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ー前書きー
このページを開いてくだったかたに、まずは礼を。
まぁたらたら堅苦しいこと言うのも嫌なんで簡単に、 【この物語は多大な厨ニ成分と、ワタクシの妄想が含まれております。取扱いには御注意を。】
では、どうぞお楽しみ頂ければ幸いです。
森の狗
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
…さて、あれから幾年が経ったのだろう。
私の住みかは木のうえ、川辺、民家の付近はたまた火山の河口近くと言うのもあった。
ほぼこの大地の地形全てに住みかを作ったと言っても過言ではない。
…ただ一ヶ所を除けば、だが。
砂丘、
実は私が一番苦手としているその場所は奇しくも私の生誕の場所でもあった。
あの頃は砂の中で気楽に過ごしていたなぁ、と懐かしくおもう。
何時しか私は成長し、大地ーいや、大空までも行動範囲を広めることができるようになったのだが、今度は反対に荒れ狂う砂嵐の中で生活することが出来なくなってしまった。
理由は簡単。
…怖いのだ、砂嵐が。
笑いたければ笑えばいい。 しかし飛翔することが許された代償として地に足を着け、一歩一歩踏みしめることが以前よりも苦手になった私には、それは死活問題だった。
…飛ばされる。
飛ばされる飛ばされる飛ばされる飛ばされる飛ばされる飛ばされる飛ばされる飛ばされる飛ばされる飛ばされる飛ばされる飛ばされる。
砂の性威で前後不覚となり、羽ばたきは嵐に邪魔をされる。
私にトラウマを植え付けるには十分すぎる要素(ファクター)だった。
以来私は砂丘へと足を踏み入れていない。 私は、臆病なフライゴン。
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ー1ー
…そんな私にも転機と言うものがやって来た。 少し大袈裟かもしれないけど。
「ねぇ君、僕と一緒に着いてきてくれない?」
…それはひとりの少年だった。 齢はおそらく16〜18と言ったところだろうか。
彼はそれを言うためにわざわざ私の今の住みかとなっている岩山まで登ってきたのだそうだ。
最初はそんな危険を犯してまでやって来て一体何を企んでいるのだろうかと疑ったが、聞くにただ世界をまわってみたいとの事だった。
拍子抜けしたがそれよりもなぜ私に、という思いが大きかったのだが
「殆どの場所で君を見たっていうことを聞いて、ほら人間なんてさ空も飛べないから君の旅についていけたらなぁって」
…それが少年の言だった。
確かに私は大空を舞い、何処へでも行くことができるけれどそんなことの為にわざわざ頼み込んでくる人間が要るなんて思いもしなかった。
そもそも私は旅の連れ、なんて要らないし欲しくもなかった。 だから、
『あなたの旅を手伝う気も無いし、私にはどうでも良いことです。此処は危険だから早く家に帰りなさい。』
私たちは人間の言葉を理解できるけど、人間は私たちの言葉を理解できない。 でも気持ちぐらいは伝わるもので、彼には私の拒否の気持ちは伝わった様だった。
「そっか…まだ決めらんないか。当然だよね突然来て連れてってなんて言われたら驚くよね。 わかった。また明日来るよ!」
『ちょ、はぇ?』
…訂正。あんまり伝わってなかったみたい。 私の制止の言葉も聞かずにピョン、ピョン、と器用に険しい岩山を降りていってしまった。
ハァ、と息を吐く。 …面倒臭いことになった。
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翌日、早朝。
私は突然目を覚ました。 普段は後一時間は眠っているはずなんだけど….
『!』
そこまで考えたときにある違和感に気がついた。恐らく早く目覚めたのもそれが原因だろう。
『外が、騒がしい…?』
金属の様な物がぶつかる音、それと微かだが威嚇の声が聞こえてきた。
むぅ、と唸る。 …私の住みかの周りにはエアームドの群れが住んでいる。
先程聞こえてきた金属音からして彼らが侵入者か何かを撃退しに来たのだろう。
つと、昨日の少年の事を思い出す。
(あの子は運がよかったわね、たしか昨日はエアームド達は狩りにいってい……っ!)
