ぴくし〜のーと あどばんす

物語

【ぴくし〜のーと メイン】 【テーマいちらん】 【おともだちぶっく】 【みんなの感想】

終了[1276] STAR ANISE 著・作シキミ

え〜ふぃ ★2012.02/22(水)22:04
まえがき

こんにちは、シキミです。この度はこの本を手に取って下さり、誠にありがとうございます。
今回は私、四天王シキミとしてのポケモン人生の体験談を綴っています。
思い起こせば、色んな人が私に挑戦してきました。
その中でも私が特に印象深かったエピソードを選り抜いて、本書を執筆する事になりました。

私は小説家でもありますが、やはり一番誇りにしているのが四天王というお仕事です。
やはり私もポケモントレーナーですから、ポケモンと一緒に戦っている時が一番幸せなんです。
その幸せを、人とポケモンのふれあいを通す形で何か残せないかと思い、小説を始めました。

私と私と戦った沢山の方々との思い出が、本書に詰まっています。
どうか最後のページまで、少しでも楽しんで下されば幸いに存じます。

20XX年 〇月△日 SHIKIMI


〜目次〜

まえがき

第1部 初めての挑戦者

第2部 光る水輪

第3部 エレキチックな男

第4部 女の友情

第5部 真実一路

あとがき
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え〜ふぃ ★2012.02/17(金)00:41
第1部 初めての挑戦者・前編

それは、私がイッシュリーグ四天王に着任して初めての挑戦者と戦った時の事だった。
対戦相手は、まだ幼い…14歳か15歳くらいの少年だった。
話を聞くと、11歳の時に実家からポケモントレーナーとして旅立ち、3年ほどかかってようやくここまで来たのだという。
私よりずっと若いが、彼はジムバッジを必死に集めてやってきた由緒正しき挑戦者。
だが、私も初仕事とはいえ四天王として簡単に負けるわけにはいかない。

少年は、かなり緊張した様子だった。
「どうしたの?緊張してるの?」
私は彼に優しく聞いてみた。
「い…いえ。大丈夫です。ただ、四天王の方に会ったのは初めてだから…。」
実は、緊張しているのは私も同じだった。
四天王として、初めての挑戦者。
初めての挑戦者と戦うのは、凄く楽しみであり同時にまた緊張もしていた。
だが、私が彼の前で緊張の顔色を覗かせるわけにはいかない。

「さあ、始めましょう。あなたのポケモンを出して下さい。」
「は…はい!」
返事をした彼はモンスターボールを取り出し、ボールを投げてポケモンを出した。
出てきたポケモンはヨーテリーだった。
そして私もモンスターボールを投げ、デスカーンを出す。

「そのヨーテリー…かなり鍛えられていますね。そのポケモンと一緒にずっと旅をしてきたのね…。」
「はい。ボクの一番のポケモンです。」

声が少し震えている。少年は、まだ緊張している様子だ。
いや、違う…緊張ではなく、怯えている…私にはそう見えた。
よく見ると膝も少し笑っている…目の前の少年は、私に対して怯えている…私の四天王としての力を肌で感じているとでもいうのだろうか。
まるで私を、人生で最も大きな強敵と感じているように思えた。

「では、私から攻撃を仕掛けさせてもらいますよ。行きなさいデスカーン!」
私のデスカーンはシャドーボールを撃つ態勢に入った。
しかしヨーテリーは全く動じず、じっとこちらを睨んでいる。
少年とは対照的に、あのヨーテリーの眼差しからは勇気と自信を感じさせられた。
体も少しも震えていない。大きさも私のデスカーンと比べてずっと小さいのに堂々としていて、逆にどこか逞しさすら伝わってくる。

するとヨーテリーは少年の方を振り向いた。
そして、その小さくも逞しいポケモンは、人生で一番の難敵と向き合い心に怯えの芽が息吹いたトレーナーを見つめ小さく…そして優しく吠えた。
まるで、あのポケモンが少年を励ましているかのように…。
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え〜ふぃ ★2012.02/17(金)00:43
第1部 初めての挑戦者・後編

優しく吠えた彼のヨーテリー…。
その優しい声と優しい笑顔に、彼の怯えた表情が変わった。
そして、私は理解した。
彼と彼のヨーテリーが、私の想像以上に強い絆で結ばれている事を。

「行け!デスカーン!」
私は、迷わずにデスカーンに攻撃を指示した。
ノーマルタイプのヨーテリーにシャドーボールは効果がない。
私はそれでも敢えてシャドーボール指示した。
攻撃ではなく、まずは一番の得意技を見せて威嚇し、四天王としての力を見せつけるために。

しかし、ヨーテリーは予想外の行動に出た。
自分の体よりずっと大きいブラックホールのようなシャドーボールに突っ込んでいったのだ。
ダメージがないと分かっていたとしても、あの漆黒のシャドーボールの前で全く動じずに逆に攻撃を仕掛けて来るとは。
さらに、小さな体を活かしての突進スピードも速く、シャドーボールをすり抜けあっという間に私のデスカーンの懐に飛びつき噛みついて来たのだ。

もう、威嚇など無意味だ。
私は直ちに、全力であのヨーテリーを倒す事にした。
思えば先程の行動は私の甘さだったのかもしれない。
攻撃ではなく、威嚇を選んだ私は四天王として甘かった事を自覚した。

まずはヨーテリーを振りほどかなくては。
あの噛みつかれたままの状態では、デスカーンの傷が深くなり下手をすれば致命傷にもなりかねない。

「デスカーン、振りほどきなさい!」
「ヨーテリー!頑張れ!負けるな!」
少年は、必死にヨーテリーの応援していた。
ヨーテリーの噛む力が予想以上に強く、デスカーンの腕力ではヨーテリーを撥ね退ける事は出来なかった。
「やむを得ない…デスカーン、こうなったらそのままエナジーボールは撃てる?」

私の指示を聞いたデスカーンは、ヨーテリーに噛みつかれたまますぐさまエナジーボールの体制に入った。
あのヨーテリーから感じた勇気と自信…まるでデスカーンという魔王に挑む小さな勇者のようにすら見える。

