心は寂しがり屋でもある。
なかなか素直ではないところがあったり、ケンカしたりする事もあった。
生まれつき、ちるるは俗にいうツンデレな性格だったのだ。
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え〜ふぃ ★2009.06/17(水)00:07
Mission7-3 ちるる編3
世の中、仕事のプロは沢山いても人生のプロなんて1人もいない、だから人は時に過去を悔み今を失敗し未来が不安になる

――4年前
ちるるの目の前に群がる凄まじい数のデオキシス。
父を探して1人外へ出てきたちるるは、デオキシスに囲まれていた。
最初は、ただ逃げる事しか出来なかった。
だが、キュウコンのサファイアとグラエナのルビーは怯える事なく必死に戦いちるるを守ろうとしていた。

「大丈夫?サファイア…ルビー…。」
いつも弱虫だった自分の事を思ってくれている優しいサファイア。
普段は頼りないけど、いざという時には勇敢なルビー。
ポケモンたちを見て、「父もきっとどこかで生きている、自分も強くならなくては」…そう思った。

それからは、ちるるも敵を目の前にして逃げる事はしなくなった。
ルビーとサファイアがいてくれれば、怖いものもなかった。


「あなたは…誰?」
「俺は地球連邦政府軍・第78隊所属の武麗だ。君の保護にやってきた。」
「連邦…政府?」
武麗は、あたりを見回してみた。
「…ここの敵の死骸…。みんな君が倒したのか…?」
武麗がそう質問しようとした矢先、敵の新手が襲いかかってくる。
いつの間に接近していたのだろうか?
「まずい…凄まじい数だ!早く逃げるぞ!」
「逃げる…?冗談じゃない!」
ちるるはサファイアとルビーを出し、自分もどこかで拾ったのであろう軍刀を手に敵に向かっていった。
「バカな!たった1人で危険だ!すぐに戻れ!」

だが、武麗の見解は大きく的外れだった。
たった1人の少女の剣と2匹のポケモンが、次々と敵を薙ぎ払っていく。
「何なんだ…あの娘は…。」
ちるるは、大戦の中を戦い抜き強くなっていた。
ほんの少し前まで、弱虫だった頃のちるるの姿は、もうない。
荒々しくも凄まじい戦いの光景、その姿はまさに「狂乱の貴公女」とでも呼ぶに相応しいものであった。


「夢か…。」
部屋の時計を見てみると、午前11時を過ぎていた。
少し寝坊してしまったようだ。
「さて…行きましょうかね。」

外に出たちるるは、サファイアとルビーを出す。
「一緒に行ってくれる?」
「一緒にって…嫌でもそうしないと、ちるるは何をしでかすか分かりませんからね…。この私がよく見てないと…。」
相変わらず、ちるるの保護者気取りのサファイア。
「嫁がそう言ってるんだから、俺もそうしないわけにはいかんな…。ネ?サファイアちゃ〜ん。」
相変わらず、軽い口を叩くルビー。

この先、どんな事が自分に振りかかるか、時々に不安になる事もあった。
しかし自分には、いつもこの子たちがいてくれる。
ちるるは足取り軽く、観察保護局に向かっていった。
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え〜ふぃ ☆2009.07/02(木)01:50
Mission8-1 カズマ編1 にっぱいマンズ


「いっけー!ギガアカ!」
「いてまえ、ぎんときー!」
カズマと玲のケンカバトルが今日も始まった。
カマボコと豆腐はどっちが美味いか…という実に下らん口ゲンカから、いつもポケモンバトルになる。
「あ、リクさん。2人を止めて下さいよ。」
2人のケンカを止めようとしたら、リクを見かけたので声をかけるリッペ。
「あ、またやってんの?つい2日前もやっとの事で武麗さんが止めたばかりじゃん…。」
リクも呆れている様子だ。

伝説ポケモンが脱走して、もう半月になる。
いつまで経っても出動しない玲。
毎日カマボコを食べては、スーパーの店長にカマボコ欠品というだけでバトルを仕掛けているカズマ。
2人とも日配品にかける情熱を、もう一寸任務の方に傾けて欲しいものである。

「男前豆腐はなァ…男を上げるアイテムなんだよ。本物の男前はオレたちを裏切らないって公式ブログにも書いてあんだろが。」
「知らねえよ、そんなのw カマボコこそ、俺の生き甲斐。バカにすんなよオッサン!」
「お…オッサン…!?お兄様と呼べや小僧がァ〜!」
何という低レベルな口喧嘩だろう…。
見ている人の方が恥ずかしくなってくる。