失念していた。昨日彼はなんと言っていた?
ーまた明日来るよ!ー
彼は別に昨日と同じ時間に来るとは一言も言っていなかった。 いや、むしろ私に会えたことで舞い上がり“早く来たい”と思う方が自然かも知れない。
『不味い!』
エアームドは排他的な種族だ。 人間でも自らが認めた相手にしか接することはない。
故に相手が人間であろうと加減などするはずも…
『ッ!』
そこまで考えて私の体は勝手に動き出した。 ただ昨日一度だけあった少年のために何故こんなにも焦っているのかは解らなかったが強いて言えば、 たぶん、自分の性で人が死の危険にさらされるのが気分悪くなっただけ。
…本当にそれだけ、だろうか?
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー
なんとかエアームド達との交戦している場所についたのだけれど、
…はっきりいって最悪の状況だった。 必死に逃げる少年を10は居るであろうエアームド達が襲っている。
少年も上手いこと攻撃を交わし続けてはいるが逃げている方向に行けばたしか崖になっていたはずだ。おそらくエアームド達が誘導しているのだろう。
直ぐに追い付こうとするが、いかんせんあちらも移動し続けているため距離を狭めにくい。
そして
『もう…崖にっ』
全速で飛んでいたがあと一歩及ばず、少年はとうとう崖の目の前にたどり着きその足を止めてしまった。
…そしてエアームド達は少年に殺到し、
彼は、落ちた。
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『させないっ!』
少年にエアームドが体勢を整え襲いかかるその一瞬に出来るタイムラグのお陰で私は追い付いた。
エアームド達からの死角、切りたった崖の側面から飛び出し落ちてくる少年を何とか背中で受ける。
ドッ、という音と共に背中に重みが加わり少年が無事という事を確認した。
…あとはあの子達に引き下がってもらわないとっ
「ー…!?」
私の背から何やら叫んでいるがそんな構っている余裕はない。
『【火炎放射】っっ!』
膨大な熱量を纏った光線がエアームド達のすぐ横を掠める。
…これは、威嚇攻撃。あの子達の近くは通るけど絶対に当たりはしない。
エアームド達は崖下からの突然の反撃に戸惑っていたが私が現れると、リーダーであるエアームドが顔をしかめた。
『…これは我々の問題ですよ。いくら貴女様でも邪魔は困ります。』
その言葉にアハ、と苦笑した。 『それはごめんなさいね。でもあんましこの子を傷つけられたら私も困るもの』
『?わかりませぬな。貴女様は人との交流は行ってなかったはず。それを今更…』
『あー…その、』
まず。ちょっとばかり痛いところをつかれてしまった。どうしようか…
『…それともその小僧は貴女様にとって特別な御方、とか?』
『そ、そうっそれ!この子はね私の、』
あー、と何の気なしに空を見上げる。 いい言い訳が思い付かない、ってそう言えばこの子昨日何か言ってたわね。たしか旅がどうとか…
『あっ、そうだ!この子はね、私の主人よ!』
ビシィッ、多分そんな音がエアームド達からした気がする。 あれ私なにか変なこといったっけ?
