ぴくし〜のーと あどばんす

物語

【ぴくし〜のーと メイン】 【テーマいちらん】 【おともだちぶっく】 【みんなの感想】

連載[1278] 因縁のプリンセス

日輪 ☆2011.08/09(火)22:43
プロローグ

 ここはとある変わった世界、ポケモンという人間とは違った生命体の存在する世界。この世界には地方と呼ばれる様々な国が存在し、国ごとに王や王女が存在する。王族は城に住み、その周囲を囲む森と海は王族の所有地となっており、「領域に入ってはならない」というのは国民の暗黙の了解であった。
 何故なら、そこには国民の知らぬ事情が存在するから―…。
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日輪 ★2011.09/21(水)00:51
―真っ暗闇な空間で、今日も悲しい声が木霊する。

やめて…を…さないで!やめてっ、やめて…!

―この声は、一体誰なのでしょう?何故そんなに悲しい声を出しているのですか?
 私には、分からないのです。この声は、一体…。

<1>

 ここは、王宮の中に存在する王族専用の部屋の一室。部屋の中は薄暗く、カーテンも何もかもが閉まっている。その中で王と王女、そして漆黒のフードを身に纏った人物が部屋の中央に座っていた。

「…どう?あの子の様子は」

口元を袖で隠しながら王女が座っている人物に後ろから問いかける。フードを身に纏った人物は口を動かさず、テレパシーで王と王女に答えた。

『問題はありません。安定しております』
「そうか。引き続きよろしく頼むぞ。」

納得したように頷き背を向けて部屋を後にする王と王女が聞いたのは、実の娘である姫・リィンのことであった。

『はい。王様、王女様。』

 そんな二人をフードを身に纏う人物はゆっくり振り返り、二人の後ろ姿を見送った。


 そのころ、城の中央に位置する広々とした庭の池の淵に、美しい純白のドレスを纏っている輝く金色の髪を持ち深い翠の瞳を持った少女が、空を見ながら座っていた。少女の名はレイン、この国の姫である。彼女は幼い頃からポケモンたちの泣き声とは違う声≠理解することが出来た。しかしその素晴らしい能力とは裏腹に、彼女の瞳は今日も光を宿すことなく空を眺めていた。そしてその周囲にいる彼女のポケモンたちは、そんな彼女の様子を今日も心配そうに見つめているのだ。


「今日も、空は曇っているのですね…。雨でも降りそうです。」
『(ホワイト・ユキメノコ)そんなことないわ、そう見えるだけよ!今日は晴れてる、元気を出して?』

 膝を抱え空を見上げる彼女の前に、透き通るように白いユキメノコが彼女の顔を覗き込むように現れた。

「ふふ…。ありがとう、ホワイト。」
『(グリーン・ジュカイン)そうさ、元気を出してくれ姫さん。』
『(ブルー・ラプラス)わたくしたちは、いつでも一緒ですわ。』

 彼女に横に寄り添うように立ち心配そうな表情をする深い緑色をしたジュカインと、彼女の前にある大きな湖から顔を出した深い青色をしたラプラスが励ますように声をかけた。

「グリーン、ブルー。大丈夫、いつもと同じです。何も変わらないもの…。」
『(ブラック・ヘルガー)姫様…。』

 それでもいつもと変わらず寂しそうな笑みを浮かべる彼女を、後方から漆黒のヘルガーが見つめていた。

「ブラック、私はいつも思ってるの。ここから抜け出すことができたら、どんなに楽しい世界が…」

ブブッ!ブブーン!ブーン!

 突如、城に警戒音が響いた。その音を境に、城の中から慌ただしい足音が聞こえてくる。その音に体を小さくした彼女とは裏腹に、ポケモンたちはまたかとその場で溜め息をついた。

「な、何でしょうか?」
『(ホワイト)どうやら侵入者が来たみたいだわ。馬鹿ね、毎回毎回。宝物を狙っても誰も取れやしないのに。』

ホワイトと呼ばれたユキメノコが、再度城の外を見て溜め息を漏らす。
侵入者。≠サの単語を聞き、彼女も溜め息を漏らした。それもそのはず、彼女のいる庭は上空も地上も外部から複数のポケモンが絶えず作っているバリアホールによって包まれていた。また、そのバリアボールには地面ポケモンさえも一瞬気を失うほどの高い電流が流れていた。
 よって侵入しても彼女の所にたどり着くことはまず不可能であり、同時に彼女はそれゆえ庭から一歩も出ることができなかった。人と話をするのもたまに会いに来る王と王女や食事を運び身の回りの世話をする召使としかできず、その時にのみ特殊な鍵を使って中に入ってくることができる。しかし、その鍵は城の奥にある金庫に入っているためたどり着くためには何人もの強者を倒していかなければならない。…そもそも、侵入者が庭にいる彼女を目的とすることはない。侵入者の大半は城にある宝が目当てであり、一人残らず捕まる。