「ああ…君たち。」
止めに入ろうとするリク。
が、2人とも物凄い顔つきである。
「あ?」
「何か用ですかリクさん?」
しかし、リクも負けじと言い返す。
「お前らな…いつまでも下らん喧嘩してねえで、早く任務に行けよ。もうオレとチロルは」
「何ィ?下らん?豆腐が下らんというのかリクさんよォ?」
「カマボコなめんなよ!他にもナルトも竹輪も俺の生き甲斐なんだぞ!」
「ていうか、日配品は日本の食文化の原点だろうが!日配なめんなよコラ!」
「日配最高!コンニャクも油揚げも俺の生き甲斐だァ!」

「日配最高!」「日配万歳!」「日配王に、オレはなる!」

――その夜 希少ポケモン観察保護局。
武麗と局長が何か話している。
「この付近に…ですか?」
「うむ、ダークライが潜伏している可能性があるという情報が入った。」
「ダークライ…?私も知らないポケモンですね…。」

――ダークライ。
発見から1世紀以上経った今でも謎に満ちたポケモン。
邪悪な存在ではないが、時として生き物の夢に入り込んだり、悪夢を見せる事があるという危険なポケモンである。
これはダークライ自身の防衛本能が起こす行動と言われており、直接他の生物に危害を加える気はダークライ自身にはない。
そこが、ダークライが厄介とされている理由の1つでもある。
その生い立ち、性別や生態。
未だに解明されていない事が多く、神秘的な存在ではないかと説く者もいる。

「ダークライの捕獲担当は誰ですか?」
「カズマに任せている。他の者も、すでに捕獲のために出払っている。武麗、君は保護局の警備を頼む。またいつヤツら(ラティアスたちの事)が来るか分からん。」
「分かりました。」
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え〜ふぃ ★2009.07/02(木)01:56
Mission8-2 カズマ編2 懐かしい2人

「ここは…?」
カズマが目を覚ますと、全く知らない場所に寝ていた。
何もない廃墟、まるで戦争でもあったかのようだ。
「これは…夢か…?」

同じ頃、廃墟の中を漂う黒い影が1つ。
この影こそ、ダークライである。
ダークライは偶然、現実世界から逃れるためカズマの夢の中へと入り込み、過去の苦しい体験をカズマにも見せているのだ。
しかし、これはダークライの意思によるものではない。
ダークライ自身の過去を、無意識にカズマに投影している…という表現が正しい。
カズマ自身は、まだダークライが自分の夢に存在している事は気付いてもおらず、これから知る事もないのだが…。

暗い空、廃墟の町。
カズマは1人彷徨っていた。
だが、どこかでこ見た光景…そんな気もしていた。
何年か前、同じような事があったような気がする。

一方のダークライは、数年前の大戦中に戦場にいた。
ダークライは戦いは好まず、保護局から偶然抜け出したのか…何故戦場にいたのかは誰も知らない。
この夢は、ダークライが見た約2年前の大戦の記憶であった。
正確には1000日戦争末期、2127年である。


「誰?」
カズマが1人廃墟を歩いていると、突然剣を突き付けられた。
驚いて立ち止まるカズマ。
「…何だ子供…。」
子供?確かに自分はまだ子供…だけど随分目の前の人が大きく見える。
カズマは気が付いていないが、当時の大戦時の体に若返っているのだ。
大戦時のカズマの年齢は11歳。
まだポケモンを持ってもいない頃であった。
「こんなところでどうしたの?お父さんとお母さんは?」
「え…いやあの…。ここはどこですか?あなたは…。」
目の前にいる人…見た事がある。

「私?私はちるる。ここは危ないから、早くお母さんのところへ…。」
ちるる?Pixieの先輩のちるる…?
いや、間違いない。
聞いた事がある、昔ちるると玲は武麗と共に大戦に参加していた、と。
「あ…あのボクです。カズマです。」
当然だが、ちるるはカズマの事は何も知らない。
尤も、この数年後には再会する事になるのだが…。

「ん?どうしたその子?」
後ろから声がしたので振り返るカズマ。
「あ…この子、どうも親とはぐれたらしくて…。」
「そうか…。そうだ、さっきぎんときが敵の気配を読み取った。今度は10000の軍がここに近づいてきてる。もうすぐに来るぞ。」
「10000…。」
「やつらもかなり減ってきたとはいえ…こっちも、もう食料は底を尽きちまったし…。」
「武麗さんからの連絡も途絶えてる…。どうする?」
「…。」