小さな勇者は、なりふり構わず勇敢に魔王に突進し、そして牙という名の剣を突きつけた。
デスカーンも、エナジーボールを噛みつかれた至近距離からヨーテリーに発射した。
この超至近距離からの攻撃だ、技を放ったデスカーン自身もヨーテリーへの命中の衝撃によるダメージは避けられない。

エナジーボールの光に、勇者と魔王が包まれた。

そして―
光が消えたかと思うと、横たわっているヨーテリーと辛うじて立っている私のデスカーンがいた。
デスカーンは、息も絶え絶えであった。
ヨーテリーは、まだ意識があるようで私のデスカーンを倒れながらも睨みつけていた。
もうヨーテリーの体力は尽きているはずだ…しかし何という精神力だろうか。

「ヨーテリー!大丈夫か!」
少年は思わず自分の相棒の元に駆け寄った。
「もういい…もういいんだよ…。」
少年はヨーテリーをゆっくりと持ち上げて抱きしめた。

私はデスカーンをモンスターボールに戻し、その場を立ち去ろうと後ろを向いた。
「あ…あの!シキミさん!」
少年の声が聞こえた。さっきまでとは別人のように鋭く力強い声だった。
私は、ゆっくりと彼の方を振り向いた。

「シキミさん…また…また戦ってくれますか?…ボクと!」
彼は真っ直ぐに私の目を見て語りかけた。

その言葉に私はにっこりと微笑み、そしてまた振り向いて立ち去った。
心の中で、彼と彼の相棒の小さな勇者に拍手を送りながら。

そして彼らは、あの時よりも大きくなって、いずれまた私の前に現れるのだろう。
あの少年とヨーテリーの2人は、私にとって最初にして最高の挑戦者だった。
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え〜ふぃ ★2012.02/17(金)00:48
第2部 光る水輪・前編

その日、私は仕事も休みで久しぶりに羽を伸ばそうとショッピングモールR9に出掛けていた。
休日は、私は大抵ここで買い物をしている。
私もイッシュリーグ四天王の1人、それに小説家でもあってそれなりに有名になってしまったので出来るだけ目立たない格好で出掛ける事にしている。
私は望んで有名になったわけではないし、この事は読者の方々だけにそっとお教えするが、私がどんな格好で出掛けているかまではちょっと言えない。
尤も、今のところ私に気が付いている店員もお客さんも1人もいないようだから、私もこんな形でこっそり暴露してしまっているわけなのだが。

私が買い物を終えて帰ろうとした時、何人もの女性が集まっているのが見えた。
誰か男性アイドルでも来ているのだろうか、と私は思った。
気になったので、私も女性たちの集まりに混じって様子を見てみると…そこにはあの男がいた。

あの男は、確かホウエン地方のジムリーダーでミクリという男。
水ポケモンの使い手であり、その容姿端麗な顔立ちから女性から圧倒的な人気を誇っているそうだ。
私も彼を生で見るのは初めてだが、まさかこんなところでお目にかかれるとは。

女性たちが集まっている理由も分かったし、ミクリさんを見る事も出来たので私はそっと集団から抜け出して帰ろうとした。
そして、R9を何食わぬ顔で出た。もしかしたら、ミクリさんが私の顔を知っていて名前を呼ばれるかもしれないと思ったから。
私も、あまり人前で目立つ事は好まない性格だから、あえてそっとR9を出たのだった。

帰る途中でソウリュウシティにも寄るつもりだったので、そちらに向かっていた時の事だった。
「もしもし、お嬢さん?」
誰か、男性から後ろから呼ばれた。
私が振り向くと、そこにはミクリさんがいたのだ。
私に気が付いていたのか?

「あの…私に何かご用でしょうか?」
私は動じないフリをして質問した。
「あなたは…もしやシキミさんでは?そうなんでしょう?」
まさか、私に気が付いた人は今まで1人もいなかったのに簡単に見破られるなんて…これもジムリーダーの眼力なのだろうか。
私は観念して、正直に話した。

「…ええ、そうです。」
「やっぱり。あなたは、人前で目立つ事を嫌ってあの時私に何も言わずに立ち去った。そうですね?」
どうやら、彼には全てお見通しだったようだ。
「ご心配なく、このあたりは人通りも少ないでしょう。だから私から話しかけました。」

それにしても彼は、何故私に話しかけてきたのだろうか…。
「あの…ミクリさん。私に何かご用でしょうか。お会い出来て光栄なのですが、今日はオフなんです。」
「ええ、そうだと思いました。でも、私もジムリーダーとして、いや1人のポケモントレーナーとしてあなたと勝負をしたいんです。」
彼の眼差しは真剣そのものだった。
先程まで、アイドルのような笑顔を浮かべていた彼と、今の彼とは別人のようだ。
ポケモントレーナーの目をしている。それも、その眼の中に燃え上がるような闘志を宿しているかのように思えた。

そして勝負を快諾した私とミクリさんは、ソウリュウシティまで同行しジムで対戦する事にした。
ジムリーダーのシャガさんも、快く闘技場の使用許可をして下さった。

「ここがソウリュウジム…なるほど…とても厳かな感じがします。ここは対戦に集中するには最適ですね。」
ミクリさんは、ソウリュウジム内を感心しながら見物していた。
そして、闘技場に私たちは辿り着く。

「では、よろしくお願います。」
深く一礼をするミクリさん。
「こちらこそ。いい試合が出来るといいですね。」
私も彼を見習って一礼した。
ミクリさんは、一見華やかでナルシストっぽくも思えるが、ポケモンバトルに関しては礼儀を重んじる人物である事が、1つだけ分かった。
私にとっても、ミクリさんのこれまでの外見と言動にはギャップを感じていたが、やはり彼もポケモントレーナーとしての立派な心構えを持っている。