「またですか…。ですが今回も私たちには関係な…。」
『(ブラック)姫様、上を見てください!何かが降りてきます!』

 異変を感じたブラックと呼ばれたヘルガーが上を向きながら叫んだ。
 言われた通り上を見ると確かにポケモンの影が真上の空に見え、その影はどんどん近づいてくる。彼女はその影を見て思い出す。

―間違いない、あれはリザードンです。本についている特徴と一致します。だけど、どうしてここに?バリアホールがあるはずなのに…。

『(ブルー)誰かが乗っているわ』
『(グリーン)気をつけろ、姫さんを守れ!』

ブルーと呼ばれたラプラスが目を細めながら身を湖から乗り出し彼女の後ろを守るように構え、グリーンと呼ばれるジュカインが警戒し彼女の前に構えた。ブラックとホワイトも同様に上空からくる影を睨みながら右と左に構え、彼女の回りを囲うように立った。

バサバサッ ザッ

 静かに逞しいリザードンが地面に降り立ち、その上から背中に太陽を帯びた灰色のマントに身を覆う青年が降りてきた。マントと光に隠れ、顔は全くと言っていいほど見えない。
 予想もしない出来事に、その場に緊迫した空気が流れた。たまらず、ブルーが彼女の後ろから青年に向かって声をかける。

『(ブルー)ちょっとアナタ!一体何のつもりで…。』
『(リザードン)お前が、レイン・ウェンバーン姫か?』

 しかし、それを遮るようにリザードンが高い位置から彼女に確認するように声をかける。驚いた彼女は、素直に何度か頷いた。

「そ、そうですが…。」

バッ

 途端、青年がグリーンを避けて近づいていくと彼女を両腕に抱えた。そうくるとは思わなかったポケモンたちは動揺し、声を荒げて騒ぎ始めた。彼女も思わず声を上げる。

「きゃっ」
『(グリーン)なっ、姫さんに何をするんだよ!』
『(ホワイト)お姫様抱っこですって?羨ましい、恨めしい…。』
『(ブルー)そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!』

 慌てて我に帰ったグリーンが青年の前に回り込んで怒る傍で、何故か恨めしく彼女の様子を見てぶつぶつ呟くホワイトの横でブルーが声を上げる。

『(ブラック)姫様を離して下さい!大体、何故ここに…。』
『(リザードン)そんなことは後回しだ。ムウマージ、持ってきたか?』

 ブラックが青年に駆け寄り威嚇するように声をかけるが、そんな声を遮るようにリザードンが空に向かって声をかけた。

ブウンッ

 その直後、彼女を抱えて背を向けた少年とポケモンたちの間ににボールを抱えたムウマージが現れた。ゴーストタイプとは思えない笑みを浮かべ、彼女のポケモンたちに告げた。

『(ムウマージ)もっちろんよぉー♪ほら、あんたたちさっさとボールに戻った戻った!話はボールに戻ってここから出た後よ。こんなとこにいたら、姫さまもあんたたちも救われないでしょ?あたしたちの苦労も水の泡にはしたくないしね』

 ムウマージの声を聴いた彼女は驚いた。彼女はポケモンたちをボールに入れたことがなく、またボールがあったことさえ知らなかったのだ。
 ここに至るまで聞きたいことが、彼女にはたくさんあった。
 しかし、彼女は一つだけ聞いた。これさえ分かれば、今はいいと思ったからだ。

「…外に、連れて行ってくれるのですか?」
『(リザードン)ああ、そうだ。だろう?主よ』

 顔を上げ青年に向かって問いかければ、青年の後ろに立っていたリザードンが迷うことなく答え、その言葉に青年は頷いた。彼女は、リザードンと青年の迷う事無い答えにどこか安心感を覚えた。彼女は青年に下ろしてもらうと、ムウマージから4つのボールを受け取りポケモンたちに目を向けた。その目は今までの寂しい目とは違い、希望に満ちていた。そんな彼女を見た瞬間、ポケモンたちの気持ちは決まっていた。

「…分かりました。みなさん、私とついてきて下さるなら、ボールに入ってくださいませんか?」
『(全)イエッサー(了解)』

 文句を一つも言う事無く、4体全てが即座に頷きボールに戻っていく。それが彼女と同様青年に何かを感じたのか、もしくは彼女を信頼してかは分からない。だが、そんなことは彼女にとってどうでもよかった。自分に着いてきてくれる、その事実が何よりも嬉しく、全てのボールを大切そうに胸元に抱えた。

「みなさん…。」
「―いい仲間だな。」

 後ろから聞こえた声に、彼女は目を丸くして振り返った。そこで初めて聞いたはずの青年の声に、何故か懐かしい感じがしたからだ。胸元にボールを抱えたまま、今度は彼女が青年に近づいていき不思議そうな表情で問いかける。