はて、と首をかしげているとハァとリーダーから溜め息が聞こえてきた。
『まさか御主人、とは。全く貴女様には驚かされてばかりです』
彼は苦笑まじりにそう言うと他のエアームド達がいる方向へ向き直り、
『撤収!』
そう命令した。
エアームド達が帰っていくなか、リーダーの子がこちらえきた。 何事かと身構えたが彼はただ少しだけ恨めしそうに此方をみあげ、
『お人好しも構いませんが、程ほどに』
そういって仲間の方へ飛びたっていった。
…ばれちゃってた、かな。 アハハ、と一人で苦笑した。
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ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー
『全く心配かけさせてくれますね、貴方は』
溜め息混じりにいう。 そんな様子が伝わったのか少年は頭を下げた。
「ごめんなさい!君を見たときからどうしてもそわそわしちゃって…あそこにはエアームドが居るって聞いていたのに…」
ううぅっと少年は涙声になる。 いや、泣かれても困っちゃうんですけど。 ちなみに今は岩山ではなくその麓まで来ていた。だってそっちの方が安全だし。
「それに、それにっ僕は…」 『あぁっ、もうっ!』 「うわっ!?」
もうこのまま放っておいたら絶対に泣きそうだったから彼を抱き上げた。
驚きで声のでない少年をそのまま私の顔の高さまで揚げて言う。
『確かに今回の貴方の行動は軽率でした、愚かと言っても差し支えない程に。』
少年は私の怒りのこもった声に顔を下に向けた。
しかし、と今度は私が顔を下げた彼を覗き込む様にして続ける。
『そんな危険を犯してまで私に会いに来たのは貴方が初めてです。今まで何度か私欲のために接触を図りに来た者は何人かいました。…ですが私が一度断れば「こんな危険な場所来れるか」と、二度と来るものはいませんでした。実を言うと今回の貴方に驚いているのです。そして認めました、それも一緒に旅をしても良いと思えるくらいに』
ハッっと少年が顔をあげる。
「そ、それじゃ…」
私は微笑みながら頷いた。
『ええ、連れていってあげましょう。貴方の望む場所、すべて』
途端に少年の顔が綻ぶ。 現金だな、とは思うがそれはそれでいいかも知れない。
じゃあ、と少年は手を差し出して続ける。
「改めて、宜しくっ」
少年の満面の笑みにつられて私もクスクスと笑いながら、
『ええ、こちらこそ』
…その手を握った。
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ー2ー
「そうだ、シズミに行こう」
さてはて、あれから少しばかりの日にちが経過し少年の身支度、その他諸々の準備を終わらせ後は行き先を決めるだけになった。
晴れて(?)私は気ままな一人旅から少年を連れた二人旅になったわけで、特に行きたいという場所は無かったから行き先はそちらに任せると伝えておいた。
そして冒頭の発言に繋がる。
シズミシティと言えば確か此処から北北西に2日ほど飛べば見えてくる港町であったはずだ。
彼処で獲った魚は中々に美味しかった。
「僕さ彼処で魚を食べてみたいんだ。まだ一回も食べたことないから」
その言葉にへぇ、とほんの少し驚いた。大体の街であったら魚は出回っている筈なのだけれど… それとも彼処が旨い魚所で有名だからそこまで美味しい魚は食べたことないっていう意味でいったのかな? うん。こっちの方がしっくりくる。
『それで、向かう場所はシズミシティで構わないのですね?』
私の問い掛けに彼は困ったように言う。
「無理、かな…?」
『いえ、全然問題ないですよ』
先の私の返事を否定的な言葉だと思ってしまった少年は無理を言ったかもしれないと思ったらしい。 ああ、言葉が伝わらないって不便。
だから今度は分かるようにフルフルと首を横に振った。 とたんに彼の顔が明るくなる。
『…全く本当にゲンキンな子だなぁ。』
まぁ悪い気はしないんだけどね。
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ふむ、と暫し思考する。 大体シズミまで私の翼で一日半ぐらいか。車では二日だが、