「では、私のポケモンはこれです。」
ミクリさんがモンスターボールを投げると、ミロカロスが出てきた。
「ミロカロスですね…。私もあまり見た事はありません。」
ポケモンで最も美しいとされるミロカロスは、希少なポケモンであるため連れているトレーナーは滅多にいない。
私は、同じ水タイプを持つブルンゲルで勝負する事にした。

私は最初ミクリさんに話かけられた時には内心、戸惑いのようなものを覚えていたが、段々楽しみになってきた。
ホウエン地方のジムリーダー・ミクリ…彼がどんな戦いをするのか取材するのも悪くないと思ったのだ。
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え〜ふぃ ★2012.02/17(金)00:32
第2部 光る水輪・後編

「じゃあ、私から行きます。ミロカロス、なみのり!」
ミクリさんのミロカロスは、いきなりなみのりでの攻撃をしかけてきた。
凄まじい波が私のブルンゲルを襲う。

やがて、私のブルンゲルが波に飲みこまれていった。
だが私は顔色一つ変えずにブルンゲルに指示を飛ばした。
「ブルンゲル、シャドーボールを!」

波に飲まれながらもそこから勢い良く飛び出したブルンゲルはシャドーボールでミロカロスを迎撃する。
ブルンゲルの攻撃は、ミロカロスの作り出した波を突き破って命中した。
どうやら、波を突っ切った不意をつかれてまともに喰らったらしい。
ミクリさんのミロカロスは大きくよろめいた。

「これは…あの攻撃でブルンゲルは何ともないというのか…?」
「まだまだ、このまま追撃させてもらいますよ。」
ブルンゲルはすかさず2発目のシャドーボールの態勢に入った。

「ミロカロス、次が来るぞ!態勢を整えて備えろ!」
ミクリさんもミロカロスに必死に呼びかける。
ミクリさんの言葉を聞いたミロカロスは、我に返ったかのように態勢を素早く立て直した。
「やはり四天王のシキミさんは強い…。私の力で勝てるのだろうか…。」

一般的に四天王とジムリーダーでは、やはり格が違う。実力差は明らかなのだ。
ミクリさんは、それを承知で四天王である私に勝負を望んだ。
だから私も全身全霊を込めて彼と戦いたい、そう思っていた。

「今からじゃあ攻撃はかわせないか…。その態勢でアクアリングは出来るか?ミロカロス!」
ミクリさんの言葉を聞いたミロカロスは、自身の周りに水玉で出来たような輪を作り出した。
ミロカロスのアクアリングであった。

そして私のブルンゲルも追撃のシャドーボールを放った。
先程と同様にミロカロスに命中した。
これでミロカロスは、2発のシャドーボールを受けた事になる。
いくら体力的にタフなミロカロスといえど、かなり消耗してきているはずである。

「ミロカロス…まだまだこれからだ…。まだ始まったばかりだッ!」
ミクリさんの必死な想いはミロカロスへと伝わっていた。
そしてその想いは、この私にも。
あのアクアリングには、ポケモンの傷を少しずつ癒す力がある。
あの時ミロカロスは、私のブルンゲルの攻撃をかわす事も迎撃する事も出来ない状況だった。
唯一、アクアリングだけがミクリさんとミロカロスに残された手段だった。
ダメージを2度も受けると分かっていても、それに抗うための彼らなりの精一杯の行動。
アクアリングを使わなければ、ミロカロスは戦闘不能に追い込まれていただろう。

あのミクリさんとミロカロスの…トレーナーとポケモンの想いが重なり繰りだされたアクアリングのきらめき…それだけが彼らを支えていた。
そして、そのきらめきは本当に美しかった。
この勝負は結局私が勝利したが、本当にいいものを見せて貰ったと今でも思っている。

彼らの絆と、その絆が作り出した美しいきらめきも、私は決して忘れる事はないだろう。
遠いホウエン地方のジムリーダーも、人間とポケモンの絆を大事にしている…それが見られたあの日は本当に素晴らしい1日だった。
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え〜ふぃ ★2012.02/17(金)00:54
第3部 エレキチックな男・前編

今日もまた、1人の挑戦者がやってきた。
その挑戦者は、以前シンオウ地方のある少年トレーナーと戦い敗れた事がきっかけで、
現在イッシュ地方にトレーナーとしての修行をしにやってきたのだという。
そしてジムバッジを短期間で8つ集め、その男は私の前へとやってきた。

ちょっと変わった感じの男だ。
一見ポケモントレーナーには見えないような、どこか脱力感の垣間見える男だった。
金髪に染めた頭に、ちょっと陽気で軽い口調で話すその男。
だが、私には彼をどこかで見たような気がしてならなかった。

「なあ、あんた。10まんボルトって知ってる?」
私に挑戦しに来た男の第一声、というか挨拶がこれだった。
「は…?」
「10まんボルトだよ10まんボルト。あんたは知ってるのか?」

会うなりこんな質問を投げかけてきた。
無論、10まんボルトくらい私だって、読者の方々だってご存じのはずだ。
電気タイプの技の1つであり、イッシュから遠く離れたカントー地方などに生息するピカチュウが覚える事でも有名だ。
技マシンもあるし、ポケモントレーナーであろうとなかろうと広く知られている。
なのに、この男はまるで私がそんな事も知らないで四天王をしているとでも思ったのだろうか?