「あなたさまは、一体…?」
「いたぞー!姫様に侵入者が接近している、逃がすな!」

 しかし、すぐに聞こえた兵士たちの声にはっと我に帰った彼女は慌て始め入口を見た。兵士たちは既に鍵を使い庭に入ってきていたのだ。

「兵士たちが…!あの方たちに捕まってしまえば、ただでは…。」
「いくぞ」

バササッ

「きゃああっ!」

 彼女の心配する声など物ともしない青年は、顔色一つ変えず再度彼女を抱えてリザードンに跨り大空へと飛んでいった。

 これが、彼女にとって因縁を引き起こす最初の出来事だとは、もちろん彼女が知る由もない。


・つづく・
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日輪 ★2011.09/26(月)23:06

 姫が何者かによって攫われたことにより、王宮は混乱状態に陥った。侵入者がまさか何も持たぬ姫を攫うなどとは思ってもいない王と王女は、慌てて部屋に入ってくる兵士に不思議そうな顔をして振りむいた。

「王様、王女様!」
「何事ですか、騒々しい。捕まえたという報告にそこまで焦らなくてもいいのよ?」

 いつものように侵入者を捕まえたという報告だと思っている王女は、口元を袖で隠しながら余裕な笑みを浮かべながら答える。
王様も同じように思っているのか、ゆっくり何度も頷く。しかし、兵士は慌てて首を横に振り、真っ青な顔をして伝える。

「違うのです王女様!姫様が…レイン姫さまが、何者か分からぬものに連れて行かれてしまいました!」

 それを聞いた王様と王女は慌てて立ち上がった。立ち上がった二人の顔は真っ青になっていた。

「なんだと!?侵入者がまさか、娘を狙うとは…!今までの宝を狙う悪党ではなかったのか…!」
「なんてこと…このままではいけないわ、皆のもの!早に捕まえよ!アレが起こる前に…!」

 王は険しく悔しそうな表情をし、王女は頭を抱えて兵士に訴えた。二人の脳裏には、昔見た同じ光景が思い浮かべられていたことを兵士たちは知ることもなく、必要な数の兵を残して当たりの探索を開始した。まさか彼女が海を越えているとは思わず…。

<NO.2>

そのころ、海を渡るリザードンの上で下してもらった彼女は、青年の後ろに座って改めてお礼を言った。

「…あ、ありがとうございました。まさか、お城から出られる日が来るなんて思ってもみませんでした。この御恩、決して忘れません。あの、何かお礼をしたいのですが…。」

 彼女の声に答えたのは、青年ではなく2人を乗せたリザードンだった。

『(リザードン)金を持っていないお前に言っても買えないものだ。主の欲しいものは…』
「そうですか…。でしたら、せめてお名前だけでも…。」

 しゅんとしてしまったのが分かったのか、はたまた何とかしてお礼をしたいのだという彼女の願いが通じたのか、目の前の青年がゆっくりと振り返る。初めて目にした青年の目は、彼女と同じ深い翠色をしていた。

「今は、誰にも名は言えない。」
「今、は…?」

 意味ありげに言う青年の言葉に不思議そうに言葉を繰り返す彼女に、青年は彼女にしっかりと目を合わせて言う。

「また会える。絶対に」
「本当ですか?」
「ああ、必ず。」

 会えるという理由はわからないものの、自身に満ち、断言する青年の言葉に彼女はゆっくり頷いた。そして、優しい笑みを浮かべる。

「…信じます。私はあなたを信じます。」
「そんなに簡単に信じていいのか?俺が悪者だと思わないか?」

 意外にもあっさりと信じてしまった彼女に、今度は青年が驚いた。しかし、青年の目を見て笑ったまま、今度は彼女が自身ありげに答える。

「思いません。悪い人でしたら、あんな場所に身の危険を冒して来る人なんていませんから。」
「顔も名前も知らないのに?」
「知りません。何も知りませんが、信頼できるんです。何故かは分かりませんが、何となく…。」

 自信はなく自分の感情も不安定だが信じると言って聞かない彼女に、青年は思わず笑みを零した。そんな姿に彼女は一瞬驚くもすぐに嬉しそうに笑った。こんな風に笑ったのはいつぶりだろうかと胸の内で考えながら。

「…ははっ、それもそうだ。もうすぐ目的地に着く」
「目的地…はい、分かりました。」

 バササッ!フワッ

 深く生い茂る森にゆっくりと着陸すれば、青年に手を借りながらも彼女は新たな大地に恐る恐る足をつけた。
 リザードンの上から、青年は真剣な目で彼女を見つめて言い聞かせるように言った。