やはり間違いない。
この2人は玲とちるる。
4年前のデオキシスとの大戦を戦い抜いた2人だったのだ。
「君の名前は?」
玲がカズマに聞く。
「え…あの…カズマです。」
でも、本当に玲なのだろうか…。
つい昨日、日配品の事でケンカしていた彼なのだろうか?
雰囲気が全然違う。

「もうすぐここには敵が来る。カズマ君、ここから南に数km行ったところに、人間の避難所がある。一番近いのはそこだが…。」
「でも、走って行っても何時間かかるか…。」
「遠いかもしれないが…オレたちが連中を食い止めてる間には着ける。」
「…。」
『玲、ちるる。あと1分後にはここに来る…。数は10348体…。全員デオキシス…。』
ぎんときが敵の情報を告げる。

「もう時間がない。カズマ君、オレたちがここを飛び出したら、真っ直ぐ南に向かうんだ、いいね?」
「無事にお母さんやお父さんに会える事、祈ってるよ。」
『玲、早く!』
「ああ…。そうだ。まだこれが残ってたな…。」
「玲、先に行ってるよ。じゃあね、カズマ君。」

玲は、カズマに向かって何か投げた。
「もう…それしか残ってなかったわ…。最後の食糧だ。」
「これ…カマボコ…?」
「好きか?カマボコ。こんな戦争やってると、支給される食い物ってのは質素なモンばっかりでよ…。」
「あ…あの…。」
「じゃあ、もう行くわ。」
「あの…また会えますよね?」
カズマは、答えの分かり切っている質問を玲にした。
あの2人は、この先も生き延び、武麗と共にPixieへと入り、その後Pixieへと入隊する事になる自分とも再会する。
「…もしまた会う事があったら、美味い豆腐でも紹介してやるよ。」
そう言って、玲も場を後にした。


「遅いよ、玲。あの子は?」
「ああ、もう行った。」
「凄い数ね…。」
2人の前に群がる10348体のデオキシス。
「さあて、流石に今回は危ないかもな…。」
「あんたにしちゃあ、随分弱気だね?」
「…最後に残ってたカマボコ…あげちまったわ…。」
「…あの子は絶対生きてくれる…そんな気がする…。」
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え〜ふぃ ☆2009.07/02(木)01:51
Miision8-3 カズマ編3 ダークライ

カズマは、ひたすら南に向かって走っていた。
2人と別れてから、もうどれくらい経っただろう。
何度か後ろを振り向いて見たが、後ろからは何もやってこない。
どうやら、2人は善戦しているらしい。

カズマは立ち止まり、玲から受け取ったカマボコを見つめる。
(前にも、こんな事があったような気がする…。確かあの時、親とはぐれてて、それで…。)
カズマは少しずつ思い出していた。
あの時あの場所で、確かに2人に出会っていた。
あの2人も、さっきの事を覚えているだろうか。
それだけが無性に気になっていた。

カズマは、カマボコを口にしてみた。
味もするし、食感もある。
ならば、ここはどこか?夢なのか、現実なのか?
早く元の世界に戻らねば、そう思った。

カズマが再び走り出そうとすると、目の前にダークライがいた。
(…何だこいつは…?見た事のないやつだ…。)
カズマとダークライが対面するのは、これが初めてである。
カズマには、今の世界を見せている張本人こそが、目の前にいるダークライだとは知る由もなかった。

ダークライは、大戦の当時戦場にて多くの人間やポケモンが犠牲になるところを目撃していた。
それがダークライにとっての悪夢。
その時の記憶の断片の1つに、カズマとちるるたちの出会いもあったのだろう。
「お前…もしかしてポケモンか…?」
ダークライは何も答えなかった。
何も言わなかったが、後ろを振り返り、宙を浮いているかのようにそのままゆっくりと南へと向かう。
「・・。なんだあいつは…。でも行きたい方向は一緒だな…。」
カズマもダークライの後をついて行って見た。
しばらくすると、避難所が見えてきた。
「…ここは…避難所?ここに父さんと母さんがいるかもしれない。」