「コホン…もちろん、知っていますよ。あなた、一体どなたなんですか?挑戦者の方ですか?」
私が少しムッとしながら尋ねると、彼はこう言い返してきた。
「そうか。だが10まんボルトは知っていても、電気ポケモンとはどういうものか、あんたには分かるかい?」
「電気ポケモン…ですか?」

さらに会話は続いた。
彼はどうやら、電気ポケモンの使い手であるらしい。
電気ポケモンに強い拘りを持っており、ここイッシュではシビシラスから大事に育ててきたシビルドンで今日、私に挑戦したいのだそうだ。
私は読者の方々もご存じの通り、ゴーストポケモンを愛用している。
持っているのは、シャンデラをはじめとする、ゴルーグやデスカーンにブルンゲルなど…全部ゴーストタイプである。

「俺はただ、1人のポケモントレーナーとしてあんたと勝負したいだけさ。俺の修行に付き合ってもらうぜ。」
そう言うと彼は、先程言っていた通りボールからシビルドンを出してきた。
「さあ、あんたのポケモンを見せてくれ。」
彼がそう言ったので、私も仕方なく、とりあえずモンスターボールを投げてポケモンを出した。
私が出したポケモンは、シャンデラだった。

「シャンデラか…。俺も初めて見るポケモンだな…。これは面白い戦いが出来そうだぜ。」
「ねえ、1つ聞かせていただいてもいいかしら?」
「ん?何だ?」

私は、今思ってる事を彼にぶつけた。
「あなた、今日私に挑戦しに来たのでしょう?ならば、せめて挨拶くらいキチンとするのが礼儀ではないですか?」
お堅い事を言っていると私も考えていたが、それ以上に彼の態度があまりにも軽々しかったと思っていた。
「あなたはまだご自分の名前すら名乗っていない…。あなた、一体何者なんですか?」
「ちょっと待ってくれ…俺はあんたの名前も小説家って事も知ってる…。でもあんたは本当に俺を事を知らないのか?」
「…?」
確かに私には、先程から彼を知っているような気がしてならなかった。
電気ポケモンの使い手、シンオウ地方の少年と戦った…だがそれだけでは彼が誰なのか判るはずもない…。

「まあいいや。これから戦って、あんたに俺の事を教えてやるよ。」
「ちょっと待ちなさい!まだあなたの挑戦を受けるなんて言ってませんよ!」
「そう言いながら、もうポケモンを出してるじゃあないか?ならばこっちから行かせてもらうぜ!行け!シビルドン!」

私が彼を止めようとするや否や、彼はもうシビルドンに攻撃を指示していた。
シビルドンが放とうとしているあの技は…紛れもなく10まんボルトだった。

そしてこの時、まだ私は知る由もなかった。
「10まんボルトって知ってる?」…挨拶代わりにそう言った男の名前が「デンジ」だと知るのは…ポケモン勝負の後だった。
かつて、シンオウ地方最強のジムリーダーと謳われた男、デンジ。
彼の力が私の想像以上だった事を、私はまだ知る由もなかったのだ。
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え〜ふぃ ★2012.02/17(金)01:15
第3部 エレキチックな男・後編

私はまだ挑戦を了承していなかったが、すでに戦いは始まっていた。
シビルドンから放たれる10まんボルトは、確かにかなりの威力を持っている事は私にもすぐに理解出来た。
「やむを得ない、やるよシャンデラ!」

私のシャンデラも戦闘態勢に入り、まずは10まんボルトを軽く身をかわして回避した。
「どうしてもやるというのなら、手加減は無用。シャンデラ、オーバーヒート。」
攻撃の回避と同時に、私のシャンデラは激しい炎を身に纏いシビルドンに突進した。

「来たな…シビルドン、迎え撃て!」
彼のシビルドンは、再度10まんボルトを私のシャンデラに放ってきた。
だが、パワーでは私のシャンデラの方が上だったようだ。
10まんボルトを突き破り、シビルドンにオーバーヒートは炸裂した。

「よし、いったん戻っておいで。」
私の声を聞いたシャンデラは、すぐに私の元へと戻ってきた。
彼のシビルドンは、オーバーヒートのダメージで体に大きな火傷を負っていた。
シャンデラは、私の持っているポケモンの中では最強と自負している。
このポケモンのオーバーヒートの威力には、私も自信があるつもりだ。

「シビルドン、大丈夫か…?」
シビルドンはかなり痛がっているようだが、まだまだ戦闘意欲は残っているようだ。
「大丈夫そうだな…だが、やはり四天王のポケモン、今のはいい攻撃だったぜシキミさんよ。」

初対面だというのに、しかも挑戦者の方が私をなれなれしく呼ぶなど…でも彼のペースに巻き込まれてはいけない。
心を冷静に保ち、次の攻撃で彼のシビルドンを確実に仕留めて四天王の力を示さなくては。
彼のポケモンが鍛えられている事は理解出来るが、まだまだ半人前だ。
技の威力は素晴らしくても、攻めが単調過ぎる。

「じゃあ、次はこの技で行くぜ!」
シビルドンは態勢を立て直すと、いきなり猛スピードで突進してきた。
「これは…?」
少し不意をつかれてしまった、いや油断してしまったのだろうか。
彼のシビルドンの攻撃を交わす事が出来なかった。

シャンデラはシビルドンの突進を受けてしまったが、ダメージは浅い。
すぐに態勢を整えて反撃に備える。
「シャンデラ、シビルドンは…。」

いない。姿が見えないのだ。
シビルドンはどこに行ったのか…。
「さあ、ドンドン攻めていこうぜシビルドン。」

するとまた、今度は背後から攻撃されてしまった。
あれは紛れもなくシビルドンの姿だった。
あのシビルドンが、これほどのスピードで動けるものなのか…。

さらに、3発目、4発目の攻撃を浴びせていく彼のシビルドン。
シャンデラの体力は、徐々に消耗していった。
「このままではやられる…この技が何なのか見極めなくては…。」

シビルドンは力は強いが動きは鈍く、技の発動にはやや長い時間を要する。
だが、一度技を出し終えてからこれほどのスピードで動けるとしたなら、その答えは技自体にあるはずだ。

「はっ!…まさかこの技は…。」
「ようやく気付いたようだなシキミさん…。だが、もうこの技をかわしきれまい…。いつまで持つかな…。」
この男…「この技」をこんな形で応用してくるとは…私は彼が自分が想像していた以上の実力者である事を思い知らされた。
だが今は、この状況を打開する事が先決だ。

「シャンデラ、あなたは私が最も信頼するポケモン…。これくらいの攻撃で、あなたは倒れたりしない…そうでしょう?」
私の言葉に、シャンデラは応えてくれた。
シャンデラは最後の力を振り絞ってもう一度オーバーヒートを発動させる。