「生きろ。自由に生きる権利は誰にだってある。たとえお前が一国の姫だとしても、それは勿論変わらない。」
「自由に、生きる…。」

 言葉をくり返す彼女に納得したように頷くと、青年は何処に隠していたのかフードからベージュ色をしたリュックを取り出し彼女に向かって投げた。

ドサッ

「これを使うといい。服と、旅に必要になるであろう道具だ。」

 リュックを受け取り中を見た彼女は驚いた表情で青年を見た。本でみたトレーナーに必要なものが、ほとんど入っていたのだ。

「ま、待ってください!何故ここまで…。」
「お前とは初めてじゃない。何回か会ってる。」
「え…?」

 会っているという青年の言葉に固まっているのを見計らったように、リザードンが羽をはばたかせ宙へと浮き始める。

バサバサッ

「あっ、ま、まだお聞きしたいことが…!」
「名前はレイと名乗れ。じゃあな、レイン…。」

 言いたいことを言い終えたのか、青年はリザードンと共にそのまま大空をかけていった。残された彼女は、手元にあるリュックをじっと見つめた。

「あの方は、どうして…。」
『(グリーン)ワケのわからないやつだったな…。』
『(ブラック)結局、どうやって入ったのかも分からなかったし…。』
『(ホワイト)用意も周到だった。私よりミステリアスなのね…。』
『(ブルー)とりあえず、その格好では自然と目立ちますわ。貰った服に着替えましょう。』

 いつの間に出てきたのかいつから見ていたのか、4匹は彼女の後ろに立って空を見ていた。そしてグリーン、ブラック、ホワイトがぼそぼそと言っているのを放置したブルーは、彼女に後ろから提案した。驚いて振り返った彼女だったが、ブルーに言われ改めて自分の服装を見た。本で見たトレーナーの服とは全く違う、すぐに汚れてしまいそうな動きにくいドレス。

「みなさんいつの間に…!でも、確かにこのままじゃ目立ちそうですね…。」

 ブルーの提案を受け入れた彼女はリュックを開け、中から服を取り出した。今のドレスとは違い初めて見た動きやすそうな服に、彼女は眼を輝かせさっそく脱ぎ始めた。
 その様子を後ろから見ていたジュカインは、赤くなりながら手で顔を覆った。しかし指の隙間が開いたままであるのを見て、他の3匹は思わずため息を零し目を吊り上げた。

『(グリーン)お、俺様は見てない!見てないからな姫さん!』
『(ブルー)だったら指の隙間締めなさいな。』
『(ブラック)…スケベ。』
『(ホワイト)ほんと、デリカシーのない…。』

ガサガサッ

 その時、急に彼女の隣の茂みが大きく揺れ始めた。その場に緊張が走り、すかさずポケモンたちは彼女の前に出た。視線は、動く茂みに集まる。自然と場の空気が張り詰めた。

『(全)!』
『(グリーン)まさか…もう追ってがきたってのか!?』
「そんな…せっかく助けていただいたのに…。」

 静かに慌てるグリーンの真後ろで、彼女は声を震わせ力が抜けたように草の上に座り込んでしまう。

『(ブラック)姫様は、必ずお守りします!』
『(ホワイト)絶対に帰らないわよ!』

 そんな彼女を見たブラックとホワイトは、今にも技が出せるように茂みを睨みながら構えをとった。

ガササッ ドテッ

 しかし、茂みから出てきたのは…

「いてて、一体どこまで…ん、ポケモン?なあお前たち、道を教えてくれねぇか?」

 兵士とは程遠い、灰色の髪に紅色の目をした少年だった。


・つづく・
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日輪 ★2011.10/08(土)20:35
―せっかくあの方が救って下さったのに、もう無駄にしてしまうのでしょうか…?

―お願いします、どうか…どうか…!

<3>

「おい?お前ら、何固まってんだよ?」

 着替え途中で座り込んでしまったレインと彼女の前で構えていたポケモンたちの前に現れた少年は、言葉を失って立っているポケモンたちを見て不思議そうな顔をした。
 はっと我に帰ったレインはそのまま立ち上がり、少し怒った様子で少年の前に立った。視界に入る彼女の姿に、ポケモンたちは口を開けたまま固まってしまった。
 それもそのはず。彼女は…―下着姿のまま少年の前に出て行ってしまったのだ。着替えの度に召使いに見られていたため、それが恥ずかしいという感情もないのだ。

「ちょっとそこのあなた?」
「ん?なんだ、人がいんのか。って…。」

 案の定、少年はレインを見て固まってしまった。どんどん顔が赤くなっていく。

「人の着替え中に入ってくるなんて、マナーがなっていません!」
「お、お前…。」
「聞いているのですか?ですから着替え中は、」

 顔を真っ赤にしてたじろぐ少年に、さらに近づくレイン。少年は叫び声のような声を上げた。

「ふ…服を着ろ服をーっ!!」

 真っ赤な顔で訴える少年に不思議そうに首を傾げながらも、少年が背を向けている間にレインはもらった服を着た。初めて着たドレスではない服に目を輝かせる。その様子に、ポケモンたちは優しい眼差しでレインを見た。グリーン以外は。

「わぁ…とっても動きやすいです!」
『(ブルー)嬉しそうねぇ、姫様。』
『(ブラック)本当ですね、あんな笑顔を見たのはいつぶりでしょうか。』
『(ホワイト)でも、こんな服を用意するなんて…。しかも、レインにピッタリだなんて。アイツ、もしかしてストーカーだったんじゃないの?』