っと、あの子を乗せるのを忘れていた。 そうすると少し速度を落として一日半と三刻といったところか。
うん、このくらいならガチガチに固めた荷物とかもいらないかも。 途中で四、五回休憩を挟んで飛べば夜には着くかな。
よし。
『では貴方は一度家に戻り準備をしてきてください。取り合えず必要な物は一日分の食事とあとお金程度ですね。それからは二人で何とかしましょう。』
そういいながら私は近くにあった私の食料と少年の腰についているバッグの中の財布を指さした。
うん、と少年は頷き、
「わかったっ、肉とバッグがほしいんだね!」 『…違います』
貴方が、と少年を指差す事を追加する事でやっと理解してもらえたようだ。 溜め息をハァと吐く。
まったく、もう。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー
『ーさて、準備はよろしいのですか?』
場所は変わり今度は少年の住む故郷のーセッチャアタウンと言うのだけど今は全く関係無いーの付近の草むらで私達は出発しようとしていた。
「うん、両親はいないから大丈夫だよ」 『いや別にそんなこと聞いてないのですが…って、え?』
聞き間違いでなければ今彼は両親がいないと言わなかったか。 それってつまり亡くなって…
「あ、ウチの親は海外で仕事してるからいないだけだよ」
…ないのか。 ビックリした、一瞬亡くなったのかと思っちゃった。少年のお父様、お母様ごめんなさい、勝手に殺しちゃいました。
…とと、脱線しちゃった。 フルフルと首を左右に振り少年を見やる。
『じゃあ、行きましょうか』
私は少し微笑み、そして少年もニコッと笑い、
「うん!」
と頷き返すのだった。
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さて、時間は半日と少し進む。 私達が飛びたったのがお昼少し前だから今は夕暮れ、黄昏時の前後になる。
あの子は想像以上に空での移動で体力を使っていそうだったから予定を変更して少し早めの休憩だ。
今居る場所はまるでマンガか、と思ってしまう程に狭い孤島だった。まあ、木屑とかは豊富に落ちていたのでまだましだけど。
そして拾い集めた木屑をかき集め火をおこし(私の火炎放射で。少年が火をたくのを待っていたら夜が明けそうだった)暖と少し早い食事を取っているところだった。
「ほぉころでひゃ」
『口の中の物をちゃんと食べてから言いなさい』
そういうと少年はモグモグと急いで粗嚼し、
「むぐ__っ!」
…喉を詰まらせた。
『ああ、もうっ』
仕方がないので背中をさすりながら少年のバッグの中に入っていた水筒を取りだし渡した。 お母さんか、私は。
「ぷはっ!いやぁビックリした」
『まったく…落ち着きが無いからそうなるんです』
私の非難する様な目に少年はタハハ、とはにかんだ。
「いや、ごめんごめん。ちょっと今大事な事忘れててさ、焦っちゃった」
『大事な事、ですか?』
はて、と首をかしげる。 何かやっていないことなどあったかしら? あるとしたら少年が何か忘れ物をしてきたとかだろうか。
もしそんな事言ったらビンタかな。
と、そこまで考えていたときに少年が割りと真面目な顔で口を開いた。
「僕たち、まだ互いの名前しらなくない?」
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『名前、ですか…?』
確かに今一度考えてみれば私はこの子の名前を知らない。 今まで少年、やこの子などと呼んでいた。 いや、問題はそれ以前なのだ。
(あぁそうか、そういえば)
名前、何てものがあったなあ
「…どうしたのさ?」
私は暫くの間ずっとうつむいていたようで不審がった少年に声をかけられてやっと我に返った。っといけない、いけない。
『なんでもないですよ』
少年に向かって頭を横に振りニコッと微笑む。 途端に少年は不安そうな顔から明るい、いつもの顔に戻り話を続けた。
「やっぱりさ言葉は分かんなくてもお互いの名前ぐらいは知っておいたほうがいいと思うんだ、」
たとえば、えーっと…と身振り手振り私に説得(?)を開始した。 おそらく私がうつむいた事が少年にとっては名前を教えたくない、と言っているのだと思わせてしまったのだろう。
ウフ、と苦笑混じりに笑い彼の頭の上に手をおく。