「そっちも最後の一撃か…。だが、俺のポケモンがどこにいるか分かるまい。」
「…そうかしら…。私のポケモンはすでに、めいそうしながらあなたのシビルドンの位置を探っていたわ。」
「何?」

相手が見えない時、頼れるものは肉眼ではなく心の眼…。
シャンデラは攻撃を耐えながらも精神を集中して相手の位置を探っていた。
するとシャンデラは、後上方から猛スピードで迫るシビルドンのの位置を見抜いて振り向き、そのまま体当たりした。
炎と電気のパワーが火花を立ててぶつかりあった。
そして、シャンデラがシビルドンを吹き飛ばした。

吹き飛ばされたシビルドンは、そのまま大きな音を立てて地面に落下した。
シャンデラは、空中からよろよろと私の元へと戻ってきた。
息も切れ切れだ。すでに限界だったのだろう。
「よくやってくれたわ…。さあ、ボールの戻ってゆっくり休んで…。」
私はボールにシャンデラを戻しながら、彼の倒れたシビルドンの方を見ていた。

シビルドンは、フラフラになりながらも起き上がった。
だが、あのシビルドンに戦う力はもう残されていない事は、私にもあの男にも判っていた。
男は、ゆっくりとシビルドンに歩み寄り、頭を少し撫でてあげ、ボールの中に戻した。
うつむいている…さっきまで陽気な感じもしたあの男も、やはり勝負に敗れると落ち込むものなのだろうか。

「あの…大丈夫ですか?」
私は少し心配になったので、彼の方へと歩み寄った。
「…は…は。」
私には、彼がうつむきながら何か言っているように思えた。

「あの…挑戦者さん?」
「…ッハッハッハッ!!アッハッハッハッハッ!!」
何といきなり、彼は大声で笑い出した。
流石に、私もびっくりしてしまった。

「流石だ、四天王のシキミさん!やっぱりあんたは強いよ!大したモンだよ!アッハッハッハッ!!」
「な…何がおかしいんですか?勝ったのは私になのに…どうして。」
「どうして?こんな楽しいバトルが出来たんだ!俺は今、嬉しくてたまらない!」

その後、彼は自分の事を全て話してくれた。
名前はデンジ、元シンオウ地方ナギサシティのジムリーダーで、シンオウジムリーダー最強と謳われていたのだそうだ。
それを聞いた私は、ようやく彼の実力にも、彼を知っているような気がしていた事にも納得する事が出来た。

「ジムリーダーの方だったんですか…。」
「ああ、元…だがな…。あの時、俺は退屈なジムの毎日に飽き飽きしてた。でもそんな時にあの子がやってきてさ。」

彼はさらに語った。
シンオウ地方でギンガ団と戦った1人の少年と彼は最後のバッジをかけて戦い、そして敗れた事を。
それがきっかけで、イッシュ地方に修行に来た事も。

そして、別れの時がやってきた。
「いい戦いが出来た。ありがとうシキミさん。」
デンジさんは、私に手を差し伸べてきた。
「こちらこそ、私も勉強になりました。本来交代で使うボルトチェンジのスピードを連撃に応用するなんて…あなたのその型破りな戦い方には私も…。」
「いや、俺もまだまださ。今の俺じゃあ、あんたにも、そしてオーバにもあの子にも勝てない…。また明日から一から修行のやり直しだな。」
「あなたはもっと強くなれますよ、きっと。また挑戦しに来て下さい。でも同じ手はもう食いませんよ。」

私は彼と握手しながら再会の約束をし、彼を見送った。
日が沈みかけた夕日の道を1人歩くデンジさんの後ろ姿を、私は夕焼けと共に深く心の眼に焼き付けたのだった。
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え〜ふぃ ★2012.02/22(水)21:37
第4部 女の友情・前編

あれは、確か初夏の日の事だったと思う。
不思議な事に、何月の何日だったのかは覚えていない。
私は同じイッシュリーグ四天王であり、親友でもあるカトレアと一足早いバカンスへとやってきていた。
まだ少し肌寒いので海で泳ぐ事は出来ないが、非常に空いていて休暇を楽しむにはもってこいだ。

私たちは、少し離れた島までイカダを作って出掛ける事にした。
女2人でイカダ作りは少し大変だが、ポケモンたちに手伝って貰えば簡単に出来た。
特に頑張ってくれたのが、私のポケモンの1つであるゴルーグだった。
力仕事は、ゴルーグに任せれば何だってこなしてくれる。
おかげで、イカダはあっという間に出来上がり、私とカトレアはイカダでちょっとした航海に出掛けた。

「まだ少し寒いけれど、潮風が気持ちいいですわね…。」
カトレアもご満悦の様子だ。
私も、ゆっくりと揺れながら進むイカダから後ろを見てみた。
すると、すでにかなり離れていた。
向こうにある島には何があるのだろうか…私たちはワクワクしながら進んでいった。

私とカトレアは、イカダに乗って四天王の事やポケモンの事など色々と語り合った。
カトレアは四天王では一番若く、四天王としては私の後輩にあたる。
後輩と言っても、時期的には数か月ほどしか変わらないけど…。
四天王歴が一番長いのがレンブさんで、次がギーマさんである。
私たちは、比較的同期に近い存在でもあり女同士という事もあってか、とても親しい仲となっていた。

「ねえ、レンブさんっていつもああいうお熱い方なのかしら…?」
「えっ?そうね…やっぱり若い時のアデクさんに似て来たのかしら?」

「ギーマさんって、やっぱりワタクシはちょっと苦手…。」
「そう?ちょっと変わってて難しいところもある人だけど、本当はいい人よ?」

「そう言えばさあ、カトレア聞いてよ。こないだR9に行ったらさあ、バーゲンのリゾチウムとインドメタシンが開店30分後には売り切れたのよ〜。」
「まあそうなんですか…。きっとそんなに売れると思ってなかったのね…。その日はおいくらでしたの?」
「いつも9800円のところ、その日は半額の4900円。」