 ホワイトとブルーに氷漬けにされていたグリーンが、頭の部分だけ氷を砕き他の3匹を見た。

『(グリーン)お前らぁぁ!いきなり冷たいだろうが!まあ、いいもの見れたけどな…。』
『(ホワイト)あら、もう1回氷漬けにされたいのアンタ?』
『(グリーン)ほんとスンマセンでした』

 ホワイトが冷たい視線を向けると、グリーンはすぐに頭を下げて謝った。それを見たホワイトは、溜め息をつきながらブラックに氷を解かさせた。よく見る光景であるためか、レインは気にせず困ったような表情をして悩んでいる。

「でも本当に、何てお礼をしたら…。」
「おい」
『(ホワイト)いいのよレイン、アイツが勝手に置いてったわけだし。』

 少年の声を無視し、ホワイトは透き通り触れない手でレインの肩に触れる素振りを見せる。

「ですが…」
「おーい」
『(ブルー)そうですねぇ、とりあえず誠心誠意を込めてお礼をしたらいいんじゃないかしら?』
『(ブラック)そうですね、見返りを求めてたわけじゃなさそうですし。』

 それでも下を向いて悩むレインに、左右から2匹は励ました。再度無視されてしまった少年は、怒りに肩を震わせているのに彼らは気づかない。

「…いいかげんに…。」
『(グリーン)まあ、俺様だったら姫さんのハグで全然おっけーだな!』
「オレを無視するんじゃねぇぇ!!」

 少年の怒りの声に、やっと全員がそちらを向いた。レインに至っては、いなくなっていたと思っていたらしい。

「あら、まだいらしたんですね。」
『(グリーン)なんだあいつ、もしかして仲間はずれにされて寂しいんじゃ』
「んなわけあるかぁぁ!」

 ニヤニヤしながら少年を見つめるグリーンの態度に、怒りで目を吊り上げながら少年は叫んだ。そこで、ポケモンたちはあることに気付いた。

『(ブルー)うるさいわねぇ。…って、え?』
『(ホワイト)あたしたちの声が聞こえるの?』
「…まあな。この耳につけてる〈INCOME〉のおかげで聞こえるんだ。」

 少年が耳元に着けている機械を指差して答える。どうやらそれは、ポケモンの言葉を翻訳してくれるもののようだった。その機械に、レインやポケモンたちは興味深々になり少年の前に身を乗り出す。

「そんなものがあるんですね!やっぱり外は違います!」
『(ホワイト)ねぇ、本当に聞こえるか試しましょうよ。』

 ホワイトの提案に頷いたポケモンたちは、少年の前に並び口ぐちに言う。

『(ブルー)ムッツリ』
『(ブラック)スケベ』
『(ブラック)エッチ』
『(グリーン)まあ、男なんてそんなもんだ。』
「聞こえるっつってんだろうがぁ!…んなことより、お前どっかの姫なんだろ?」

 ニヤニヤしながら馬鹿にしてくるポケモンたちに再度眉を吊り上げて怒るも、落ち着かせるように息を一つ吐いた後にレインにしっかり目を向けた。燃やし尽くすような深い紅の瞳が、レインの碧色を捉える。レインはいきなり言い当てられ、眉を下げて慌て始める。

「な、何故それを…?」
「そりゃ会話丸聞えだし、あそこに明らかに高そうなドレス落ちてるし、…下着なのにマナーとか言ってるし…。」
『(全)スケベー』

 後半は赤くなり声の小さくなる少年に、ポケモンたちは声をそろえる。ポケモンたちを一睨みして、今度は少年がレインに近づく。

「うっせぇって言ってんだろ!まあとりあえず、姫がどうしてこんなとこにいんだ?」
「そ、それは…。」
「まあいいや」
『(全)いいなら聞くな!』

 口ごもりなかなか言おうとしないレインに、興味がなくなったように聞くのをやめた。普通なら姫と聞いて食いつくものなのに、無関心な少年にレインは少なからず安心していた。

「お前何も知らないんだよな。なら道聞いても仕方ねぇし、じゃあな。」

 しかし道を聞けないと分かると、少年は片手を上げてレインに背を向けて歩き始めた。あまりのあっけなさに、レインは慌てて声をかける。

「あ…も、もう行ってしまうのですか?」
「ああ。お前と一緒にいてもなんにもなんねぇだろ。」
「それはそうですが、もう少しお話を…。」
『(グリーン)姫さん、何か入ってたぜ?』

初めて会う城の者以外の人ともう少し話したかったレインはしょんぼりしてしまった。だがその時、リュックを漁っていたグリーンがレインの手に見つけたものを乗せてきた。楕円形の、何やら地図を映す機械のようだ。電源と書いてあるものを押してみると、機械はやはり地図を映し出した。

「なんでしょう…地図を写す機械でしょうか?変なマークが光ってますね」
「お前ソレ…最新型のデータマップじゃねぇか!どこで手に入れたんだ?こんなもの、普通は売ってないぜ?」

 不思議な機械に首を傾げるレインの前で、少年が驚いた顔をしながら機械を覗き込んだ。どうやら珍しいものであるらしい。レインは、先程までいた青年を思い出した。
 自分を救いだしてくれた、あの青年を。