『気を使ってくれてありがとうございます。…まぁ勘違いなんですけどね』
やっぱり言葉の通じない人間との会話は難しいな、と思う。 あのときだって…
「…フライゴン?」
『あら』
いけない、また一人で思考していた。 少年の頭の上におき続けていた手をどけて少年の顔を見るとほんのり紅くなっていた。恥ずかしかったのかな。
クスリと微笑む私に対してからかわれたのかと思った少年は少し怒り顔で、とはいっても今だ頬は紅いけれど。 プクッと顔を膨らます。かわいい。
「あーもうっ、知らないっ!」
だから勝手に自己紹介する!強制だからね、とまくしたてられる。
勢いに押されちゃったけど勝手に自己紹介するってなんなんだろう? 何となく日本語に違和感を感じる私だった、まる
「僕の名前はコウヤ、風見荒也だよ」
フライゴンは?と問い掛けてくる。 私の名前、か…
『申し訳無いのだけど』
首をフルフルと振る。
「…?」
少年にはいまいち伝わっていないようで首をかしげ頭にハテナのマークがういてそうな顔をした。
『…わかりませんか』
じゃあ、と足下の砂浜に自分の指で文字を書く。 それをみた少年が信じられない、とでも言うかのように目を見開いた。
「…えっ、ちょ、ちょっと、これってどういう」 『ことばの通りですよ』
ーそれは私の願いで、 ーそれは私の絶望で、 ー…それこそが私の希望だった。
<ナイ>
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「無い、って…」
『ええ。私には名前がありません』
そう言って彼、コウヤを見て微笑む。 しかし私の表情とは反対にコウヤはひどく困惑していた。
「…無い、ってどういう事さ。ポケモンにだって皆名前はあるはずだよ。親が名付けたり、なのに、」
ポム、と彼の頭に再び手をおき途中で言葉を切らせる。
『…まぁ正確には捨てた、いえ【消された】と言った方が正しいんですけどね』
私の言葉にコウヤはさらに怪訝な顔になった。 しかし私はそれを無視して続ける。
『いいんですよ。これは、私の…いえ私達の選んだ道なのですから』
「…?」
『わからなくていいんです。むしろわからないでください。あんな事にあなたを巻き込みたくない』
本当にわからない、といった顔でこちらを見るコウヤから一度視線を外しもう太陽が沈んだ地平線を見る。 少し喋り過ぎちゃったかな。
『さて』
少し暗い空気にしちゃった様で忘れてたんだけど今は名前の事だったよね。 そう思い再びコウヤを見る。
『私の事は以前通りフライゴンと読んでください。まぁコウヤが呼びにくいのであればニックネームなりなんなりつけて貰っても構いませんが』
どうします?と問う。 コウヤも先の事はあまり深く聞かない方が良いと察してくれたようで以前通りの笑顔で返事をしてくれた。
「…うーんそうだな、確かに今まで通りでも多分大丈夫だと思うけど…」
でも、と続ける。
「やっぱり旅の相棒なんだからさただフライゴン、じゃ何だか味気ないよね。って事でニックネームつけるよ!…いいかな?」
『ええ、構いません』
コウヤはやった!と笑い じゃあ何にしようかと考え込、
「よし」
まなかった。 即断即決は良いけど大丈夫なのかな。 そんな私の不安を他所にコウヤは自信満々の顔だった。
「えっとねフライゴン、だから少し変えて【フィン】!どう?我ながら良い出来だと思うんだけど」
『【フィン】、ですか?』
なにそれ予想外に良い名前。
『フィン…うん、良いですね。ではコウヤこれからは私の事をフィンと読んでください』
私は満面の笑みで、そして
「うんっ、フィンよろしく!」
コウヤも満面の笑みで。
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ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー
さてさて、
またしても時間は半日程飛び私達は【漁村】シズミに着いた。
前に一度来たことはあったんだけど意外とこの村大きいのね。 多分これはもう町、【漁町】と呼んだ方がいいかもしれない。どうやって読むかは知らないけど。
「うわ、すごいねーっ。パッと見ただけでも僕の村のすんでる人の数越えてるや」
『…確かにこれは、凄い人の数ですね…』