とまあ、私とカトレアが顔を合わせればこんな会話が長々と続いていく。
ちなみに、これらは私たちの会話ではほんの一部のそのまた一部に過ぎない。
彼女と話をしていると、時間が経つのも忘れるくらい楽しいのだ。
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え〜ふぃ ★2012.02/22(水)21:42
第4部 女の友情・中編

私たちが話し込んでいると、いつの間にかイカダが島に辿り着いていた。
すっかり言い忘れていたが、イカダはカトレアのエスパーポケモンたちが念力で誘導してくれていたのだった。

「いつの間にか着いていましたのね…。すっかり話し込んじゃって気付きませんでした。」
「そうね…。」
島に足を踏み入れる私たち。

「ゴチルゼル、ランクルス、シンボラー…ご苦労様。」
カトレアは、イカダを誘導してくれたポケモンたちにお礼を言ってモンスターボールに戻していた。
「そう言えばカトレア、今日はムシャーナは持ってきてないの?」
「いえ…、でも最近この子…。」
「あ、そっか…。」

先程イカダの揺られている間、カトレアのムシャーナの事も話題に上がっていた。
最近、カトレアのムシャーナのサイコパワーが日に日に大きくなっており、制御が難しくなっているようだ。

「ワタクシのムシャーナ、また強くなりましたの。最近念力の自制がなかなか効かなくて…どうすればいいのでしょう?」
「まだ強くなってるの?あなたのムシャーナ…もう十分過ぎるほど強いと思ってたけど…これじゃあ私たちの立場がなくなるじゃあない…。」
さっきもこんな話をしていたところだった。
「どうしたのかしら…この子…。」

カトレアにとって、ムシャーナは初めてのポケモンでもあった。
幼い頃、カトレアは自分が持っている大いなる力を制御出来ずに暴走していたらしい。
彼女は、代々有能なポケモントレーナーを輩出していた由緒正しい家系に生まれた。
その中でも、彼女は特にサイコパワーに近い何かを持った、全く新しい子孫として生まれているのでは…
と、まことしやかに噂されているとも聞いた事がある。
それ故か、エスパーポケモンを使わせれば彼女の右に出る者はいなかった。
そんなカトレアの最初のポケモンがムンナで、バトルをする事はほとんどなかったが順調に成長し、ムシャーナへと進化もした。

ムシャーナは、未だ現代科学でも未知の部分が多いポケモンとされている。
夢を食べるポケモンとして研究されているそうだが、数か月前にムシャーナの不思議な力を利用した施設が出来上がった。
ハイリンクと呼ばれる場所で、夢で出会ったポケモンと出会う事が出来らしいが、詳しい事は私も知らない。
まだ出来上がったばかりで発展途上の様子だが、実際にポケモンが見た夢の中で出会ったポケモンに現実世界で出会う事が出来たという事実が、
ポケモントレーナーの間で何件か報告されているそうだ。

また、ムシャーナも大いなるサイコパワーを秘めたポケモンと睨む学者も大勢いる。
ホウエン地方で見つかるサーナイトや、希少種として有名なイーブイから進化したエーフィも主人であるトレーナーのために
ブラックホールを作り出したり、凄まじいサイコパワーを放つ事があると聞いた事がある。
恐らくムシャーナもそんなエスパーポケモンの一種だから、絶大な力を秘めたポケモンだったとしても何ら不思議はない。

「あら…ムシャーナの入ったボールが…。」
カトレアが、ムシャーナのボールの異変に気付いた。
すると、急にボールからムシャーナが飛び出して来たのだ。
何か様子がおかしいようだ…。

「ど…どうしたの?ムシャーナ…?」
カトレアは心配そうにムシャーナを見つめる。
「何か様子が変だよ…。苦しそう…どこか病気なの?」
様子がおかしいのは明らかだった。
綺麗なピンク色の体が、黒ずんでしまっている。
何か、とても苦しそうに目を固く閉じている。
「とにかく、なんでもなおしを…。」

私はムシャーナになんでもなおしを吹きかけてみた。
だが、効果はなく苦しそうなままだ。
「一体どうしたの…?…まさか…。」

実は昔、自らの力が暴走していたカトレアを鎮めてくれていたのがムシャーナだった。
ムシャーナは、カトレアの大いなる力を夢に変換し自らに取り込む事でカトレアを制御させていた。
その反動で、ムシャーナのサイコパワーはどんどん増幅され、今まさにオーバーヒート寸前になっていたのだ。
何故、今になってムシャーナの力が暴走しているのかは分からない。
だが、このままではムシャーナの命の危険すらあり得る状況であった。

「ムシャーナ…ワタクシの力を昔も今も…ずっと…。」
カトレアにだけは、ムシャーナの暴走の理由が理解出来たようだ。
そう、ムシャーナはカトレアが一人前のポケモントレーナーになった後も、そのわずかに溢れていたカトレアの「力」をずっと制御してくれていたのだ。
「あなたは…ワタクシのためにいつも頑張ってくれていた…。だから今度は、ワタクシがあなたを助ける番です。」
「…やるよ!カトレア!」

この状況、どうすれば良いかは分からないが、いちかばちかの賭けに私たちは出た。
危険だが、ムシャーナと戦い体力を消耗させて治療効果のあるヒールボールで改めて捕獲する。
幸い、私はポケモンに関する道具は一通り揃えていた。

そして私たちは、ムシャーナと2対1のバトルをする事になった。
「出てきて!ランクルス!」
「頼むよ!ゴルーグ!」
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え〜ふぃ ☆2012.02/22(水)21:46
第4部 女の友情・後編

私はゴルーグを、そしてカトレアはランクルスを出した。
「ランクルス、シャドーボール!」
「ゴルーグ、シャドーパンチ!」
手っ取り早く体力を消耗させるには、ゴースト技が適切だ。
今のムシャーナは、力が暴走してしまっている。
そのムシャーナの攻撃をまともに受けたら致命傷は避けられないだろう。