「これはきっと、あの方が下さったんです。」
「あの方?」

 聞き返す少年に、レインは優しく笑う。

「話すと長くなります。ですが、これは確実にあの方から頂いたものです。」
「ふーん…お前、それの使い方知ってんのか?」
「知りません。」
「お前のポケモンたちは?」
『(全)知らない。(ですわ)』

 少年の予想通り使い方など知らないという彼らに、少年は今日一番重い息を吐いた。

「…はぁぁ。お前、目的とかあんのか?」
「目的ですか?目的は特にはありませんが、各地を回れればな、と…。」
「仕方ねぇな…。なら、こうしよう。オレがそれを貰う。その代わり、オレがお前に色々世界のことを教えてやる。どうだ?」
「それは…。」
「一緒に来い、ってことだ。」

 自信満々に手を伸ばし笑顔になる少年にレインは満面の笑みで手を握った。

「はい!勿論です!」
「オレはデュオだ、よろしくな。」
「私はレインです!あ、でもレイって呼んで下さいね?」

 その様子を見たポケモンたちは、デュオの肩に手を置いて口々に名前を告げる。

『(グリーン)俺様はグリーン様だ!男同士よろしくな!』
『(ホワイト)あたしはホワイト。よく見るとあんた、いい顔してるじゃない…。』
『(ブラック)私はブラックです!お供感謝いたします!』
『(ブルー)ブルーよ。何かあったら言いなさいな。聞くかは分からないけどね。』
「よろしくな!って…重い!どけぇぇ!!」

 こうして、彼女の冒険は幕を開けた―…。

・つづく・
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日輪 ☆2011.10/09(日)16:15
「まだなの、まだあの子は見つからないの!?」
「何をしているんだ、お前たちは!それでも精鋭の兵士か!」
「も、申し訳ありません…隈なく探しているのですが…」

 王室では、いまだに姫が見つからず王と王女は椅子に立ったり座ったりを繰り返していた。眉が吊り上り明らかに怒ってはいたが、それよりも焦りの方が見えるような状態だった。
 王と王女の前でペコペコと頭を下げている兵士の後ろの扉が勢いよく放たれ、息を切らした兵士が入ってきた。

「ほ、報告です!」

 その声を聴いた王と王女は立ち上がり、期待に満ちた表情で兵士を見る。

「見つかったのね!?」
「それで、どこに?」

 しかし王と王女の問いかけに、兵士は顔を青くしながら首を横に振る。

「違うのです!占い師のアースさんが…姿を消してしまったんです…!」

 王と王女は表情が固まった。彼らの頭の中には、全身を漆黒のフードで覆い、決して口では喋らぬ『男』の姿が浮かんでいた。

<NO.4>

「…へぇ、そうだったのか。」
「はい。ですから私は、あの方に恩返しがしたいのです!」

 並んで歩きながら、デュオはレインが脱出するまでの話を聞いていた。ポケモンたちはというと、デュオからトレーナーなら、ポケモンはボールに入れて行動するもんだ、というアドバイスによりポケモンたちをボールに入れ、リュックに入っていたボールホルダーを腰に巻いてそこにボールを固定させていた。
 一通り話しを聞き終えたあと、デュオは腕を組んで考え始める。

「とは言ってもなぁ…そいつの顔や名前まではわかんねぇんだろ?」
「う…お恥ずかしながら、その方のことは瞳が私と同じをしていたこと以外は何も知ることが出来なかったんです…。」

 肩を下げて落ち込むレインに、デュオは肩をポンポンと叩きながらニカッと笑う。

「ま、お前のせいじゃねぇよ。あっちが教えてくれなかったんだよな?そう考えりゃあいいじゃねぇか!」
「…そうですね。そうですよね!ありがとうございます、デュオさん!」

 レインがにこにこと笑う中、急にデュオが真剣な顔をして後ろに振り返る。

「―何かが近づいてる。」
「え?何かって…」

 すると突然、目の前の茂みが動きだす。レインはびくっと身体を固まらせると、デュオの後ろに隠れる。デュオは変わらずに視線を動く茂みに向けていた。

 ガサガサガサ    ガサッ

『あれれぇ、人がいるよぉ?』
「…なんだよ。」
「あれは…ミズゴロウ?」

 茂みからひょこっと身体を出したのは、まだ幼いであろうミズゴロウだった。続いて再度茂みが揺れ、同じようにまだ小さいキモリとアチャモが現れた。

『あれぇ、ほんとだね。もしかしておじさんが呼んだのかなぁ?』
『そんなことないと思うけど…あ、おじさん来た!逃げろぉっ!』

 3匹はお互いに顔を見合わせた後、また茂みが大きく揺れたのを見て走っていってしまった。

 バサッ

「こら!イタズラポケモンたち、今日こそ…あ、あれ?」

 白衣を着たおじさんが、茂みから現れた。3匹が言っていたおじさんとは、どうやらこの人らしい。手には3つのボールが抱えられていた。ポケモンたちしかいないと思っていたのか、レインたちを見て目を丸めている。

