前回は『腸』の免疫の最前線『粘液』の話と、『回腸粘膜』の『吸収』と『排除』の自己矛盾の話をした。
今回は『腸』の免疫と『リンパ腺』のお話。
『腸』の『粘膜』は薄くて強い。
その上に分厚い『粘液』のガード。
あんた等「たかが『粘液』」て言うて馬鹿にするかも知れへんけど、ばい菌の大きさになったら粘液の繊維のほうが長いんやで。
あんた等がばい菌の大きさになったら、粘液の繊維は大型トレーラーくらいの長さの濡れたビニールコードがもつれたような感じやと思てくれたらええ。
ばい菌は1ミリの100分の1程度の大きさやから、1ミリの『粘液』は100メートルの深さと同じくらいや。
水に溶けた栄養分はしみ込んでいくけど、ばい菌は途中で繊維にからんでしもたりするから、まるでジャングルの中のサバイバルや。
あんた等が100メートル泳ぐのん、どれくらいの時間かかる?
まぁ普通2・3分いうとこやろか?
これが水草がからみつくような池やったら3〜4倍かかるやろ。
そやからいくらばい菌が早う動いても、1mgの『粘液』ジャングルを突破して、『腸』粘膜に到達するまでゆうに10分はかかる計算になる。
ついでに『粘膜』の『粘液製造細胞』が、いっつも『粘液』を造り続けてるから、ばい菌がなんかの間違いで『粘液』ジャングルに迷い込んで『粘膜』に向かってしもうても、『粘液』の流れに逆らえずにウンコの方に押し戻されて万事めでたしめでたし。
だいたい我らが『腸内細菌』はわざわざ『粘液』の中にまで好きで潜り込みたがってるわけやない。
『腸内最近』は自分の居心地の良えとこでのんびりしてたいはずなんや。
前回も言うたように『粘液』の中には栄養分は少ないし、『塩化リゾチーム』とか『IgA(アイジー・エー)』とかのいろんな生態防御物質があって住み心地が良うないさかいにな。
これでばい菌が好き好んで身体の中に入ろうとしてるわけやないいうのんがよう判るやろ?
さて今言うた中に矛盾がある。
『粘液』がウンコ側に流れてるんやったら、『回腸』のウンコの中でせっかく『腸内最近』が造ってくれたビタミンとか栄養分とか毒物とかは『回腸粘膜』に届かへんはずや、そやろ?
身体としてはせっかくの栄養分や、利用したい!というわけで『回腸』はウンコが入ってから出ていくまで六時間、いつでもウンコと『粘液』を混ぜくり返す「のたくるような動き」をしてる。
この「のたくり動作」のおかげで、いつでも『回腸粘膜』に新しいウンコが触れることになるから、その瞬間に『粘膜吸収細胞』のイソギンチャクが水に溶けてる栄養分を吸い取ってしまうんや。
ちなみにネズミでも解剖して『小腸』を2cmくらい切り取ってきて、表と裏をうら返して机においたらミミズみたいに動きまわるそうな。
ミミズと『腸』は同じような仕組みでできてるらしい。
自然いうのんはつくづく無駄のうできとるわ。
話題がそれた。
新しいウンコと『回腸粘膜』が触れ合ういうことは、我が『腸内細菌』と『回腸粘膜』もご対面することになる。
身体と見知らぬ生命体との初めての出会い。
ファースト・コンタクト、第一種接近遭遇や。
『腸内細菌』すなわちばい菌が『回腸粘膜』と接触するんはこの一瞬でしかない。
何でか言うたら、次の瞬間にはまた「のたくり運動」が起こって出会った二人の仲を引き裂いてしまうからや。
一期一会とはよう言うたもんや。
身体にとってはこの一瞬に出会った相手を記憶せなあかん。
故田中角栄元総理は一度出会った人の顔と名前は絶対に忘れへんかったそうや。
これは営業の鉄則でもある。
身体でも同じや。
一期一会、『今』しかない!
そやけど、そやけどや。悲しいかな『回腸粘膜』は蟻の一匹入れない鉄壁のスクラム組んでることはこの前書いた通りや。
ばい菌は水に溶けるほど小そうない。
さあどうする?
ここで身体は逆転の発想をした。
入ってこられへんねんやったら、こっちから「拉致監禁」したらええやないか!
この仕組みが『腸』の免疫の仕組みなんや。
この仕組みがアレルギーとか難病の切り口になる。
謎は深まり以下次号。
読み続けたかったらちゃんと会員になるんやで!