2体のポケモンの攻撃は同時にヒットした。
だが、ムシャーナはその苦しそうな顔のままサイコキネシスを放ってきた。
凄まじい威力だった。
ランクルスもゴルーグも、技を受けた途端に数十メートルも吹き飛ばされた。

「くっ…ダメなの…?」
「ムシャーナ、お願い…!しっかりして!」
苦しそうにしているムシャーナは、再び力が暴走しサイコキネシスを放とうとしていた。
「ムシャーナ!」
カトレアは、思わずムシャーナに駆け寄る。
「危ないカトレア!早く離れて!」

だが、すでに遅かった。
ムシャーナは力を抑えきれず、サイコキネシスを放ってしまった。
サイコパワーによる光がカトレアを包んでいく。
「カトレアー!!」

眩い光に、私も目を開ける事が出来ないでいた。
「う…。」
ようやく視界がよくなってくると、すでに私のゴルーグがカトレアをかばってムシャーナの前に立っていた。
「ゴルーグ!あなた…。」

そして、ダメージによって膝をつくゴルーグの後ろから、ランクルスが姿を現した。
さらにランクルスは、ムシャーナに思い切り体当たりした。

「ランクルス…!」
ポケモンたちも、ムシャーナの暴走を食い止めるために頑張ってくれている。
トレーナーである私たちが諦めるわけにはいかない。

「ゴルーグ、立って!立つのよ!」
すでにゴルーグは満身創痍という状態だった。
ランクルスは、ムシャーナにピッタリと張り付いて動きを止めていた。
「後1発でいい、シャドーパンチ!」

ゴルーグは最後の力を振り絞ってシャドーパンチをムシャーナに撃ち込む。
ランクルスはとっさに離れ、ムシャーナにシャドーパンチは命中した。
暴走していたムシャーナも大きく怯んだ。

「今なら捕まえられるかも!カトレア!」
私はカトレアにヒールボールを投げ渡した。
ボールを受け取るカトレア。
「カトレア!今しかない!早く捕まえて!」
「ええ!…ムシャーナ!」

カトレアはヒールボールをムシャーナに投げた。
ボールに入るムシャーナ。
ボールに入ってから、しばらくあたりをコロコロと転がっていたが、何とか捕まえる事が出来た。

「ムシャーナ、大丈夫?」
カトレアは海岸に落ちているボールを拾うと、すぐにムシャーナをボールから出してみた。
すると、もう苦しそうな表情も黒ずみも消えている、いつもの元気そうなムシャーナが姿を現した。
「ああ…ムシャーナ…良かった…良かったわ…。」
涙を浮かべてムシャーナを抱きしめるカトレア。
そんなカトレアを、私とゴルーグ、それにランクルスも嬉しそうに見つめていた。
カトレアとポケモンたちの絆も、こうして守り抜く事が出来た。

「シキミさん、ありがとう…。」
私にカトレアは手を差し出してきた。
「いいのよ、お礼なんて。」

カトレアとポケモンたちの絆をて守り抜く事が出来たその日が何日であるかわたしにはもう分からないが、一生忘れないだろう。
女の友情とポケモンたちとの友情を守り抜く事が出来たあの日の事を、私は決して忘れない…。
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え〜ふぃ ★2012.02/22(水)21:53
第5部 真実一路

「この世界は君のためだけに存在していない、何故ならば…。」
「…分かっている…。」
「分かっている…本当なの?」

私の目の前に、以前私たち四天王やチャンピオンのアデクさんをも打ち破った、真実の白き竜を連れた青年が立っていた。
「何故…私の前にまた現れたの…?」
「ボクには…まだボク自身の真実という解を見出す数式が見い出せていない…。」
「でも、ボクがレシラムと一緒に戦う事で、それが見い出せるかもしれないと思ったんだ。」
その青年は、以前プラズマ団のボスとして私の前に立ちはだかった。
その時は、あのレシラムという白いドラゴンポケモンの前に成す術もなく私は敗れた。

「ボクには、ボク自身の真実…そして夢が必要だ。…あの子がそう教えてくれた。」
「…。」
私は、黙って青年の話を聞いていた。
「シキミさん、あなたとの戦いなら、何かを見いだせるかもしれないと直感したんだ!戦いを受けてくれますか?そして、新たな未来を見つけるための…」
「…私には、あなたと戦ってあなたが何かを見つけられるとは思わないわ…。」

私には、彼との再戦を拒む理由はなかった。
だが、私には彼が哀れに見えていた。
自分だけの真実…それは自分だけで見つけるものだ。
私が見つけてあげるものじゃあない。

「どうして…?ボクの未来への数式…不確定数が多過ぎるその数式に1つ1つ数字を代入するためには…」
「何なのそれ…。私は、あなたにとって何?倒すべき敵?それとも未来への道への通過点でしかないのかしら…?随分となめられたものね。」

私は、黙ったままシャンデラを出した。
「私を甘く見ると、火傷するよ…坊や!」
私がレシラムを指差すと、シャンデラはかえんほうしゃをレシラムに放った。
「迎え撃て、レシラム!」
レシラムも、同様に炎を放って対抗する。
だが、私のシャンデラの炎の方が威力が圧倒的に上だった。
レシラムの炎を簡単に打ち砕いてレシラムに私のシャンデラの炎が突き刺さる。

「な…。この威力は…。あなたは…まさか…。」
「どうしたの?あなたのポケモンの力は…この程度なのかしら?」

シャンデラは、再び炎を放ってレシラムを攻撃する。
「やむを得ない、クロスフレイムで迎え撃つ!」
青年の指示でレシラムはクロスフレイムを発動してきた。
しかし、私のシャンデラの炎に吹き飛ばされてしまう。

レシラムはすでに息を切らしており、かなり体力を消耗している様子だった。
「ど…どうして…どうしてボクのレシラムの攻撃が通じないんだ…?」
「分からない…?私だっていつまでも弱いままじゃあない。」
「それに一度負けた相手に、そうやすやすとまた負けるなんて許されないのよ、いや、私自身がそれを許さないから…。」
そして私は、彼に話を続けた。