「キミたち、いったいどこから…。」
「あの…ポケモンたち、あっちに逃げちゃいましたよ?」
「はっ、そうだった!全くアイツらは…待てぇっ!」

 本来の目的を忘れていたらしいおじさんに、レインはおそるおそる声をかけた。おじさんははっと我に帰ると、レインが指先で示した方向へ慌ただしく向かっていった。
 口を開けたままおじさんが去っていくのを見ていた2人は、顔を見合わせて思わず笑った。

「ははっ、なんだあの人!」
「ポケモンたちに、遊ばれてましたね…ふふふ!それにしても、初めて生で見ました。あれがキモリ、アチャモ、ミズゴロウ…。」
「さて、じゃあとりあえず。」
「うわぁぁあ!」
「…なんだ!?」

 おじさんとは逆の方向に2人が足を進めようとしていた矢先、おじさんらしき悲鳴が聞こえた。
 2人は顔を見合わせ頷くと、おじさんが去って行った方へと走って行く。
 ある茂みをかき分けたところで、デュオがあわててレインの前に腕を出しレインを止める。

「待て、進むな!」
「は、はい!」
「下、見てみろ。」

 慌てて返事をするレインに、デュオは指を下に向けた。言われた通り下を向くと、なんと大きな穴が開いていた。深さは10メートルくらいだろうか、少し下におじさんの姿が見えた。そして穴を挟んだ向かい側には、あの3匹が嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねていた。

「まあ!これは…。」
「落とし穴みたいだな。どうやら、ポケモンたちが掘ったようだな。おーい、大丈夫ですか?」
「うう…す、すまない。油断していた…手を貸してくれないだろうか?」

 穴を覗きながら声をかけると、おじさんから返答があった。だが深さが深さだ、自分ひとりでは出られないらしい。
 レインは、申し訳なさそうに穴に向かって声をかける。

「ご、ごめんなさい。私の皆さんでは、どうにも…。」
「カメックス!」

 レインが謝った直後、デュオがボールを取り出し空に投げた。中から、大きな青いポケモンが現れる。レインはまたもや生では初めて見るポケモンに、目を輝かせ感動している。

「こ、これが…カメックス…!」
「カメックス、あのおじさんを助けてやってくれ。」
『(カメックス)了解した』

 カメックスが首を縦に振って中に降りていくと、一分もしない内に甲羅につかまったおじさんと共に水柱を立てながら現れた。

「この技は…。」
「みずでっぽうだよ。お疲れ様、戻っていいぞ。」
「みずでっぽう…あれが…!」

 初めて見るポケモンの技に感動するレインをよそにおじさんを降ろして役目を終えたカメックスをボールに戻したデュオは、いつの間にやらボールを3つ腕に抱えおじさんに差し出した。

「どうぞ。こいつらも満足したみたいで、もう今日は出てこないと思いますよ。」
「き、キミ、今の一瞬でここまでしてくれたのかい!?どうやって…まあ、いいか。」

 差し出されたボールをポケットにしまって白衣の土を払ったおじさんが、二人の前で立ち上がった。

「今回はどうもありがとう!君たちトレーナーだろう?」
「一応…えへへ…。」

 トレーナーだと言われ照れるレインを見て、おじさんは肩にかけていたかばんから機械を2つ取り出して2人の前に差し出した。

「これはお礼だ、ぜひ受け取ってくれ!なあに、また作ればいいんだ、遠慮しなくていいんだよ!」
「これ、ポケモン図鑑じゃないっすか!確か、博士しか持ってないっていう…ん?」
「はか、せ…?」

 2人が顔を見合わせ少し固まっていると、デュオが恐る恐る聞いてみた。

「あの、もしや…。」
「ああ!」

 何か分かったのかポンと手を合わせ、満面の笑みで博士は答えた。

「私はオダマキ!ホウエンでポケモンの研究をしている博士だよ!」

―――――――――

 オダマキ博士に道案内をしてもらい別れた2人は、緊張していたのか息を吐いた。そして手元にある色違いの機械を見つめる。

「はぁ…驚きました。まさか、博士に出会うなんて。」
「オレもさすがに驚いた。だけどまあ、図鑑っていう便利なものも貰ったし、さっそく町を目指そうぜ!」
「はいっ!」

 2人は早速図鑑をそれぞれのカバンやリュックにしまい、町を目指して並んで歩き始めた。

―――――――――

「そういえばあの女の子、どこかで見たことあったような…気のせいか?気のせいだな!」

・つづく・
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日輪 ☆2011.10/16(日)17:11
暗く声の響く空間の中、複数の影が動く。
 あるのはその最奥に存在する、2つのロウソクの明かりのみ。