「お前、もしかしてここまで案内してくれたのか…?」
カズマがダークライの方を向くと、すでにそこにはいなかった。
「あれ…?一体何だったんだ…あいつは…?」


「はっ!」
カズマが目を覚ました時には、午前10時を少し回っていた。
「やっぱり夢だったのか…。それにしても、あの黒いポケモンは何だったんだろ…。」

カズマは、起きあがると自分のポケモンを入れているモンスターボールを見てみた。
「…?おかしいな…1つ多いぞ。」
カズマが持っているポケモンは、ギガアカとキンコングの2つ。だが、今見るともう1つあった。
「何なんだ、このボール…誰か部屋に忘れたのか…?」
カズマはボールを投げてみた。
すると、中から出てきたのはダークライであった。

「お…お前…さっきの夢の中で出てきた…。」
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え〜ふぃ ☆2009.07/03(金)21:45
Mission8-4 カズマ編4 夢の跡

「寝ていて、起きたらダークライを捕まえていただと?」
カズマは黙って頷いた。
「にわかには信じられぬ話だな…。」
黒井局長も、表情が険しい。
「局長、しかしながらカズマも我が精鋭隊Pixieの一員。ダークライを捕まえる事に成功しても不思議はないと思いますが…。」
「しかし、奇妙な話だな…。君が大戦中の夢の中で玲とちるるに出会い、ダークライにも出会っていて目覚めたら捕獲…か。」

「しまーす。」
局長室に入ってきたのは玲とちるるだった。
「あれ?ここで何やってんの?…って、何だこのデカイまっくろくろすけは…?」
「・・これって…もしかしてダークライじゃ…。」

「その通りだちるる。昨夜カズマが捕まえたらしい。だが、カズマも夢から覚めたらボールに入っていたという事しか分からんらしい。」
「夢…?どんな?」
カズマは、ちるるに夢の事を全部話した。
玲もそれを聞いて驚いていた。
「じゃあ、君があの時のカズマ君…。大きくなったから、今まで分からなかった…。」
「そういや…似てるな…。あの時の子…無事に生きてたか…。」
「2人とも、覚えててくれましたか?」
「ええ…。」

「しかし局長、ダークライの謎が解けませんな。私も、ダークライについてはあまり詳しく知りませんし…。」
「ダークライに関しては、謎が多い。悪夢を見せるポケモンだと言われているが…それもダークライ自身の意思によるものではないという学者もいる。」

「でも、まさか無事だったとはな…。てっきりもう生きていないと思ってた…。」
「いえ、お二人が敵を食い止めてくれたから…。」
「え…?」
「お二人が命がけで敵を防いでくれたから、オレ助かったんです。」
「ちょっと待って…私たちはあの時、2人ともやられちゃって…。」
「ああ…敵は避難所の方へと向かっていった。あの子にはすまないと思っていたが…。」

カズマは、ただ驚いていた。
確かに夢の中では、何事もなく避難所に辿り着く事が出来た。
ならば、一体どういう事なのだろうか…。
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え〜ふぃ ☆2009.07/03(金)22:32
Mission8-5 カズマ編5 誰も知らない真実

これから述べる事柄は、玲もちるるも、カズマ本人でさえ知らない…。
知っているのは、ダークライだけ・・という事をまず述べておく。


玲とちるる、2人の前に群がる10348体のデオキシス。
2人は、ただひたすらに戦っていた。

「キリがねえ…ゴキブリかこいつら…。」
「玲…もうルビーたちも限界…。もうあたし達で戦うしか…!」
「ぎんときもさっきやられちまった…。もうオレたちだけか…。」

数はまだ悠に3000は下らないだろう。
その大軍に、玲とちるるは取り囲まれていた。
「どうやら…ここまでね…。」
「ああ…多分武麗たちもやられちまったんだろう…。もうオレたちしかいない…。」
2人とも息が切れぎれで、目もかすみ始めていた。

「さ…どうする、ちるる…。このまま大人しく…ヤツらに殺られるか…。」
「…。」
「それとも、無駄かもしれねえが悪あがきするか…だ。」
「…どっちにしても、ここであんたなんかと一緒に死ぬってトコが…気に入らないね…。」
「おいおい…最後まで言う事キツいな…。」
「…そうね…悪かった…。」
「…すまねえな…。お前は死なせたくなかったが…。」
「…気にしなくていいよ。…お別れだね…これで…。」
「ちるる…本当にすまねえ…。」
「もう謝らなくていいから!あんたがあたしに謝るなんてあり得ないから!うああー!」
そう叫ぶと、ちるるは敵の方へと向かっていった。
(ちるる…こんな世界でも…強く生きてるお前に出会えて良かった…。お前と一緒になら、オレは本望だ…。ありがとよ…。)
「てめえら、オレたちを誰だと思ってやがる!かかって来いや!」