「あなたのいう真実や夢…私にだってあるわ。でも、私はあなたが答えを探そうとするずっと前からいつだってそれを探していた。」
「ずっと…探していた。」
「そう…私だけの真実、私だけの夢、私だけの未来。いえ、私だけじゃあない。みんな人もポケモンもそれに向かって生きてる…。」
「みんなが…真実や夢を…ボクより先に追っていた…。」

その青年は、まだ気付いていなかったのだろう。
真実や夢を追ってるのは、自分だけではなくみんなそうであるという事を。
彼はまだ、世界を知らなさ過ぎるのだ。
そして、そんな知らない事が多過ぎる青年に勝たせてやるほど、私たち四天王も甘くはない。

「あなたは、まだ私たちに挑むのは早過ぎるわ。ほんの少し世界を見て来ただけで…私たちに勝つつもりだったのかしら?」
「そ…それは…。」
「もっと…色んなものを見て来なさい。結論を急ぐ事はありません。私も、四天王になる前もなってからも本当に色んなものを見て来たわ。」

私は、彼に自分の過去の事を沢山話した。
生まれてきた家と両親の事、初めてポケモンを捕まえた日の事、幼い頃に旅に出て仲間を増やした事、四天王になって初めての挑戦者の事、カトレアの事。

「あなたは、まだ世界を知らない…。それなのにいきなり真実や夢を見つけようなんて無理だわ。」
「…。」
青年は、うつむいて私の話を聞いていた。
「あなたには、もっと色んなものを見て、色んな人と出会って、色んなポケモンと触れ合って欲しい。私が言えるのはそれだけです…。」

私は、話を終えるとシャンデラをボールに戻して立ち去ろうとした。
「…シキミさん。」
青年が、後ろを向いた私に話しかける。
「シキミさん…ボクは…ボクはいつかあの子やあなたみたいに真実や夢を追う事が出来る人間になれるだろうか…。」
「…。」
「本当は不安なんだ…ボクは、みんな許してくれたが、ボクがこれまでやってきた事に対する罪の意識が未だに頭から離れようとしない、それに…。」
「…。」
「それに、ボクは1人ぼっちだ。ボクには、トモダチがいたはずなのに…でも人間の友達は1人としていなかった…。」

青年は、それだけ言うと黙り込んでしまった。
私は、彼の方を振り向いてこう言った。
「会いに行けばいいじゃあない。あの子に…。あの子、君と別れてもう何か月も経っているのにずっと探していたの。1日も忘れずに…。」
「…あの子が…ボクを。」
「ええ…。あの子も、きっとあなたが会いに来てくれるのを待ってる。もう1度、今度は敵同士じゃあなく友達として会いたいと言っていたわ。」
「…あの子が…。」

青年はレシラムをボールに戻すと、こう言った。
「シキミさん、あの子は…あの子はもう1度ボクに会いたいと…本当にそう言ったのですか?」
「本当よ。今でもあの子はイッシュ地方をあなたを探して駆け回っている。」
「…。」

私の話を聞いた彼は私に背を向けて走り出した。
そして、数歩走ったところで立ち止まってこう言った。
「会いに行ってきます。シキミさん…あなたと今日会って本当に良かった。」
青年はそれだけ言うと、また振り向いて駆け出して行った。

(N君…あなたは1人なんかじゃあない。あんなに素敵な友達がいる…。N君、夢を持って。そして、いつかきっと自分の手で実現するの。)
私は、彼が夢を見つけてくれる事を祈って歩き出した。

真実や夢は、この世界に人の数だけ存在する。
彼の真実と夢は、今やっと長い時間を埋めるように動き出したばかりだ…。
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え〜ふぃ ☆2012.02/22(水)21:56
あとがき

どうも、シキミです。
私の小説、いかがだったでしょう。

四天王をやっていると、本当に色んな事があったんです。
私も、色んな人とポケモンと出会えて、本当に充実した毎日を過ごせています。

読者の方々の感想も、お待ちしております。
これからも、ポケモンバトルに小説に全身全霊を注いでいくつもりです。

今後も私、シキミの応援をどうかよろしくお願いします。

20XX年 〇月□日 SHIKIMI
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物語のつづきを書きこむ

ここにつづきを書けるのは、作者本人だけです。本人も、本文じゃない フォローのコメントとか、あとがきなんかは、「感想」のほうに書いてね。

物語ジャンルの注目は、長くなりがちなので、いちばんあたらしい1話だけの注目に なります。だから、1回の文章量が少なすぎると、ちょっとカッコわるいかも。


状態(じょうたい)

あんまりにも文字の量が多くなると、 ()み具合によっては エラーが出やすくなることがあるよ。ねんのため、 本文をコピーしてから書きこんでおくと、エラーが出たとき安心だね。

シリーズのお話がすべて終わったら「終了」に、文字数が多すぎるために テーマを分けて連載を続ける場合は「テーマを移動して連載」(次へ)に 状態を切り替えておいてね。この2つの状態の時に、「次の作品に期待」 されて感想が書き込まれると、次のテーマが作れるようになります。

ちなみに「次の作品に期待」をもらって「完結」や「続く」になってる作品を 「次へ」「終了」に変えることもできるけど、その場合、次のテーマを 作るためには、もう一度「次の作品に期待」が必要になります。

しばらくお話の続きが書けなくなりそうな場合は「一時停止」にしておいてね。 長い間「一時停止」のままの物語は、Pixieの 容量確保(ようりょうかくほ) のため消されることがあるので、自分のパソコンに 保存(ほぞん)しておこう。

やむをえず、連載を 途中(とちゅう)で やめる場合は、凍結をえらんでね。ただし、凍結をえらんでも、次の物語が 書けるようにはなりません。感想をくれた人や、次回を楽しみにしてた人に、 感想 で おわびしておこう。


ポケットモンスター(ポケモン)のページ「Pixie(ぴくしぃ)」