「今回は順調に、目的へと向かっているみたいよ。彼から連絡があったわ。」

 女性を思わせる影が、口元に笑みを浮かべてロウソクの真ん中にある椅子に座った青年を見る。

「…今回、あの男の妨害はないようだな。」

 女性の隣に並ぶように、小さな影が呟いた。

「ハッ!某が行けばたやすく倒してやれるぞ!」

 青年の正面の影が、身を乗り出すように意気込んだ。

「そんなことを言っているから、お前は一人では行かせられないんだ!」

 その影の隣に立っていた影が、口を出して怒って見せた。
 そんなやり取りを見ていた青年は、口の端を吊り上げて不敵に笑う。

「―大丈夫ですよ。我々が手を下す日は近いのですから。」

 その声を聴き、いくつもの影が体の奥深くから笑うように揺れた。

<No.5>

「此処がトウカシティか。こりゃまたのどかな所だな。」
「家です、町です!人が歩いてます!」

 手元の地図の映像と町を確認し少し呆気にとられているデュオの隣で、目を輝かせキョロキョロとレインは色んな物を見て感動していた。

「さて、先ずはポケモンセンターにでも行くか。」
「ポケモンセンターへですか?なぜです?」
「ポケモンたちが疲れてるからだよ」

 デュオの説明に、レインは首を傾げた。

「バトルをして、弱ってしまったら連れて行く場所ではないのですか?」
「まあ、それが基本なんだけどよ。さすがに長い間入れてたからちょっと体調も悪くなってるかもしんねぇしな。」

 その言葉に、レイン思い出したようにさらに疑問を投げかける。

「長い間…そういえば、デュオさんは一体何処から…。」
「!そ、そうだレイン!お前、バトルしたことねぇだろ?教えてやるから、とりあえずさっさとポケモンセンター行くぞ!」

 急に慌てて話を終わらせ走って行くデュオを、慌てて追いかけるレイン。

「ま、待ってくださいデュオさ『グオオォォ!!』…!」

 急に聞こえた声に、レインはその場で立ち止まる。

『グアアァオオ!』
「上から…きゃあっ!?」

 空から声が聞こえたのを確認しようと顔を上げた途端、突如レインの目の前に巨大なポケモンが現れた。ポケモンが現れる直前、4つのボールが自動的に開く。

「ぼ、ボーマンダ…でも、声が聞こえないなんて、この子一体…。」
『(ホワイト)この子、操られているわ!』
『(ブラック)目が…普通じゃありません。』
『(グリーン)やいお前、姫さんに何するつもりだ!あぁん?』
『(ブルー)たとえ操られようとも、容赦はしませんわよ。』

 レインを庇うようにポケモンたちは前に立った。そこに、状況に気付いたデュオが後ろからレインに声をかける。

「おい、大丈夫か!?なんだコイツ…どこから来た?」
『グギャァァア!』

 苦しくもがくように暴れまわるボーマンダ。皆が構える中、急にボーマンダは体の向きを変え、少し離れた場所にいる少年のもとへと襲い掛かろうとしていた。それに気付いたデュオは、慌ててカメックスの入ったボールを空に投げるが、予想以上に速く動くボーマンダは既に少年に襲い掛かろうと腕を振り上げていた。

「くっ、間に合わねぇか!こうなったら…。」

―パキン

 デュオが姿勢を低くすると同時に、ボーマンダが凍り付いた。

「え…?い、一瞬で…。」
「凍りついた…だと?」

 氷付いたボーマンダの影から、氷の塊のようなポケモンがこちらを見てにこっと笑う。その隣にいた少年が、レインたちのもとに駆けてきて同じように笑いかけた。

「大丈夫?けがはなかった?」
「は、はい。あの…あれはあなたのポケモンが?」

 声の途絶えてしまったボーマンダを苦しそうな表情で一度見ては少年に問いかけた。

「うん、ボクのオニゴーリの〈ぜったいれいど〉だよ。ノズパスの〈とおせんぼう〉をかけておいたから、途中からそっちに行けなくなったんだよ。」
「なるほど…それでか。どうりで動じないわけだ。」

 少年の説明に納得したように、顎に手をあてデュオは首を縦に振って頷いた。

「最近多いんだってさ、ああいうの。ボクも、何回か見かけててね。気をつけなよ、じゃあね。」

 そう言って、少年は右手を振ってその場を去って行った。

「はぁ…とりあえず、皆さんが怪我をしなくて良かったです。ダメですよ!バトルできないんですから、ボールで隠れてないと。」
『(グリーン)う…でも、俺様たち、うぐっ!?』
『(ブルー)ごめんなさいねレイン、私たちはとにかくあなたを守りたくてつい動いちゃったの。』

 レインが腰に手を当てて言い聞かせているのに反論しようとしたグリーンの頭をヒレで叩き、ブルーは謝った。
 そんなポケモンたちに、レインは苦笑する。

「すみません、早くバトルの仕方を覚えます。そしたらきっと…命を奪わず止めることも、出来るでしょうから…。」
「…。」

 氷つき命を落としてしまったボーマンダに近づき悲しそうな表情を浮かべるレインに、誰も声をかけることが出来ず目を逸らした。
 ただ一人、怪しく笑う影を除いては。

・つづく・
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