今は朝、それも日が出てまだ間もない頃だから多分これはせりをしてるんだろうなぁ。
噂で聞いたことはあったけどせりってこんなに白熱してるんだ。 もう皆大声で喋るもんだから耳が痛くなっちゃいそう…
『…ってあら?』
すこし記憶を遡っていたらボーッとしていたようで気がつけばさっき隣にいたコウヤがいなくなってしまっていた。
『ちょっと、え、嘘でしょう!?』
ちょっと待ってこの中からコウヤを探せって言うの? …さすがにそれは
「あ、いたっ!おーいフィーンー!」 『無理かも…って戻ってきた』
しかもコウヤは両手に発泡スチロールの箱を抱えている。 ハッハッ、と息を荒げながら嬉しそうな顔ー所謂ホクホク顔で帰ってきた。
『コウヤ、見当はついているんですが、一応念のため聞いておきますね。その箱の中身はなんですか』
私がコウヤの持っている箱を指差すと彼はああ、と言って
「勿論、魚だよっ」
『…』
言い放った。
いや、別に私は魚を買うことにどうこうって訳じゃないのよ? …その、ね
『…あまりにも多すぎませんか、これ』
そう彼は両手に箱を持っている。
繰り返すがコウヤは【両手に】箱を持っている。 二箱である。
そんな大量に買ってどうするの。 さすがにこれは頭痛になりそうだ。
「いやーあそこで市場開いてたおじさんがすっごい気前良くてさ!半額にしてもらっちゃった」
未だに興奮冷めやらぬ、といった様子で喋り続けるコウヤ。 この子、魚は痛みやすいこと知ってるのかしら…
『ところでコウヤ、代金は』
「全部使っちゃった。エヘ」
『あぁ…』
めのまえがまっしろになった!
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うん、現実逃避はこれくらいにしよう。まずはコウヤにこれからどうするか聞か「おうぃ、そこの坊主!」あぁ、もうそんな近くで大声あげないでよ… あー耳がいたい…
「?えぇっと何ですか?」
その声に反応したのはコウヤだった。
…いや、私今話し掛けてきた人に見覚えが無かったから他の誰かに話しかけてるのかと思った。それに私の真後ろで話し掛けてきたし。
コウヤの知り合いか何かかな?
そう思ってつとコウヤを見やると彼もこちらを見ていたようでちょうど目があった。
(コウヤ、あの方はコウヤの知り合いですか?)
(…え、フィンの知り合いじゃないの?すごい知った顔でこっち見てくるからフィンと知り合いだと思ったんだけど)
((…))
うむむ、じゃあこのヘラヘラと笑っているおじさん、いやお兄さん?ぐらいの人はいったい何者なんだろう? コウヤも凄く困った顔になってきた。
「…えーと「おぉ、悪い悪い!自己紹介してへんかったなぁ!」…え、あ、はい」
ワイの名前は卦梹ゆうんや、よろしゅう!
とまたしても大声で言った。 どうやらやはりこのケビンと言う男の人とは初対面らしい。 というかこの人テンション高いわね…
ー…あれ、ケビンって横文字ですか?
ー…あーちゃうちゃう、実はワイの親がアホでな無理矢理当て字にしたんや。やから一応漢字やなー。
…などと二人の喋り声を聞きながら暫し思考する。 まず、あのケビンって言う人は何でコウヤに話し掛けてきたのだろうか? 見た感じ何か騙しているとかでも無さそうだし。って、あ
「あの、そういえばケビンさんは何で僕に話し掛けてきたんですか?」
「んー?嫌やったか?」
「いえ、単純に気になっただけですけど」
私が一つの予想がついたところでちょうどコウヤが聞いた。あーそかそかと笑いながらあの箱を指差して言った。
「いやあ、そんな二箱もってる奴がおつったら気になるやろ。それにそれが少年ときたら」
…やっぱりそういうことね。 まぁ、なんかこの人は思ったらすぐに行動しそうなタイプに見えるからわからなくもないけど。
「しっかしコウヤクン、こんだけの魚どうするつもりなんや?」
「食べますよ?」
「えっ?」
「えっ」
『…え?』
うむむ?とケビンさんが唸る。
「そんでもこの量は1、2日ではたべきれへんのやないか?」
「えっ?」 「えっ」 『えぇー…』
「…まさかコウヤクン、魚が痛みやすいこと知らへんの?」
「え、はい」
『…もはや何も言うまい』
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