「その後、気が付いたら敵は全滅してて…オレたちは武麗の隊に救出されてた。」
「あの敵どもは、お前たちが倒したと思っていたが…違うのか?」
「ええ…。少なくとも私は、途中で意識がもうなかったし…。」
「オレもちるるがやってくれてたんじゃないかと思ってた。」


結局、2人はデオキシスの大軍と戦って敗北。
だが、そこに偶然黒い影が現れる。
それこそが、ダークライであった。
ダークライは、自らに悪夢を見せる根源、デオキシスを自ら倒しにしに来たとでもいうのだろうか。
その凄まじい能力を発揮し、デオキシスを一網打尽にしてみせた。

――その数時間後。
戦いで全ての力を使い果たしたダークライは、避難所から数kmほどの場所でカズマによって発見される。
「あれは…ポケモン?黒いポケモンがいる。」
黒いポケモンは、弱っているようだった。
「ほら、しっかり捕まって。もうすぐで避難所なんだ。一緒に行こう。」

カズマはダークライと共に、避難所へと辿り着いた。
「子供か…。親御さんとは一緒じゃあないのか?」
避難所でカズマを出迎えたのは、当時20歳だったリクである。
「はい…多分この避難所にいると思います。それと…このポケモン弱ってるみたいで連れてきました。」
もう1人で迎えたのは、同じく未来のPixieの1人である羽葉、当時22歳であった。
「酷いケガですね…。ポケモンは私が預かります。」

――さらに数日後。
ダークライはすっかり元気を取り戻した。
カズマも、無事に両親に再会出来た。
さらに、大戦の終わりを告げるニュースが全国のメディアを通して放送された。

「このポケモン…ダークライじゃないかな…?」
羽葉は黒いポケモンをダークライだと指摘する。
「ダークライ?」
「人に悪夢を見せるポケモンだって聞いた事がある…。」

ダークライは、避難所内で特に何かをするという事はなかった。
大戦が終わった後も、復興作業がある程度完了するまでは施設内での生活を続けていたカズマたち。
しかし、やがて施設内でダークライを恐れる者も増え始めた。
さらに、大戦の原因はダークライではないかという根も葉もない噂まで広がり始める。

だが、カズマも人々も知らなかった。
大戦を終わらせた張本人がダークライであった事を。
ダークライは堪え切れず、施設内の人間を自身の能力で深く眠らせ、同時に自分に関する記憶を消し、再び姿を消した…。

「でも、やっぱりどこかで会った事があるような気がする…。」
カズマとダークライが出会っている事を覚えているのは、ダークライだけである。
大戦がどのようにして終戦したのかを知っているのもダークライだけ。
この真実が、この世における歴史の事実として人々に知られる日は決してやっては来ないだろう。
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みんなの感想

この物語に感想を書こう。みんなの感想は別のページにまとまってるよ。


物語のつづきを書きこむ

ここにつづきを書けるのは、作者本人だけです。本人も、本文じゃない フォローのコメントとか、あとがきなんかは、「感想」のほうに書いてね。

物語ジャンルの注目は、長くなりがちなので、いちばんあたらしい1話だけの注目に なります。だから、1回の文章量が少なすぎると、ちょっとカッコわるいかも。


状態(じょうたい)

あんまりにも文字の量が多くなると、 ()み具合によっては エラーが出やすくなることがあるよ。ねんのため、 本文をコピーしてから書きこんでおくと、エラーが出たとき安心だね。

シリーズのお話がすべて終わったら「終了」に、文字数が多すぎるために テーマを分けて連載を続ける場合は「テーマを移動して連載」(次へ)に 状態を切り替えておいてね。この2つの状態の時に、「次の作品に期待」 されて感想が書き込まれると、次のテーマが作れるようになります。

しばらくお話の続きが書けなくなりそうな場合は「一時停止」にしておいてね。 長い間「一時停止」のままの物語は、Pixieの 容量確保(ようりょうかくほ) のため消されることがあるので、自分のパソコンに 保存(ほぞん)しておこう。

やむをえず、連載を 途中(とちゅう)で やめる場合は、凍結をえらんでね。ただし、凍結をえらんでも、次の物語が 書けるようにはなりません。感想をくれた人や、次回を楽しみにしてた人に、 感想 で おわびしておこう。


ポケットモンスター(ポケモン)のページ「Pixie(ぴくしぃ)」